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Souls gate  作者: 大野 大樹
六章 楠は、兄貴なスーパーチューターを目指し、梛は普通の子供への道を模索する。
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1.楠は、兄貴なスーパーチューターを目指す

 これまで、いろいろ考えて、‥何を‥何から逃げて来たのか‥。

 って、考えるまでもない。

 『那須』君‥否、大川 奈水流のことだ。

 一言で言うと、普通の現在っぽい子で、

 心に闇なんか抱えて無くって、

 現状に不満も不安も抱えていない。

 絶対に、誰の助けも要らないタイプ。まして、僕の助けなんているはずもない。

 強い人。家族関係にも問題が無くて、成績にも問題がない。いじめ問題もない。容姿にも恵まれていて、将来に何の憂いも感じられないような、恵まれた子。


 ‥強い人は、苦手だ。


 我ながら、最低だなあって思う。

 だけど、‥僕の助けが要らない上に、僕が関わることが彼女の迷惑になるなら、わざわざ関わらない方がいい‥って思うんだけど、‥

 柳さんは

「分からないからって放り出しちゃ駄目でしょ」

 っていう。

「怖いから、あの子には関わりたくない、っていう風に聞こえたよ」

 とも。



 ‥本当に手厳しい。



 でも、どうやって関わって行けばいいんだろう。

 僕が、那須君のチューターである以上、『彼』に関わり、彼の内面に触れていかなければいけないのだ。そして、彼の闇を‥暴いて、付け入って、裏西遠寺にスカウトしなければいけない。‥適性があればの話だけど。

 ‥やっぱり、『実際』に会うべきじゃなかった。

 


 大川 奈水流の姿が浮かぶ。

 ‥可愛い普通の高校生。

 僕には無縁な所謂『リア充』って感じの子。



「‥気持ちが分かり様がない」

 でも、‥柊さんの事だってある。

 どんなに、容姿に恵まれてても、家族に冷遇されたり疎まれたりすることもある。

 人それぞれに事情がある。

 そして、僕みたいに家族と勝手に距離を置いている者だって、居る。

 人ってのは、他人が思う以上に複雑なんだ。



 他人になりたい変身願望‥かあ。

 大川 奈水流は、男の子になりたかったんだろうか? 

 性別と身体が一致していないってことなんだろうか? 

 それとも、‥ゲームの中だけ、別の人格を楽しんでいるだけなのだろうか。



 『そんなことくらい』をその子の『闇』って呼ぶには至らない気もするけど‥、悩みの大きさなんて本人以外には分からないだろう。

 ‥それこそ、決めつけは良くない。

 僕は、彼女のチューターなんだから。

 きっと、『アズマ』だって、とっつきやすいタイプじゃなかっただろう。

 自分できっと何でも出来るだろう。きっと、やろうとするだろう。

 だけど、出来ると‥したいは違う。

 人に頼るのが嫌いなタイプでも、‥頼り方が分からないだけだったかもしれないし、『リアル』じゃないなら、頼りたいって‥人って、リアルとバーチャルが必ずしもイコールじゃない。

 アズマも、そんなタイプだって、前に柳さんから聞いた。

 アズマ‥水沢徹君は科学部の部長で、頼れる優等生。

 皆が彼を誉めるし、彼を頼りにする。彼に出来ないことは無いって思ってる。

 水沢徹君も、出来るから、しないといけないって思うから、する。だけど、心の中ではいっぱいいっぱいで、それを誰にも打ち明けることが出来ないから、ひとりで頑張っている。

 柳さんは

「水沢君は、所謂努力家の秀才タイプ。だけど、周りははじめっから何でも出来る天才タイプだって思ってる」

 って言ってた。

 災悪だ。

 きっと、彼は辛かっただろう。

 ‥責任感が強いものが、陥りやすいことだって聞く。

 もしかしたら、奈水流も『自分のイメージ』や『自分の役目』を守る為に必死に頑張っていて、その‥息抜きがゲーム『souls gate』なのかもしれない。



 まず、あの子のことを知らないといけない。

 そして、僕に出来ることがあるならば、精一杯しよう。



「なあ、楠。‥前も言ったが、‥楠は、‥あれこれ考えない方がいい。

何か考えてるんだろうなあって分かるのが‥怖い。寧ろ、‥やめた方がいい」

 はあ、とため息をついた梛が横の席に着いた。

 梛は、呆れた様な顔をしているが、心配してくれているんだろう。

 梛も、見かけとは全然違う。

 見かけは、話し方とかも‥冷たい感じだけど、本当はすっごく心配性で優しい。

「なあ、梛。梛からみて、那須君はどんなタイプ? 」

 それに、昔からずっとこれは変わらないんだけど、‥子ども扱いされるのを嫌がる。

 だから、時々、「こんなこと聞いても仕方ないかな? 分からないかな? 」って思うことでも相談してみる。

 「頼ってるよ」って意思表示の一環なんだけど、‥実際に期待もしている。梛の意見は参考になる。‥時々、びっくりするほど的確だしね。

「那須君? 」

「うん。僕には、あの時会ったみたいに‥何の悩みもなさそうな恵まれた子しか見えなくてさ。‥先入観を持っては駄目だね。それ以上に彼女のこと見ることが出来なくてさ」

「ああ、それを悩んでいたのか。

 ‥そうだな‥。那須君は‥人のこと、気にしすぎるとこがあるよね? 例えば、翔である僕が嫌な思いしないかって慮ったりさ」

「‥どんな時そんなこと思ったの? 」

「あの事があった後はじめて会った俺の顔を見た瞬間「嬉しそうに」明らかに「ほっとした」顔した。それって、‥もう俺が那須君のワールドに入ってこないかもって思ったってことじゃない? って思ったんだけど‥」

 『あのことがあった』‥っていうのは、『翔』である梛にチューターがついていないと、アズマたちが気付いた時のことだ。

 あのときは、ちょっと驚いた。

「なるほど‥そうかもしれないね」

「俺もその気持ちわかる。嫌われちゃったんじゃないかなって‥」

 ‥他人の気持ちを慮る。

 その時の、不安な気持ち。

 彼女は、少なくとも自分に自信があるタイプじゃないってことなのかな‥?

 傲慢で、人の気持ちに気付けないってタイプじゃないってことなのかな?

 彼女にも、‥表面には表れていない、不安や不満‥そういう気持ちがある。

 そして、それは、もしかしたら、彼女自身も気付いていない‥自覚していないのかもしれない。



 それは、彼女とこれから話して、一緒の時間を過ごして探していかなければいけない事なのだろう。


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