表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Souls gate  作者: 大野 大樹
七章 内科的治療法と外科的治療法
64/70

5.柊さんと楠さん。

 状態異常の回復と、状態異常の原因の除去。

 なんかこういうのって‥なんか‥

「どっちもわるいわけじゃないんだけど‥なんか、全然違うもの‥

ええと‥外科手術で切っちゃうのが、陰陽師で、薬で散らすのが八卦による干渉って感じ‥」

 自分で言って、はっとした。


 それだ。まさにそれだ。僕が言いたいことって‥これだ!!

 

「僕は、外科的治療が好きなんです。内科的なんじゃなくて」

 きりっとした顔で言ったら、

 ‥勿論のことだけど、和彦も蘇芳も「?」って顔になって固まった。

「なんだなんだ急に。外科? 内科? 」

 目を白黒させる蘇芳に、朱雀は「外科手術で切っちゃうのが、陰陽師で、薬で散らすのが八卦による干渉」って話を聞かせた。

 蘇芳が「うう~ん。今までそんなこと考えてたのかあ。‥朱雀は相変わらず変なとこでこだわるよなあ‥」って苦笑した。

「相変わらずってなんだ」

 って朱雀が、ムッとした顔をすると、蘇芳は「だってそうじゃん」ってなんてことないって顔した。

 だって、そうだもん。

 朱雀は髪型でも何でも、拘りが強いんだ。

 自分が納得するまでやめないしね。

「まあ、‥確かにどっちの方がベストって話でも、外科的治療なら完全に治せるのに、薬で散らすとか‥その場しのぎじゃんって話‥内科的治療の批判の話してるわけでもないんだよな?

 内科的治療法も悪くはないだろうけど‥って‥一応認めてはいるんだよな? 」

 蘇芳が肩をすくめて、難しい顔をして言うと、

「? ‥うん。そのつもりだけど。だから、‥治療っていったろ? 」

 朱雀が、きょとんとした顔で首を傾げた。

「批判してるみたいに聞こえた? そんなつもりはなかったんだけど‥批判するつもりなら、スッキリしない‥とか、それこそスッキリしない言い方しない。「あのやり方は気にくわない」っていうよ? 」

 ‥朱雀なら言うな。

 蘇芳は、大いに納得して、大きく頷き「成程」と口に出して同意した。

「つまり、認めてはいる、と。だけど、それの扱い方が‥よく分からない。そういうこと? 」

 じ、っと朱雀の目を見ながら聞いてやると、

 あ!

 って顔をした。

 それこそ、「そうそれ! 」って顔。

 分かりやすい。

 蘇芳がにこりと微笑む。

「‥誰もが外科的治療が必要な状態にある訳でもないわけだから、内科的治療も取り入れたらいいって話なんじゃないか? 別に、全部を内科的治療法に変えろ、って言っているわけじゃない」

 そう提案すると

 ‥なぜだか、眉を寄せて、口をとがらせて一瞬黙った。

 その後、がく~って肩を落として、俯いた。

 ‥なんでだ? さっきの嬉しそうな顔はどうした?

 何で悔しそうな顔になってる?

「‥なんだよ、‥蘇芳の癖になんだよ‥その通りだ‥」

 小声で呟く。‥周りにも聞こえてるけど。

 ‥あ、悔しかったんだ。

 っていうか、何だよ「蘇芳の癖に」って。癖にって‥(笑)子供か。

「うん、‥そうだよな‥」

 朱雀は、口に出して今度は、「おっきな独り言」を呟くと、

 ちらっと、蘇芳を見た。

 何てっかな‥、

 肩を落として項垂れた格好のまま、顔だけ‥視線だけで上を向く、目つきの悪い上目遣いって奴。

 じと、って視線を、蘇芳に向ける。

「なんだよぅ‥」

 蘇芳が、たじ、っと目線を逸らす。朱雀は、視線を変えず蘇芳の‥今はこめかみのあたりを見ていた。

 ‥まあ、そうなんだよな。

 どっちがいいって話じゃなくって、どっちもいい。

 だから、どっちもお互いに尊重し合って、認めあっていきたい。

 ‥内科的治療法の方がいい事例‥ってあるかな‥。これなんかどうかな‥

 例えば、皆が羨む美人の嫁を貰った時、周りから受けるやっかみの類。こういうのって、犯人が誰ってのではない。

 ただのやっかみ‥って侮ることなかれ。

 例えば‥そうだな、その大物政治家がオタクの神的なアイドルを嫁にしたって考えてみろ? オタクの妬み‥とか、凄そうじゃね?

 そりゃあ、もう、集まれば鬼に位変わりそうだよね。

 ‥確かにこういうのは、内科的な感じ‥「お薬飲んで直しましょうね、お大事に~」でいいわなあ。自衛‥っていうか、自分の方が、相手から向けられる悪い感情に害されない様にするって方法。オタクにすくう「鬼」な感情を全部相手できるわけじゃないし‥。直接手を下してきてるわけでもないから、警察も関与できない。だけど、「あいつ、‥殺してしまいたい」って相手の健康を害するほどの‥強い感情は‥「ほっとけない悪い感情」なのには違いない。

 で、そのことを、首を傾げてる和彦にも説明したら

「‥成程ねえ」

 ってえらく納得した顔で頷かれた。

「はい」

 こくん、って朱雀が頷く。

 蘇芳が、自分の席を立って和彦の横‥朱雀の側とは反対横‥にしゃがむと、

「で、その内科的治療法を今後うちでも取り入れていこう‥という話ですか? 」

 聞いて、和彦を見た。

 和彦が、「ん~」とちょっと首をすくめて

「そのことも含めての話合いだね。蘇芳はどう思う? 」

 蘇芳に質問を返す。

「今の地点では、何とも。‥ちょっと想像がつきません。そんな方法を利用できる依頼‥さっきの朱雀的な案件が今まであっただろうか‥それに、これからもあるだろうか‥ってのが。‥それに、楠さんたちの方も‥話を聞くばかりでは、ちょっと‥」

 自分たちの解釈でホントにあってるのか、ってことね。

「朱雀的案件‥。オタクの神の話? 」

 ふふ、と和彦が笑った。

 朱雀がうんうん、と頷きながら、「あるよ、絶対。この先。政治家と結婚するアイドルとか、あるある」って付け足す。

 まあ、‥政治家もこの頃は「お家の為の結婚」だけじゃなくなってきたって感はあるよね。話題性‥ってので、新しい風を入れてみようっていうのもある‥かも? なら、「オタクの神」との結婚ってのもあながちないとはいえないかも??

 ‥あるか?

 蘇芳は苦笑いする。

「そうだよね。それに、ホントに実用的かどうかって話はあるよね」

 うんうん、と朱雀が頷く。内科的治療‥新たな治療法に出来るかも、って採用したら、実際には「サプリ」程度の効果しかなかったとかじゃ、使えないしね。

 薬の効果のほどをしらべないとね。

「そうだね」

 和彦が朱雀に頷き返す。

 そういえば‥と、蘇芳がぽん、と手をうって

「そう言えば、ちょっと前、柊さんが感情を爆発させて、それを柳さんが「干渉」で沈めた、って事件があったらしいです。

 そして、柊さんの感情が普段落ち着いてるのは、楠さんが常に「干渉」しているから‥って聞いたことがあります」

 という話をした。

 和彦が頷く。

 どうやら、聞いていたらしい。

「発作を起こしたら、薬を飲む。楠さんは‥、柊さんにとって常備薬的な感じか」

 言って、ふふ、って笑った。


 状態異常の常習的サポート。


「それって、柊さんが楠さんの事特別信頼してるとか‥そういう「相性」の話じゃなくて? 」

 朱雀が「ふむ」と左手の手のひらで顎を撫ぜる。

 考えるときの朱雀の癖だ。

 考える時とか、「あ~!! 」ってなった時に髪の毛をぐしゃぐしゃにする癖があるのは、蘇芳だ。

 ‥朱雀は絶対しない。だって、髪型が崩れるじゃん。朱雀は、「あ~!! 」ってなった時は、蘇芳の髪の毛をくしゃくしゃにしている。目を見開いて余裕のない顔をして‥無言で。

 蘇芳は、軽く首を振って、

「柊さんのこと調べたんだけど、柊さんと楠さんにが以前から接点があったということはなさそうだ。住んでるところも県レベルで違う。柊さんは愛知出身で、楠さんは高知‥みたいですね。

それに、柊さんは、幼少期から「狐憑き」って恐れられて実家で監禁されてたって報告書にあるんです。それで、‥丁度楠さんがTAKAMAGAHARAからスカウトを受けて、あっちに向かってるときに、駅で柊さんを拾ったって‥」

 報告書の挟んであるファイルを出して説明する。

「拾った? 」

 朱雀が怪訝な顔で、聞き返す。

 ‥さっきからあまりにも物騒な単語が出てきている。

 狐憑き、監禁、‥拾う?

「ええ。丁度そんな感じだったって伊吹さんが言ってました」

 情報源は伊吹さんか‥。

 拾うって‥。

 ‥でも、ま。‥そんな感じだったんだろうなあ。あの人は、表現を選ぶってこと‥しなさそう。

 真っ直に自分を見た楠の澄んだ目を思い出して、和彦が苦笑いした。

 気まぐれ‥それとも‥慈悲? 

 そういうのもひっくるめた、もっと純粋な何か‥。

 ‥そうするのは、本人にとっては当たり前で、‥でも、他人には理解できにくい‥不可思議な行動。

 そういう行動をする人間は‥でも、ここでは「珍しくない」。

 息子の彰彦の友達にも一人いた。常識では考えられない存在‥たしか幽霊。

 この世の者でない者なら、この世の者では考えられないような行動をして‥おかしくないのかもしれない。

 人の常識を超えた‥損得勘定抜きの行動を‥偽善じゃなく「当たり前」の様ににする‥当たり前の事の様にする人間。

まあ、‥それに

 西遠寺は変人の集まりだからな。‥別に驚かない。

 そして‥

 ‥狐憑き、監禁‥。

 柊は、「能力(力)」が特別強いって報告が来ていた。

 コントロールを教わっていない、強い力‥きっと彼はそれを持て余しただろう。そして、それは周りには、酷い癇癪持ち‥という風に映ったかもしれない。

 酷い癇癪持ち‥、「狐憑き」の呪われた子供。障害やら病気とは違う‥正体不明の「呪い」。

‥「家の恥」になるから、隠す‥。そういうことも、また‥別に珍しくない。昔はあったとは聞いてたけど、‥今もまだあるとはねぇ。

 西遠寺は今でも閉鎖的だ。‥だから、身内の事を隠そう隠そう‥とする傾向がある。

 確か、「柊さん」の弟「北見」を次期西遠寺当主候補にと彼の両親が押してたっけ。

 ‥それも、柊さんが裏の恭二さんの養子に入るって決まった後で、だ。

 ふう、と思わずため息をついてしまったが、‥幸い「柊さんを監禁した柊さんの実家」に怒ってそれどころではない朱雀は気付かなかったようだった。

「柊さんはなんでこっちに来てたの? 監禁されてたんでしょ? 」

 不機嫌な顔を隠そうともせず‥朱雀が蘇芳に聞いた。

 蘇芳が頷いて、調査票をめくる。

「なんでも‥家出して来たって」

「‥家出‥」

 もう、怒りしか沸いてこない。会ったことないけど、柊さんの両親、地獄に堕ちろ。

 会ったことないけど‥いや、会ったことはあるけど‥話したことはない。

線の細い感じの‥まんま西遠寺‥って顔をした美青年だった。‥だけど、その能力から実家に恐れられ、監禁されてきた‥可哀そうな柊さん‥。

「それを、面識もない楠さんが助けたってこと? 」

「そうそう」

 柊さんは、楠さんに特別「懐いている」と聞いた。

 そりゃあ、それまであんだけ辛い目に遭ってたら、親切にされたら懐きもするよ‥。

 朱雀はためいきをついた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ