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Souls gate  作者: 大野 大樹
四章 神様参戦する。
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7.都会暮らし

「久し振り! 」

 明るい声を出し、華が咲くみたいな笑顔を向ける美少女に、駅構内にいた者全てが振り返った。傍らには、長身で知的な感じの清楚系美女。

 そのやたら目立つ二人に、出迎えられた青年はちょっと苦笑した。

 スラっとした長身に涼し気な切れ長の目の、少年というよりは、どちらかというと青年寄りの精悍な顔だち。髪は邪魔にならないように短く刈っていて、いかにもスポーツマンといった感じだ。

 彼の名前は夏。

 如何にもアウトドア好きに見える容姿の彼は、しかしながら趣味がパソコンで、今年から入学した大学では、情報工学を専攻している完全なる文系男子だ。

 世間はゴールデンウィーク。

 入学式から一か月ちょっと新生活も少し慣れたからか、京都の大学に通う夏が彼の友人である尊が住む東京に遊びに来たのだ。

 その友人・尊が、「華が咲くみたいな笑顔を向ける美少女」で、「長身で知的な感じの清楚系美女」が優磨だ。

「夏君、背が伸びたね。それに、日焼けした」

 美少女が、シニカルな笑みを浮かべる。

「テニスを始めたんだ」

 夏が言うと

「‥またモテる系スポーツをイケメンはそういうのも外さないね」

 美少女はシニカルな笑顔のまま、毒を吐く。

 相変わらずだ。

 相変わらず、尊は「かまってちゃん」だ。それに、シニカルな笑みも尊にとっては「大人なニヒルな笑い」のつもりなんだ。(可愛い顔だから、そんな風には絶対に見えないんだけど)

 夏はちょっと笑ってしまった。

「優磨さんもお久しぶりです」

 尊に見せた表情より、優しい笑顔を向けた夏に、尊は不機嫌な視線を向け

「お久しぶりです。夏さん。お元気でしたか? 」

 更に、微笑んで返す優磨にショックを隠し切れない顔になる。

「はい。ありがとうございます」

 そんな尊の様子に、二人はこっそり視線を合わせて微笑む。

 ホントに、尊は変わらないな

 夏は微笑ましい想いで尊を見た。

 夏はすっかり尊とは仲良しだが、尊の恋人(尊談)である優磨と夏はそう親しくない。

 夏が2年前夏休みを利用して従兄弟である西遠寺 彰彦の家に泊まりに行ったときに、毎日彰彦に勉強を教わりに来ていた尊と知り合ったのだ。可愛らしい尊の容姿に初対面した時は年下の女の子だと思った。そして、それをそのまま口にして彰彦に笑われた。曰く「同じ年で男だ」と。思わず二度見したのは、仕方が無いだろう。

 夏期講習中で、塾講師のアルバイトをして忙しい彰彦が帰るまでの暇つぶしに、と何気ない感じで引き受けた尊の家庭教師だったが、始まって数分で自分の発言を後悔した。

 尊には、集中力がない。しかも、決定的に基礎学力が低い。

 だけど、一度集中したら持久力はあるし、教えたことは一度で必ず理解したし、記憶力もある。

 明朗闊達で、頭の回転も速い。

 そんな尊に夏が心を許すのに時間はかからず、夏休みの終わりには夏の故郷である広島に尊が『勉強合宿』をしにくる程の仲になっていた。

 そんなの、ちょっとコミュ障な夏には「そうないこと」で、両親が驚いてたのを(特に父)覚えている。今では、父は同じ趣味を持つ「同志」で、可愛くて美人な母はすっかり尊の可愛さにメロメロだ。(←超マザコンな夏にはこれが面白くない)

 優磨ともその時知り合ったのだが、優磨が尊を彰彦宅に毎日迎えに来る際に一言二言話したことがあるくらいのもので、知り合いではあるが友達未満といったところか。

 勿論、親しい友人である尊の想い人である優磨に特別な感情なんてない。尊はだけど、頭脳明晰でイケメンな夏をライバルとして警戒していたのは、まあ当然ではあろう。

 あの時はあの夏休みの間に、そりゃ色々なことがあった。

 因みに、東京にいる楠たち三人が尊と優磨を見かけたのも、この「高二の夏休み」のことだった。

「優磨ちゃんと東京でデートしたい! (ついでに)志望校を見ておきたい! 」「(ついでに)天音ちゃんを助けに行こう」と尊が東京行きを提案したのだ。

 急な思い付きだったんだけど、尊の暴走による単独実行を恐れた彰彦が許可して‥決行された。

「へ? なんで尊たちがここに? 我を迎えにって‥帰りたかったら自分で帰るわ‥」

 天音は眉をしかめたが、優磨とデートがしたい尊の気持ちも分からないではないし、自分のこともほんのちょっとくらいは心配しているのも分かったので、会うのを了承した。

 ただし、研究所の外で。

 あの研究室メンバーと尊を合わせるのは嫌だった。‥特に能力の高い楠は、尊のことを人間ではないと気付くかもしれない‥否、必ず気付くだろう。

 ‥そうなるとややこしい。

 そう思ったのに、予想に反して、三人は尊に遭遇していた。

 分かっただろう。顔が同じだから、我の関係者だという事も、分かっただろう。絶対に。

 でも、楠は何も言ってこない。

 それが、かえって怖い‥。



 さて、尊と優磨が東京駅まで夏を向かいに来たわけだが、勿論、一緒に暮らしているわけではない。

 そんなこと、あの煩い神(→天音)が許すわけがない。

「研究室で一緒に住もうと思っておったが、‥わざわざ我と尊の関係をばらすのはなあ」

 と、東京郊外にアパートを借りる手続きを手伝ってくれた。(所帯持ちのサラリーマンみたいだ‥)

 因みに、優磨のアパートも。こちらは、「オートロック」を前提に探していた。なんだその、本人以外は勝手に入れないって。いうけど、本人と入れば問題なく入れるけどな! 

 ‥入るのに、指紋認証とか、事前に指紋登録とかどうなんだ。

 それを、優磨の母親限定って‥。

 ‥孝子さん(優磨母)も「それはやり過ぎじゃ‥」って苦笑いしてたぞ。「尊ちゃんも遊びに来たいでしょう? 」折角の孝子さんの提案も

「外で遊べばいいでしょう。年頃の男女が同じ部屋に‥なんてもってのほかですよ」

 とバッサリ。

 ‥自身の分霊が信用ならないとは、寂しい奴だ。

 一応、彼女は、尊の双子の姉という事になっている。

 全く同じ顔をしているわけだから、だれもそれを疑うことはない。

 尊は苦々しい顔で「姉」の行動の一部始終を見ていた。

 だけど、本当は違う。尊は彼女の、否彼の分霊だ。

 神である彼の強すぎる力を分散するために、彼は自身に分霊を作った。

 そういった理由だから、分霊とはいえ、彼と尊は持っている能力が違う。それに、全く半分に割られたわけでもないし、記憶もどうやら、半分に割られているらしい。

 そして、その分霊を一つに戻すキーワードが「神としての名」だ。

「名前が分かれば、‥それをオレが受け入れれば、オレは天音ちゃんに吸収される。‥その時は、どうしてもその必要があるときと、‥オレが優磨ちゃんに必要とされなくなった時だ」

 尊はその事実を受け入れているようだった。

 ‥まあ、割り方がおかしいよな。頭脳は天音ちゃん。運動神経とかは、オレかもしれないけど、神としての力の六割はオレだけど、スキル系は殆ど天音ちゃんなんだから‥。

 あの例の「地面を泥化して人を埋める」も、その一つだ。

 尊は、そんな器用なことできない。単純に大きなものや重いものを持ち上げたり、投げだり殴ったりと体力系なんだ。身体は小さいが、力も強いし、動作も機敏。尊は喧嘩無双なパワータイプのアタッカーなんだ。

 まあ、そんな機会はないから、誰も知る由もないんだけど。

「今日は天音ちゃんは? 」

 さて、三人で一緒にお昼ご飯を食べてちょっと観光をして、優磨と別れ、今は宿泊先になる尊宅に向かっている。例の‥天音が決めた安くてボロいアパートだ。

 因みに、優磨は呼んだことはない。

 優磨ちゃんにこんなぼろ屋には来てもらうのも‥どうかと思う。

 壁も薄そうで、プライバシーもなさそうだし、ここの奴らに優磨ちゃんを見せるのも、嫌だ。

「今日は来ない」

「たまに来てくれたりするの? 」

 尊が頷く。

「ご飯作りにな」

 その点、別に天音ちゃんなら問題はない。

 女っけないアパートだし、周りは娯楽に飢えたモテない連中ばっかだけど、

「時々天音ちゃんがご飯を作りに来てくれるんだけど、おんなじ顔だから噂にもならない」

 と、尊。

 ‥オレの知り合いに手を出したら、‥怖いって分からない奴らはうちのアパートにはもういないしね。大人しいいい奴らばっかりだよ? 

 には、ちょっと苦笑いしてしまった。

 ‥あったのか? 喧嘩無双を披露する場面。

「まあ、オレの存在をにおわさなくても、天音ちゃんなら大丈夫だしね。‥天音ちゃんがやり過ぎないか寧ろ心配するよ。オレはもう、穴を埋めるとかお断りだからな」

 常日頃、尊はそれを天音に言っている。



「夏君、ホントにあのアパートに来るの? 」

 尊は念を押す。

 駅前のビジネスホテル借りた方が快適に暮らせると思うぞ。‥まあ、一人暮らしの友達を訪ねる経験なんてないから楽しみっていうなら、仕方ないけど。

 ‥そんなにいいもんでもないと思うぞ。

 だけど夏は

「晩御飯のおかず買って行こう♪」

 って駅前のスーパーでさえご機嫌だ。

 そういうの夏を見たら、ちょっと微笑ましくなっちゃうね。

 因みにこれ、ちょっと夏君がはしゃいで、尊がゆったりとシニカルに微笑む通常な(いつもの)光景なんだけど、傍から見たら、美男美女のカップルそのもので、けっこう注目されまくってるんだ。

 尊は目立った美少女だし、長身でイケメンの夏も目立つ。

「移動時間結構あるから」

 尊が夏に念を押した。

 買い物袋を片手に、私鉄やなんかに調べることもなく勿論の事ながら当たり前の様に乗る尊に、夏は尊敬の眼差しを向けた。

「かっけえな~尊ちゃん」

 夏が目を丸くして言った。

 自分なら、路線図で確かめなきゃのれんぞ。‥てか、そもそもこの路線図の見方がよくわからんから、駅員に聞いた方が早いな。

 しかも‥乗り場もいくつあるんだって感じだし、‥これも聞かないと分からないな。

 移動中の電車で、学校のことなんかをお互いに話す。

「降車駅いくつ目だっけ」

 って落ち着かないなんてこと、勿論ない。

 地下鉄とか特に、乗り慣れなかったらわかんないよね。

 と、夏はキラキラした目で尊を見た。

 夏の尊敬の眼差しに、尊はちょっと嬉しそうな顔をした。

「えへへ、そう? オレって都会っ子だから」

 うむ。素直でよろしい!

 電車はずんずん郊外に向かっている。

 何となく都会っぽくなくなる周りの景色をきょろきょろ見ながら

「尊ちゃんは、大丈夫なの? 電車とか、痴漢に遭ったりとかしない? 夜道も‥危ないよ? 」

 心配してくれる夏に、尊はちょっと首を傾げた。

 痴漢とかの心配なんて、そういえば今までしたことなかった。

 中高と地元‥それも、電車にも乗らずに登校していた、塾には電車で移動したが、駅前だったからそう危険を感じることはなかった。

 駅前は、そうは言っても安心だ。

 交番もあるし、監視カメラがある。

 しかし、田舎にすらあったそんな監視体制は、尊の住むボロアパート周辺には求めるべくもないわけで‥



「夏君、こっちこっち」

「ええ? ここ? 」

‥なんでこんなところに入り口あるの?? 入り口だけ、ココにあるってことかな?? 即効階段?? どうなってるんだ?? 店の二階が下宿ってことかな?? 長細い‥。ってか、通路とか狭いよね?? 駐車場も勿論ついてないぞ。(別に要らないけど。東京って車そう必要ないですよね? )

 暗い。‥何か思ってたのと違う‥。、

「尊は男だから問題はない」

 と天音が言い切って借りたこのボロアパート(※天音が給料から家賃を払っている)は、「~荘」っていう風情漂う昭和レトロな感じの外装の建物で、都会の学生の一人暮らし感はない。田舎の国立大学の男子生徒って感じの「下宿」で、決して女の子が好んで遊びに来てくれそうな感じはない。

 ‥尊ちゃんたちって、お洒落な有名私大生だよね‥? 。

 それこそ、コンパとかも多いんじゃないかな?? でも、コンパとかで女の子お持ち帰りしても、絶対連れてこれないな。

 ‥寧ろ隠したい感じ。東京にこんなとこあるの? って思ってしまう。

 てか、尊ちゃんがお持ち帰り‥(笑)ないな。寧ろお持ち帰りされかねない。(で、そんなこと言った男は路地裏で朝を迎えるんだろうな‥全身ボコられて‥)

「東京ってこんなんなんだ‥? 」

 まあ、東京らしいっていえば、その小ささかな。

 物価が違うからね。何といっても。

まあ‥京都の物価も高いから、なんともいえないけどね‥。



 「有名私立大学生のお洒落なキャンパスライフを体験♡」の夢が儚く消え、寧ろ京都郊外の自分ちよりも田舎暮らしをしている尊の苦労を垣間見た‥。

 ‥ま、身の丈って大事ですよね‥。

 学生で、お洒落なマンション生活とかってどんだけ親の脛齧ってるねんって感じだもんね‥。

 がっかりした半分、ちょっとほっとした夏だった。

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