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Souls gate  作者: 大野 大樹
四章 神様参戦する。
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8-1.神様参戦する。

長くなったので、二つに分けます。

「尊ちゃん、後で部屋に帰ったら『Souls gate』通信しようよ」

 夜ご飯は夏と尊の二人で、尊の下宿の近所でラーメンを食べた。

 別になんてことはないラーメン屋だ。地元の人たちの行きつけ、といった感じのラーメン屋で、ゴールデンウィークだからといって客が多い様にも見えないし、家族連れで来ているというわけでもない。新規の客というより、地元の客が何となく今日も来ているといった感じ。

 威勢が良く客との対話を楽しむタイプにも見えない寡黙な親父が、相槌と「あいよ」とだけ言って客の注文を受け、そのまま調理にかかる。その間会話無し。親父に特に馴染みの客がいるわけでもなさそうだ。

それに違和感なく混じって、半チャーハンを慣れた感じで頼む尊を見ながら、夏が言った。

「『Souls gate』? なにそれ」

 蓮華を置いて、尊が夏を見て首を傾げる。

 ちらり、と横の若者が尊を見て顔を赤くした。

 尊はそんな視線に気付いていな振りをして、答えを促すために、更に夏を見つめる。

 ‥自分が「そんな気ないよ」ってことを、夏の隣の男に(わざわざ)僕を使って牽制したのか。惚れられてトラブルになったり、わざわざ面倒なことはしたくないってことなんだろうな。‥目立つ奴も大変だ。

 ‥そう言えば、隣の男‥見たの二回目だな。偶然じゃないわな。‥尊ちゃんのストーカーか?

今、夏と尊はカウンター席に並んで座っているから、夏と尊の席は隣通しだ。尊の反対隣りは壁で、件の男は、仕方なく夏の横に座っているようだ。

「へ? 尊ちゃん知らないの? 」

 わざわざ『親しい』をアピールする様に、スマホを持って尊に近づく。

 尊も心得たのか、夏にちょっとくっつきすぎってくらい顔を近づけて、スマホを覗き込む。

「これ」

「知らない」

 こてん、と尊が首を傾げて。

「教えてよ」

 上目遣いで夏をもう一度見つめてから、ふわっと優しく笑いかける。

「いいよ」

 夏もわざわざ尊に微笑み返す。

 ‥なんだこの茶番。

 隣の奴には効いたみたいだけど、夏にもかなりのダメージだ。

 後ろのテーブル席で、笑いを堪えている面々‥あの人たちは昨日会った、尊と同じアパートの人たちだ。

 何故か、尊の怖さを十二分にご存じなうえで、尊と親しい友人関係になった人々だ。

 ‥ナンパでもしたんだろうか。で、ボコられた。その後和解。そんなとこかな?(一昔前の不良マンガみたいだ) 

「ってことは、IDも持ってないってことだね‥。じゃあ、後で取りに行こうよ」

「取りに行くってどこに? 」

 ‥そのあざとく首傾げるのもうそろそろやめてもらっていいかな~。

 夏は、「横の男」の目に入らない角度を向いて、尊に表情だけで「嫌なんです」をアピールした。

 尊は、にやりと笑っている。

 しかし、「こいつ、やっぱり面白がってるな」ってのは夏には伝わった。付き合ってきた時間こそ短いが、ちょっと似たところがある二人は、付き合いの長さ以上にお互いのことがわかった。‥まあ、付き合いが濃いって感じかなあ。

 後ろの悪友たちは‥そんな感じではないものの「どうせあいつはろくなこと考えてない」って前提で、「あああ」とあきれ顔だ。(ある意味、よく理解されてるよね。尊については、「ろくなこと考えてない」フィルター通してすべての物事見るの、あながち間違ってないよ)

「どうしたの? 調子悪いの? 顔色悪いけど‥。お家に戻る? 」

 って、だからその「かわい子ぶりっ子」した顔でぐいぐい迫るの止めてよ、隣の男云々じゃないだろう! 完璧僕のこと揶揄ってるだけだよね?!

 夏は、隣の男に背を向けたままで、尊に向かって思い切り顔をしかめる。

「ぶはははははは! 」

 とうとう耐えきれなくなって、アパートの悪友三人組、通称・悪友`Sが笑いだす。

「尊ちゃん、彼のメンタルもう限界っぽいよ。もう虐めてやるなって! あんたも‥付きまといは迷惑だと思うぞ」

 と、最後の言葉は、声を低くして隣の男に

「‥は‥? 」

 隣の男が、アパートの悪友をちらり、と見てしらっとした顔をする。

 ‥性懲りもなく。

 夏は、ふうとため息をつき、腰を上げて横を向き「あんたさ」と口を開きかけた。

 と、その言葉は、悪友`sの一人の言葉によって被された。さっきと違う男だ。

 気が付けば、二人がその男の前に、もう一人は、夏の方を向いて、夏を止める。

 ん? 首を傾げる夏に、男は「大丈夫大丈夫」なんてへらっとした口調で言い「かいちゃんに任せておきなって」と笑顔を見せた。

「あんた、この頃、この辺りでよく見るよ。‥付きまとわれたら気持ち悪いじゃん? そんなことされて、この子が好きになってくれるわけないじゃん? 」

 と、圧力をかけるみたいな、低い声をだす。

 この男が「かいちゃん」かな? それとも、その前に話したやつがそうなのかな?

 その前に話した奴は、茶髪のちょっとモテそうな優男って感じで、そこで圧力かけまくってる奴は、どう考えても柔道部とかそういった格闘技やってそうなスポーツマンタイプって感じ。髪の毛を短く刈り上げていて、見た目も厳つい。

 で、夏の前に立ってるのは、‥文系眼鏡君、かな。文系だけど、真面目君って感じじゃない。もう少し軽そうな感じ。

 昨日会ったっていっても、入り口で会って、ちょっと会釈しただけだ。

 ‥こんなにしみじみとは観察しなかった。

 改めて見ると、‥バラバラな組み合わせだな。

 夏は、そんなことをぼんやり考えていた。

 尊は、そんな夏たちのことを、ゆったりと片膝をついて薄く微笑みながら見ている(完全に悪役のスタイルだ)

「いや‥僕はその‥」

 付きまとい男‥隣の奴は、かいちゃん(多分)から目を逸らして、でも席を立とうとはしなかった。

「別につけまわしてなんかいないし、‥言いがかりとか、迷惑だな」

 と、小声でぶつぶつ言っている。怖いから目は合わさないが、でもまあ、この場を誤魔化せば逃げ切れるか。みたいなお気軽さをその男に感じ取った尊は、唇の端をちょっと持ち上げたてにやり、とて笑った。

「いいじゃん? かいちゃん。その子が違うっていうんならさ。違うんだよ。きっと。今までも、これからも」

 と、尊が蠱惑的な笑みを浮かべて言った。

 今までのことは不問にするけど、これからもお前のことは認識しない宣言、に、その男はちょっとひるんだ。「そんな」って顔してる。

 ‥当然だろ?‥。寧ろ、甘すぎる。

 「かいちゃん」たちも、納得していない。夏に向けられた背中越しにもその雰囲気は伝わって来た。

 ‥尊ちゃんが、さっきの「ニヤリ」から、こんなに甘っちょろいことで済ませるかなあ。

尊は、相変わらず軽く微笑んだままだ。

「他のお客さんの迷惑になるし、さっさと帰ろ。そこの君も、‥すみませんね。友達が失礼なこと言っちゃって。でも、これから先、また偶然‥オレの前に顔を出したら、‥気持ち悪いから、オレ、ちょっと殴っちゃうかもしれないです」

 と、最後は、にっこりと花が咲くみたいに笑う。

 ‥それ、おかしいから。

 気持ち悪いから殴るとか、ダメだから。

「尊ちゃんたら、そんなことあるわけないじゃん。‥彼普通っぽいから、大けがしちゃうよ? 」

 ‥そこの文系眼鏡君。なんであんたそんなこと知ってる。殴られたことあるのか? ‥しかも、殴ることについては止めないんだね。

 てか、君は普通じゃない‥のかな? 結構普通そうに見えてるんだけど‥。

 だめだ。突っ込みどころ多すぎる‥。流石都会は違うなあ。僕みたいな田舎もんには、‥理解できない。

「は? ‥オレ‥? 」

 付きまとい男が、‥反応したのは、でも「そこ」だった。

「ん? ああ、尊ちゃんのこと、女子だって思ってた? ‥そんな情報すらなかったのか、可哀そうな奴」

 茶髪が同情した様な顔を付きまとい男に向ける。

 ふふ、と尊は、最後にもう一度ちらっとその男を見てから、店員の女の子に「会計お願いします」と笑顔でレシートを出す。

 そのちょっと人を誑かす、悪い笑顔は、‥だけど可愛いというより、男っぽい。あれだ、中学生に大人の片鱗が見えたってアレだ。その未完成な色気に、店員の女の子の顔がちょっと赤くなる。

 会計をまつ尊にはっとなり

「あ、ちょっと待ってね」

 と夏が財布を出そうとするのを尊は手で制する。

「今日はいいよ。オレが出す。‥迷惑かけてごめんね。ちゃんと食べられた? 」

 と、眉を寄せる。

「え? ああうん! 全部食べられてたよ、‥尊ちゃんよりも早く食べ終わってたよ」

 まあ確かに、落ち着いて食べられたとは言えないけどね。

 でも、夏が食べ終わってたのは確かだ。

「ごめん。遅かったのは寧ろ、オレか」

 ふふ、と尊が苦笑いする。

「なんだ、尊ちゃん、食べるの遅いの? 女子みたいだな」

 続けて会計を済ませながら、悪友`Sが尊の後ろに立ち、一緒に店を出る。

「ああ、ごめんね。‥久し振りに、食品らしい食品食べたから、ちょっと消化に手間取ってた」

 肩をすくめて尊がまた苦笑いをする。

「‥なんだそれ」

 悪友`Sが呆れた様な顔をする。

 ラーメン一つで消化に手間取るって、どんなだ。

「普段、冷や奴が基本だからかな」

 ん~と尊が首を傾げる。

「何、尊ちゃん冷や奴好きなの? 」

 ぷっと吹き出したのは、文系眼鏡君。

「いいや? 冷や奴は明日の「イケメン」を作るミラクルフードだから食べるだけで、別に好きだとかはない」

 ちょっと真面目な顔の尊が答える。

「え。何それ」

 食いついたのは、茶髪の半イケメン。‥美容に関心があるのか?

「オレの師匠、すっごい男前なんだけど、そんな彼が毎日欠かさず食べてたのが冷や奴だったんだ。オレは思ったね、‥イケメンになりたけりゃ、冷や奴を食えと」

 ‥彰彦君のことか。

 夏は遠い目をして

「‥関係ないと思う」

 あっさりと断言する。

 確かに、彰彦君はイケメンだ。それもちょっといない位の、だ。

去年の夏、彰彦君の家に泊まった時、彰彦君は確かに、毎日冷や奴を食べていた。(しかも、おかずの一つではなく、冷や奴が唯一のおかずなんだ)‥でもあれは、料理が出来ない彰彦君たちの苦肉の策(?)のおかずで、別に彰彦君が冷や奴が好きなわけではない。(彰彦君の母親の房子さんに至っては、苦手だって明言してたしね)でも、なんで知ってるんだ? 彰彦宅の夕食事情。‥ああそういえば、あの後ちょっとま住み着いたって言ってたな。(彰彦君が。確か、尊の姉の天音ちゃんも一緒に泊まってたらしい)

 でも、彰彦君は、言うまでもなく生まれたときからイケメンだった。京都にいる彼の父親そっくりの容姿で、彼の父親は勿論の事ながら毎日冷や奴ってことはないだろう。普通に考えたら。

 (考察するまでもなく)イケメンと冷や奴に相関関係があるとは、到底思えない。

 だけど、尊の中には、 彰彦君=冷や奴 って法則が、出来ちゃってるんだろう。

 ‥それで尊は朝から「今日の夜食べないから」って冷や奴を食べていたのか。

 ‥薬じゃないんだから‥。

「夢位見せてくれよ!! 」

 尊が顔をちょっと赤面させて、夏を見上げる。冗談っぽい口調だけど、目はマジだ。怖い。

「何。尊ちゃん、イケメンになりたいの? 」

 悪友`Sが揶揄う様に言って

「ああなりたいさ!!  」

 尊が噛みつくようにそれにこたえ

「可愛い彼女にふさわしい外見になりたいさ!! 」

 と、続ける。‥切実。もう、それ悲願だよね。よく聞かされたよ。リア充の惚気にしか聞こえないんだけど。

「確かに郷宇さんは美人だよな。‥まあ、今のままじゃ、郷宇さんの妹みたいだもんな」

 と返した悪友`Sは、優磨ちゃんを知っているってわけか。‥同じ大学かな? 尊たちより年上に見えるから、上級生なのかな?

「うるせ! 」

 上級生なのに、タメ口だね尊ちゃん。

 そんな感じでわあわあ言いながら、駅前で尊は三人に手を振った。

「ん? 尊ちゃん、アパートに帰らないの? 」

 文系眼鏡君が首を傾げる。

「ちょっとゲーセン寄ってく」

 にこっと尊が答えると、眼鏡君も頷いた。

「ふうん? じゃあ後でアパートでな」

 手を振ったのは、スポーツ刈りだ。

「うん」

 尊も手を振って、さっと三人に背を向け歩き始める。

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