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Souls gate  作者: 大野 大樹
六章 楠は、兄貴なスーパーチューターを目指し、梛は普通の子供への道を模索する。
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5.効率化を提案してみたら、スカウトされました。

「楠さん、ちょっと僕と手を合わせて頂けます? 」

 ぐい、っと『機嫌が良くない柊さん』のテンションの朱雀が楠と距離を詰める。

 咄嗟に、楠は一歩後ずさる。

 パンパン。

 乾いた音がその場を『破る』

 手を二度叩いたのは、‥

 蘇芳だった。

 あ。

 干渉だ。

 雷風恒

 恒は恒久の恒。

 継続の卦。

 『迅雷疾風は天地の大変ではあるが、しかも常理を失わない』(高田 1969 p18)

 天地の大変に際しても、その常を崩さない‥かな。

「ぐいぐい行かない。初対面でしょう。ああ、楠さん。私は蘇芳です。‥でも、確かに気になりますね」

 朱雀の手を払い、にこり、と楠に微笑んだのは、蘇芳。

 ‥この人は、『分かる』

 柳さんと一緒の震だ。

 さっきの、朱雀さんは、‥風‥巽かな? 初めて見るな。純粋な巽の卦の人。

 楠が目を開き

 見た。

「「! 」」

 二人が息を呑むのが分かった。

「何か‥した? 僕たちに」

 朱雀がきょとんと、というか不思議そうな‥なんとも微妙な顔で楠を見た。

 だけど、それは嫌悪を示したような顔ではなかった。

「え? ああ‥すみません。お二人の卦を見せて頂いていました。申し訳ありません、かってに‥」

「「卦? 」」

「ええ。朱雀さんが『巽』で、蘇芳さんが『震』ですね」

「「?? 」」

 あちゃ~。

 目の前で二人の目が点になってる。僕らの間だったらこういう分類‥ってか、こういう認識が当たり前だったけど‥。

 楠はちょっと冷や汗をかいた。

「それは、‥なに? たしかsouls gateっていうゲームも八卦だったよね。君は‥君もあの分析の機械みたいに、人の卦が分かるの? 」

 コテン、と首を傾げて

 興味津々って顔で

 麗しのご当主・和彦が楠を見た。

 ‥無理。

 そんな、キラキラした美しい目で僕を見ないでください‥。緊張し過ぎて心臓が破裂しそうです。

「あ、はい‥。たぶんこうだろう‥ってていう程度ですが」

 これも恥ずかしながら、‥本当。

 雷や火・水・風みたいなのは分かるんだけど、実は艮(山)や乾(天)坤(地)と後微妙な兌が自信がない。そういう(僕的に)微妙なのでもはっきりわかるのは、天音ちゃん。

 天音ちゃんは、自分も乾で、微妙だから分かるのかな。

 また聞いてみようと思う。

 と、周りを見ると柳さん以外、皆興味津々って顔で楠を見ている。

 ‥あちゃ~。

 伊吹さんも微妙な顔してるね‥。

 今じゃないだろ、ってことかな??

 そういえば、今回は話を聞くだけって言ってたっけ?

 でも‥仕方が無い。

 ふう、と楠は小さく息を吐いて

「僕らは人は皆生まれつき、持って生まれた性質があります。それは、性格とは違って、性質です。僕の場合だったら、水です。それから、柳さんは震‥そうです蘇芳さんと同じ性質です。

 普通の人は、生きていくうえで、他の人の影響を受けて六十四卦という状態を作りながら生活していくのですが、僕らがレアとよんでいる人達は、そんな中、他の誰の影響も受けないと考えています。

 影響は受けず、相手に影響を強制的に与えることが出来る立場‥。

 それ故に、合わない相手からは嫌悪感を抱かれる‥。

 だけど、それを正しく使用すれば、困っている人の性質を整えることが出来得る。

 僕らはそれを干渉と読んでいます」

 説明し始めてみた。

 時折、聞いてるかなって、周りの顔を見てみたが、皆こっちが恥ずかしくなる程見つめながら聞いてくれている。

 反論や質問もあるだろうが、先ずは聞いてみようってことだろう。

 今回は、悩み相談じゃないからご当主の「聞き上手スキル」は発揮されていない様だ。

「‥干渉」

 言葉を反芻したのは、朱雀さんと

「六十四卦」

 続いて、蘇芳さんだ。

「僕らも、‥周りにそんな影響を与えて来たってことか」

 朱雀さんがが、首を捻りながらぼそり、と呟いた。それから、なにか思い当たったことがあるのか

「ああ、それで「こいつ、どうもあわねえ」って奴がいるんですね」

 なるほど、なんて呟いている。

「反対も多いな」

 蘇芳さんも頷く。

 そんな様子を見ていると、柊さんを思い出した。

 やっぱり、朱雀さん、柊さんとタイプが似てる。

 直情タイプっていうのかな?

 感情が先に出ちゃうタイプ。

 まず合う合わないで、物事を分類しちゃいがち。

 でも、‥こういう仕事でそれって結構間違いじゃない。

 合わないってことは‥なんとも出来ないってことだ。

 干渉がレベル的に出来ない時もある。

 ふふ、とつい笑ってしまった。

「あ、朱雀さんも「こいつ合わない」タイプですか。‥柊さんと同じですね。だけど、その卦だから全員合わないとかじゃないんですよ。巽と合わない卦があるんじゃなくって、朱雀さんとレベルでは、合わない人がいるっていうか‥。

 卦の相性が良かったら、結構レベルがどうあれ合う場合もあるんですけどね。

 それ以外は‥

 合わないって思う場合は、大概、相手の方がレベルが上な時が多いです。

 合わないって思った瞬間、僕らは本能で相手に干渉しようとしますからね。干渉できないって言うことは、相手の方がレベルが高いか‥よっぽど性が合わないか」

「普通の人は六十四卦の状態が多いって言いましたよね」

「ええ」

「六十四卦のその状態に干渉するんですか? 」

「‥六十四卦になってるだけで、レアに比べたらホントに低いですが、やっぱり本人の卦ってのは、一つですよ。ただ、それがあまりに弱いから、常にその時々誰かに影響を受けて、六十四卦の状態になってるだけです」

「あ! じゃあ、同じ卦をもってるひとの影響を受けたら、レアみたいに一つの強い卦になる? 」

 朱雀の問いかけに楠は首を振った。

「例えば蘇芳さんの卦の震に柳さんの卦震が干渉すると、震為雷になりますね。これは、『震』という八卦とは違うものです」 

 ふうん。

「僕らのsouls gateでは、そういう純粋なる八卦タイプ‥レアの子を発掘し、その子たちの精神レベルを『緊張』から『正常』に戻し、西遠寺に対して興味を持ってもらうことを目標にしています。

 でも、今まで僕たちは、本当に現場で働かれている方を知らなかったので、方向性があっているのか‥ちょっと不安に思っていました。

 今でも、仕事の様子とかが分からないので、合っているのかはちょっと分からないのですが‥

 人材的には、合っているのかなって‥」

「分かったらどうできる? 」

「干渉だろ? 干渉することによって、妖怪他他の霊的原因がある以外の、『精神状態云々』が原因のクライアントの悩みの大幅は解消できる。

 ってことですね? 」

「ええ」

「タイプが分かれば、合う合わないでもめることはないわけですし‥確かに、効率的ですね」

 ふむ

 と蘇芳が大きく頷いた。

「面白いな! 楠さん! こっち側に来たらいいのに! あと‥君も。

君は見たことがあるよ。ええと、東京都出身の少年A。西遠寺の噂を信じて、家出しちゃった少年でしょ? あれ、凄く表の西遠寺の方々に迷惑かけたらしいねえ」

 くすくすと朱雀が笑う。

 柳さんは、

 何ていうのか

 凄くばつが悪そうな顔をしている。

「あの説は‥」

 ‥おお、こんな柳さんの顔見るの初めてだ。

 伊吹さんも

 初めて知ったのか、凄く微妙な顔をしている。

 ‥まさかあの時の‥。

 って微かに呟いている。

 それにしても‥。

「ホントに、西遠寺のファンだったんですね‥」

 ちょっと苦笑いした楠だった。


 

 ‥いや、スカウトって‥霊的原因の問題の能力者開拓では‥ないんだね‥。

 ちょっと微妙な気持ちになる和彦だった。

引用 参考文献

高田真治 後藤基巳訳 (1969)『易経(下)』岩波書店

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