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Souls gate  作者: 大野 大樹
七章 内科的治療法と外科的治療法
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3.朱雀は勧善懲悪が好きなんです。

「どうしたの? 朱雀は。なんか、難しい顔してたけど」

 自動ドアが開き、顔を出したのは西遠寺の麗しの当主‥西遠寺 和彦だった。

 同じ西遠寺とはいえ、和彦は、表の西遠寺家のトップだ。

 血筋だって正しい、正統な西遠寺。

 「裏の」能力は無いが、事務能力や社交性、政治家の裏事情やら繋がり家族構成やら趣味嗜好‥それこそ、性癖すら知ってそうな(いや、知っているだろう)ありとあらゆる情報に熟知したスーパー当主だ。

 立ち振る舞いが優雅で、顔もいい。

 だけど、存在感が薄い‥のは、職業柄だ。

 そうそう人の印象に残っていい職業じゃない。

 西遠寺の人間は、そう外出しない。それこそ、今日みたいに関連会社に来ることすら珍しい位なんだ。


 今日は、朱雀と蘇芳に会いに来たようだ。

「あ、ご当主。こっちに来られるなんて久し振りですね。私たちにご用事でしたらこちらから伺いましたのに。‥何かこちらに来られるご用事でもあられたんですか? それで、ついでにこっちに寄られたんですか? 」

 ふわ、っと人好きのする笑顔を向けて、蘇芳が和彦に椅子をすすめた。

 和彦は、僅かに目元だけ細めて微笑むと、「ありがとう」と断って蘇芳の向かい合わせの椅子に座った。

「この前行ったでしょ、東京。その後の話合いやなんかをしてみようかなあって。別にこっちに他の用事があったわけじゃない。君たちに会いに来たんだよ。あとは、ね、ちょっと散歩がてら‥ね」

 ね、っていって、ちょっといたずらっ子っぽい微笑みを浮かべる。

 ちょっと散歩って行っても、西遠寺の当主は、そういろいろなところに行けるわけではない。

 本人の重要性と、本人の存在の重要性、本人の持つ情報の重要性‥その他、重要性の塊みたいな人だ。

 もし、捕まる‥とかそういうことがあれば、即自害を選択する必要性と覚悟を和彦は持っている。和彦だけじゃない、西遠寺の本家の関係者はみんなそうだ。‥そんな危険な人物の警護に当たる人間の心労を考えたら、とてもじゃないけど「ちょっと遊びに行きたい」とか‥軽々しく言えない。

 まさか、ホントに「ちょっと散歩がてら」

 じゃないだろう。

 そして、それは、蘇芳(ごときが!! )が興味本位で聞いていいものでは無いだろう。

「成程」

 だから、蘇芳はあっさりと話を終わらせた。

 ‥実際は、本当にただの散歩な訳なんだけど。警護の人間もある程度「公式なお出かけ以外は、自己責任で」ってお散歩を容認してるしね。(だけど、そこら辺の事は蘇芳たちは知らないからね)

 和彦はゆったりと頷くと、

「蘇芳は、どう思った? 裏西遠寺予備軍‥候補生って言うんだっけ? 楠君と柳君」

 優雅な動作で緩く腕を組んだ。

 蘇芳は小さく首を傾げ

「彼らは、機動部隊向けじゃないでしょ、管理職向けでしょう」

 ぼそり、と言った。

 陰陽師向けではない、と。どちらかというと、今のまま陰陽師のスカウトの側にいる方が向いている、と。

 ゆったりと、和彦が頷く。

「そうだね。そういう感じがしたね」

 ふふ、っと微笑む。

 そして、ちらり、と朱雀のディスクに飾られた真新しい写真を見る。

「ああ、写真が新しくなったね」

 とだけ言って、写真の青年(中年?)に微笑みかけた。

「それはそうと、さっき朱雀に会ったんですか? 」

 コテン、蘇芳が首を傾げ、コーヒーを汲むため席を立つ。

 他の事務所のメンバーは、さっき当主が「朱雀と蘇芳に」って言ったのを聞いた地点で席を外しているので、事務所には誰もいないのだ。

 蘇芳が、コーヒーを和彦に手渡す。

「え? 」

 コーヒーを蘇芳から受け取りながら、和彦がちょっと首を傾げて、蘇芳を見上げる。

 例の、ドキッとする魅惑の上目遣いだ。

 普通のおっさんにされてもドキッとはしないが、和彦がやると、‥ちょっとドキッと来る。

 恋じゃないけど、‥ドキッと来る。

 すみません、僕、隠しています‥って感じでなんか自白しそうになる。

「難しい顔してたっておっしゃってましたが」

 その視線をうま~く避けて、目をなるだけ自然に逸らしながら席に座る。

 こくん、と和彦が頷く。

 普通のおっさんがやったら、「かわいこぶんなや。きしょいんじゃ、おっさん」になるが、‥和彦がやっても、おかしくない。それどころか、なんか、愛くるしいし、癒される。

 凄いぞ美中年。

「ええ、さっき見かけたんだけど、声を掛けられるような雰囲気じゃなかったから、後にしようと思ってね」

「成程。‥それこそ、この前の楠さんたちの件ですよ。‥なんか、「間違っちゃいないけど、スッキリしない」ってしきりに呟いたりしてね? 」

 蘇芳が、ちょっと眉に皴を寄せて、「困った困った」って顔で言ってから、ため息をついた。

「「間違っちゃいないけど、スッキリしない」? ‥喉に骨が刺さった‥みたいな表現だね‥。因みにどうなの、それは、方法としてありなの。なしなの」

 そう言って、何故か蘇芳の頭のちょっと上の方を見る。

 ん? 髪の毛でもはねてる? 

「ありかなしかって選択肢だったら、ある」

 と、

 後ろから聞こえて来たのは、聞きなれた高めの声。

 耳障りの良い、よく通るちょっと高めの優しい声。美声とかじゃない。大人にしては少し高めの‥これと言って特徴はない声なんだ。だけど、高身長で髪型をびしっと決めた如何にも今時の青年の彼の容姿に、それが‥何となく合致しなくて、初めて聞いた人はまずは「へえ? 」って思うんだ。

 で、話すと、見掛けより落ち着いてるねって印象に変わる。

 朱雀には、そういう「何故か印象に残る」ところがある。チームのリーダーである蘇芳が、朱雀を依頼者に直接合わせないのは、そこら辺のことも関係している。

 あと、単純に「何か言いださないかドキドキするから」という理由(←こっちは皆大納得だ)。

「朱雀」

 蘇芳があんぐりと朱雀を見る。

 ‥どっから来た? っていうか、いつ来たんだ? 元からいた‥は無いよな、さっき当主が見かけたって言ってたから‥。ってことは、どっかに行ってて、戻って来たってことだよな? だから、‥いつ戻ってきたんだ?

 疑問符一杯の蘇芳に構わず、朱雀は二コリと和彦に微笑むと

「ご当主。こんにちは」

 と、にこやかに挨拶する。

「こんにちは。で、なんだろ? 朱雀。さっきの。ありかなしかって選択肢だったら、あるって」

 にこり、と笑顔を返すと、和彦がじ、っと朱雀の目を見た。

 これは、包み隠さず話しなさい、って意味。

 まあ。和彦に目線を合わされて、外せる奴なんて、ここにどころか、この世にはいない。

 蘇芳は、怯むどころか、逆にじっと和彦に視線を合わせ、蘇芳の斜め向かいの自分の席‥つまりは、和彦の横の席に座った。

「そのままです。‥悪くはないって思うんです。効率が良さそうですし。それに、誰も傷つかない。そして、可及的速やかに対処できる‥」

 指折り、「利点」を数えながら、でも、表情は浮かない。

「‥ならいいじゃないか」

 ぼそ、っと蘇芳が不満な声を出す。

「あるけど、‥ヤダ」

 朱雀が蘇芳にぷう、っとふくれっ面を(25歳(推定)の男が! )する。

「ヤダって‥」

 蘇芳が呆れ顔で朱雀を見る。

「抑える‥とかじゃなくて、なくなる方がすっきりして‥気持ちいいし、敵は‥鬼はちゃんと倒すべきだと思う。人が鬼になるには原因がある。片方の強い思い込みでってことは少ない。両方になんらかのそうなる要因があるんだ。

確かに、鬼になる原因は人の心のちょっとした乱れかもしれない、だけど、同じ様な心の乱れを持っていても、鬼になる者と鬼にならない者がいる‥。鬼にならないでも、きちんと対処できる者もいる‥。だから、鬼になった者は、きっちりと裁かれるべきなんだって思う。法では裁けない事だから、ちゃんと、裁ける者がね‥」


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