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Souls gate  作者: 大野 大樹
六章 楠は、兄貴なスーパーチューターを目指し、梛は普通の子供への道を模索する。
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7.世間は狭く、‥誤解と秘密に満ち溢れている。

「そうですね。これからもよろしくお願いします。柳さん。楠さん」

 ニコニコと、蘇芳が柳の前に出てきて握手を求めた。

 楠が恐縮して、柳はにこやかにそれに応じた。

 柳の表情は、ちょっとやり切ったって感じの晴れ晴れしたものだった。

 朱雀が

「柳さんも見かけによらないし、ホント面白い。

 スカウト班って何やってんだろって思ってたけど、これからはどんどん交流していきたいな! 」

 ちょっと赤くなった手をさすりながら言った。

 あ‥それ。さっきの。

 ちょっと火傷みたいになってる。

 だけど、朱雀は怪我くらいは慣れてるのか、気にしていない様だ。

「無茶はしないけど、別に怪我くらいでぴいぴいはいわないよ! 」

 らしい。

 蘇芳も

「大丈夫ですって。二・三日したら治ってますって」

 って気にしてない。

 それも、『現場クオリティ』かな? 

 そんなワイルドな朱雀さんだったが、自分からのびた影で髪の毛がちょっと爆発しているのに気付くと、

 さっきのワイルドさはどうした?

 って程、へこんでた。

 ‥髪の毛、やたら気にしてたもんね。

 この後、美容院に行って、それこそ縮毛矯正しそうな勢いだったが、‥多分、静電気で立ってるだけ(だと思いたい)だから、大丈夫だろう。

 柳さんは、髪の毛が案外かたいから大丈夫みたいだった。(この人も案外気にしそうだけどね)

 ‥僕には分からない感覚だ。

 そんなこんなのグダグダで、「現場視察及び、交流会」は幕を閉じた。



「ふうん。いいなあ、俺も行きたかったなあ」

 って言ったのは、梛で、柊さんはNOリアクションだった。(寧ろ聞いていたのかどうかも‥)

 うん、

 予想通り。

 この『いつもの光景』、やっぱり落ち着く。

 予想通りって言ったら、

「でも、柳さん。あなたの師匠については気になるな。一度お会いしたい」

 ってご当主が言ったことだった。

 そうだよね。

 気にならないはずがないよね。

 でも、‥あってみたらほんの子供だから驚くだろうなあ、ってちょっと躊躇してたら

「名前くらい教えてもらえない? 」

 って被せて来たのは、なんと、伊吹さんだった。

 (ちょっと影が薄かったけど)今回の調整役だからなあ。

 あくまで伊吹さんの顔を立てる為に

「天音ちゃんという女の子です。師匠なんて‥柳さんは大袈裟に言いましたが、思いついたアイデアを提案したに過ぎないと思いますよ」

 って、さりげなく天音ちゃんから興味を逸らそうとした。

 が、予想外だったのはここからで

 なんとご当主が

「天音ちゃん! 」

 ってちょっと驚いた顔をしたんだ。

「天音ちゃん‥? 」

 ‥伊吹さんのちょっと驚いた顔&「何彼女を巻き込もうとしてる」って密かに不機嫌になった顔は、予想通りだったんだけど。(伊吹さんは、天音ちゃんからストーカーって不名誉な二つ名(←あくまで影で呼んでいるだけ)を与えられるくらい天音ちゃんに対して過保護だからね)

「当主? 」

 ご当主のそんな顔(ちょっと驚いた顔ね。驚いたって言っても、あの表情筋に乏しい柊さんを見慣れてる僕たちだから分かる程度のものだと思ってたんだけど)を驚いたのは、どうやら僕たちだけじゃなかったらしく、「ちょっと」どころではなく、もうポカーンって音がしそうなぐらいの驚き顔をしたのは、蘇芳さんで、朱雀さんはまるで恐ろしいものを見たって位目を見開いて固まっていた。

 ‥現場で『狸』やら『キツネ』(時には霊? )を見慣れた彼らも驚く程なんだ。

 ってちょっと、そのことに寧ろ驚いた。

 いや、人間なんだからちょっと驚いたり位するだろ。

 って思ってたんだけど、そのご当主の方は

「伊吹さん? 」

 って、自分と同じように伊吹が天音の名前に反応したことを気にしていた。

 ‥同じ職場だのに情報交換が不十分だったって思われたかな?

「お知り合いですか? 」

 って聞いたのは、僕ではなく柳さんだった。

「実家で会ったことがあってね。ああ、成程あの方ですか‥」

にこやかにご当主が言った。

 ぎょっとなったのは、蘇芳と朱雀、そして伊吹だ。

 ‥ご当主! 何、サラっと個人情報を公開してるんだ‥っ!

 ってところだろう。

 だけど、そんなこと(一般人な)楠が分かろうはずがない。‥気にするわけがなかった。

 楠がさっきの和彦の発言を聞いて思ったことは、

 ああご当主、こんな何気ない会話でさえも『雅』って感じがするね。

 あと、‥なんかさっぱりしたもの飲んだり食べたりしたような感じ?

 後味爽やか‥っ。

 さっぱりしたものだけど‥『酢橘(スダチ)』とかじゃなくって、ちょっと苦めの『いいお茶』って感じ。(伝わるかな?)

 と、せいぜいこんなくらいのことだった。

 ‥後で、楠たちに秘密情報漏洩厳禁を言い渡しておこう‥焦った伊吹によって、楠と柳は研修後すぐに口止めされたけど、二人はその情報の重要性にそれほどピンと来ていない。

 身内であるか、身内でないかの違いである。

 それはさておき

 ご当主はふふ、とちょっと目元を綻ばせると

「あの方って」

 って呟いて、ちょっと何か思い出したみたいにまた、ふふと笑った。

「何とも‥浮世離れした方ですよね? まるで常人じゃない様な‥」

 ぎくりとしたのは、伊吹と楠。

 伊吹は、天音が幽霊なのを知っている。

 そして、楠は、天音が(幽霊どころではなく)神だという事を知っている。

 柳は、そのどちらも知らないから、(のんきに)

「そうですよね~」

 なんて相槌打ってる。

 確かに、浮世離れしてるしね。

 ‥それにしても、ご当主‥。天音ちゃんと実家で‥会ったんだ?

 いつだろ。ってか、実家‥。

 ご当主、別に実家があるんだ? ‥なんか、いろいろ分からないな‥。(※当主のプライベートは勿論の事ながら社員どころか西遠寺の殆どの人たちには明かされていない)

 伊吹から秘密漏洩厳禁を言い渡されたことも相まって、

「そういえば」

 って、今更気付いた。

ちなみに、実家や、家族構成を知っているのは、ごく上層部だけ。(後は、近しい親戚位。その親戚も知ってはいるが、話すことは絶対にない)伊吹は、和彦の従兄弟である恭二がそういうことを知っていた為聞いていたに過ぎないが、恭二に教わっていなかったら今でも和彦が西遠寺の本家に養子に入って未婚だと思ったままだっただろう。(←恭二が伊吹に他言無用と言ったのは言うまでもない)

 現在の西遠寺は本家が家を継ぐわけではなく、最も当主になる資格がある者が継ぐようなシステムに変わっているので、別に和彦が未婚だろうが問題は無いのだ。家族等の情報を公開していないのは、家族の安全を確保するためだ。西遠寺の当主は、自身の一切の情報を管理されているのだ。

 そういえば

「息子の知り合いのお姉さんらしいですね。その時丁度そっちに来られていたらしいですよ。‥凄く偶然ですね」

 とも言ってた。息子さんもいるんだ。天音ちゃんが息子さんの知り合いの姉って言うからには、息子さんは、中学生とか高校生かな? ご当主にそんな大きな子供さんがいるなんて意外だな、(※実際には、息子は高校生どころか、大学の講師をしている青年)和彦は、美魔女っていうか‥年齢不詳。和彦こそ浮世離れしてるしね!

 因みに伊吹がこの話を聞きながら思ったのは

 ‥息子の知り合いの姉。

 天音ちゃん。その設定‥何?? その、妹か弟か知らないけど‥誰。

 これ。

 そんな息吹を見ながら楠は、

 伊吹さんは‥何か知ってるみたいだ。

 ってそんなことを分析していた。

 ‥何を? まさか、神ってことか? 

 とも、ちょっと不安になっていた。(※そこら辺は大丈夫の様ですね)

「高校生くらいだったように記憶していますが、‥そうですか‥あの方ですか‥」

 一体どんな出会いで、どんな話をしたんだろう‥。楠はちょっと、首を傾げた。(※和彦と天音の出会いは、『彼がこの世に生まれた経緯について私が知っていることは何もない。だけど、今も彼は私の傍にいます』第76部分)

 穏やかに微笑むご当主の表情からはそれは読み取れない。

 そう。まさか、

 目の前のご当主が、天音のこと鏡の秘術によって他の人の目にも見える様になっている特殊な幽霊で、弟ってのが尊なことも‥知っているなんて伊吹も楠も思ってない。柳は言うまでもない。

 更に、その秘術を行ったのが(和彦の息子の)彰彦だってことは‥とてもじゃないが和彦は言えない。(言えないし勿論、言う気もない)

 しかも‥彼女も相当普通の人っぽくなかったしね。(なんていっても、彰彦の能力を「記憶ごと封印する」ことが出来る人だ‥。普通の人の訳がない)

 と、こんないろいろと普通じゃないことを知っていることは一切表に出さない。もう、それこそ髪の一筋程も。こういうところは流石だ。

 「そういう諸々の事情は知りませんが」「彼女のことは知ってますよ」高校生くらいの人だったですね、(←問題ない情報提示)っていう立ち位置を示した。

「確かに、きっと‥天音ちゃんだと思います」

「彼女も、‥能力者の候補なんですか? それとも、スカウト班のメンバーの一人? 」

 と、(るで腹の探り合いの様な会話なわけなんだが)当主が聞くと、楠と柳が首を振った。

「彼女は、‥アドバイサー的な人です」

 と、師事している為か、好意的な言い回しなのが柳で

「彼女は、‥伊吹さんが保護している居候です」

 と身も蓋もないことを言ってしまったのが、同じく神な楠。

 言ってすぐ

 ‥いや、間違ってないけどこれじゃ‥

「え‥? 」

 ‥ご当主の伊吹さんに向けた眼差しが‥

「いえ、違います‥」

 顔面蒼白で咄嗟に伊吹が否定した。

 ‥伊吹さん、このままでは女子高生を囲い込むロリコン決定になってしまう‥。いやホントは、神だし未成年じゃないし、目つき悪い男だし、てか、人ですらないんだけど‥。だけど見かけは‥たしかにあの見かけだけだったら、高校生くらいだし、女子だし、それどころか美少女だし‥。

 楠も顔面蒼白になる。

 だが

 ‥天音ちゃんは幽霊で、それに器をつくったのが息子で、その息子と伊吹君は知り合いらしく息子が伊吹君を訪ねて東京に行ったらしいということは古図から聞いていたが‥。一体どういう関係なんだろう。‥息子の能力のこと伊吹君も知っているってことだろうか? 伊吹君が息子についてどこまで知っているかも気になるが、‥伊吹君と天音ちゃんの関係についても気になるな‥。

 ご当主の心配は別のところにあった様だ。

「ええと、‥伊吹君。後日改めて(息子との関係について)話を聞いていいかい? 」

「‥はい‥」

 顔面蒼白のまま、頷いた伊吹さんの顔‥

 ‥伊吹さん、あの後どうなったんだろ。ご当主からのロリコンの嫌疑は晴れただろうか‥。

 昨日のことを思い出しながら、改めて心配になった楠だった。

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