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Souls gate  作者: 大野 大樹
四章 神様参戦する。
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6.持て余す

世間では、ゴールデンウィークらしいが、研究室のメンバーにはそんなことは特に関係がないかのようだった。

「学校が休みだと、こう、身体がなまるね」

 は、梛。

「大学生って、いつ学校いってるかわかんないよね」

 と、楠と桂を見る。

「楠君は大学院だから、余計にね」

 と桂もゆったりと頷く。

「桂ちゃんは実家に帰ったりしないの? 」

「別に、今までも高校卒業後はずっと下宿してて、うちになんて帰ってないわよ? 夏休みや冬休みっていった長期の休みは稼ぎ時だしね。普段の日は、大学行きながらバイトが忙しいかったわ。今は、給料が出るからバイトしなくていいし、その時間が研究やら論文に回せる。プログラムだって組めるし、分からないことはすぐ聞ける。ホントにすごく助かる。‥まあ、チューターは大変だけどね」

 チューターとして担当してる人数が凄いのだ。

 それらに対して、悩み相談だのカウンセラーの手配だの、「お手伝い」を付けてもそう解消されない。

 今まで人とそんなに関わって来た覚えがない。

 急にそんなにコミュニケーション能力がつくわけではない。

 だけど、誠心誠意出来ることをやるまでだ。

 ‥私に当たって不孝だな、楠君にあたった方がよかったのに。

 って最初こそは思っていたけど、今では責任をもって仕事をしている。

 誰だろうと、誰に対してだろうと、することは変わらない。

 ただ、誠心誠意接するだけだ。個別対応って言いながら、アプローチする方法が人によって違うだけで、行きつく先やなんかを考える必要はない‥というか、その答えを出すのは、私たちではなく彼ら自身だ。

 これ以上裏西遠寺と関りを持つか、否か。

 チューターにとって重要なのは、結局はその二択だ。

 そう思えるまでになった。

 関わり合いになるのを選んだならば、彼らにこれから先関わっていくのは裏西遠寺で、関わり合いにならないならば、楽しくゲームをすればいい。

 自分たちは、あくまで「ゲーム」のやり方を教えたにすぎない。

 そういう「駆け引き」ってある意味、チューターにとってのゲームだな、とも思う。

 ‥それを楽しむような余裕はまだないけど。



「チューターかあ、俺にはまだ無理ってか‥、これから先も出来る気はしないな」

 家族の会話を自分から振ったのに、何となく、これ以上触れたくなくなったのは‥別に桂に気を遣ったからじゃ、ない。

 あ、多分自分と桂は違うな。って直感で思ったから。

 桂は、家族の中に居場所がないわけではない。

 ただ、避けてるだけに過ぎないんだって。

「ふふ。これから梛も人生経験ってのが増えていくでしょ。そしたら、チューターのお仕事手伝ってくれたらたすかるわ」

 お姉さん見たいな口調で言う。

 桂は梛のことを子ども扱いしたりはしない。だけど、‥家族みたいに接する。

 それが、かえって‥よそよそしい。

 梛とチューターとして受け持ってる子たちは彼女の中で違う存在なんだろうか? 

 桂に『特別』ってあるのだろうか。

 あんなに何もかもに無関心な柊の兄ちゃんは、楠に対しては執着を見せる。

 柊の兄ちゃんにとって、(どういう関係と呼べばいいのかわからないけど)楠は特別。

 それは、楠だって同じ。

 あのいつもニコニコしてる楠は、‥柊さんの声が苦手。

 ‥隠してるつもりかもしれないけど、柊さんがしゃべる度に微妙に眉が動いてるの、気付いてるよ。

 ‥時々、びくってなってるしね。

 初めはほんの偶然気付いただけだったんだけど、気にして見たら、いつもそうだから、「苦手なんだろうな」って思ったんだ。

「人生経験ねえ。今でもそこそこ積んではいる気はするなあ。‥少なくとも、そこいらの大学生程度には」

 勉強して、働いて、同僚と議論して。

 ‥大学生とは、違うな。

「ふふ、もっといろいろな経験があるんじゃない? 楽しいこととか、悔しいこと‥。仕事以外のことでね」

 それ、桂ちゃんが言っちゃうと、なんか違和感半端ないんだけど。

「私にはなかったけど、‥梛はまだ間に合う」

 ‥桂ちゃん。それ言っちゃうんだ‥。

 ‥それって、逃げてるだけなんだけど‥逃げてるだけに見えるんだけど、‥それ言っちゃうんだ。

「間に合う、のは桂ちゃんの方だよ。‥実家、戻ってみたら? GWにでも。一度話をしてみた方がいい‥。桂ちゃんは、俺を家族として扱ってくれる。‥その「家族」っていう概念を育んでくれたのは、間違いなくそこだよ。‥俺には分からない事だったから、‥正直、戸惑ってた。

 だけど、桂ちゃんには戸惑いはなかったってことだよね? 」

 年下の梛を当たり前の様に、『弟』として扱うことに対して、戸惑いはなかったってこと‥。

 その一方で、『家族』といいながら、年の近い柊や楠や柳に対しては、一歩引いたところがある。

 あんなに「異性」感ゼロのある意味「人畜無害」な奴らだのに。

 柊が、美形だから緊張する?

 柳が桂にする「女性扱い」に慣れない?

 家族だというなら、それも個性って気にならないはずだ。

 少なくとも、楠は桂ちゃんのこと同僚って扱いしてる。

 まあ、妹っていうには年が近すぎるからね。

 桂ちゃんがパートナーっていうのは‥、ごめん! 想像できない!

 だって、俺の中で、楠ってやっぱり「お母さん」なのだから‥。



 梛の家族は梛を必要としなかった。

 目の端にも入れたくなくって、梛を拒絶した。‥そして、梛は行き場所をなくしてここに来た。

 ‥でも、西遠寺は偽善団体じゃない。

 ここに梛が来れたのは、一重にここに来れるだけの才能があったからに過ぎない。

 レアとしての資質がちょっと、そして、並外れた頭脳。

 能力者としては少し足りない位な能力を補いうる程の頭脳。

 そして、それこそが梛が今、ここにいることが出来ている理由。



西遠寺における桂と梛のポジションは、実は楠・柊・柳とは違う。

最も違うのは、その「能力」だ。

八卦のランクを見てみたらよく分かるんだけど、楠・柊・柳に比べて、桂・梛は若干低い。

レアであるのには違いないんだけど、「辛うじて」程度のものなんだ。

チューターとしてのアバターは、個人用に別に作られたから、本当のランクが分かるような容姿をしてはいないのだが、それは、そういった事実を隠すためもあった。

チューターに必要なのは、ランクとかそういったものじゃないしね。

 西遠寺における陰陽師候補スカウトを目的とするゲームクリエイト会社『TAKAMAGAHARA』にスカウトされた、または入社を許可された者。

 陰陽師になり得る能力を持っている者。それが楠・柊・柳の三人だった。‥元々は。

 だけど、楠は「自分には、ここで役に立つ能力はない。でも、役に立つと言えば、僕は異能者は、見たら割とわかりますよ」と言ったという。‥でも、それは何となくそんな気もする。



 邪眼の持ち主(天音談。ただし、そうかもしれないというだけの確信のないものだ)で、きっと向かうところ敵なしで、(実際にはそうなんだろうけど、楠はしないんだろうな)手の付けられない子供(筆頭は間違いなく柊の兄ちゃん! )のお守が上手いとか、サーチャーとして面倒見がいいとか。

 楠は、どう考えても裏方向きだし、サポート側の人間だ。

 それは、柳さんもそう。『西遠寺の仕事』が‥と言うより、西遠寺が大好きだ。

柊さんは‥まあ、力が強いのはわかるけど、ね‥って感じだし。

 そもそも、楠さんいなくちゃ無理でしょう。

 仕事どころか、日常生活も‥ヤバいかもしれない。

 ‥そんなだから、柊さんの家族は、柊さんを「持て余した」。

 それは、俺と一緒。

 俺も家族に「持て余された」

 妹は‥小さな妹は俺がいたことを、大きく成ってから思い出したりするんだろうか? 両親は俺のことを妹に話したりするんだろうか?

 ‥両親は俺のことを思い出したりするんだろうか?



「家族、かあ」

 ふう、とため息をついて桂ちゃんが呟く。

「家族ねえ」

 と、その隣に座り梛も呟く。

「面倒くさくって、‥どうしたらいいかわかんない。だのに、‥どうして家族ってものを求めてしまうんだろうね」

 その言葉に桂がちらり、と梛を見て、何を言っていいのか分からなかったのだろう、ちょっと、ほんのちょっと微かに笑って俯いた。

 まあ、‥親に捨てられた子供にかける言葉なんて、浮かばないわな。

 ここで、なんか「いい言葉」がするって出て来た方が、引くわ‥。

 用意してたの? って勘繰っちゃう。「作った言葉なんだろうな」って思っちゃう。

 作った言葉って、なんか、価値がないよね。Only you感ないよね。

「‥作れば、いいじゃんって言ってくれていいよ。ないのは、今更だから。‥でも、私たちがいるじゃんって言わないでくれて有難う。そんな気で接しられてたら、‥ちょっと引く」

 そこで、口に出したら「押し付け」って思っちゃうじゃん?

「梛は、厳しいねえ‥」

「子供は、傷つき易いんだよ。それに、‥馬鹿だし、単純だし。残酷だ。だから、うっかり真面目に接すると、‥痛い目に合うよ」

 こういう事、いうから、ダメなんだけどね~。

「真面目に接しなかったら、つむじを曲げる奴が何をいってるのさ。いいんだよ、傷つけ傷つけあうのは、‥僕らにはよくあることだろ」

 いつの間に来ていたのか、楠が自分のパソコンを立ち上げながら言った。

 それを、したくない奴の方が、世の中多いんだよ。

 特に俺相手はね。

 傷つけられることが多すぎる。

「ま、楠には、俺を傷つけられると思わないけどね」

 にやり、と意地の悪い笑いを浮かべたら

「ふうん。‥じゃあ、もう、いいっか」

 ちょっと首を傾げた、楠がちょっと眉をしかめる。

 その顔はちょっと哀しそうで、ちょっと‥冷たい。

 ‥おうう。

 さっきちょっと、があん、って来たぞ‥。

「嘘」

 ふふ、と笑う線目の楠。

 子供相手に、‥ってか、これ、恋人相手みたいだよね?! 拗ねる女子か!! ったく、楠ってちょっと‥。

 ‥どうかと思う!!

 似合うのも、

 ‥どうかと思う!!



 何を持て余すって‥。

 俺も、‥多分柊さんも‥楠を持て余してる。いや、柊への想いを‥だ。

 憧れて止まない母性に対する熱なんだか、‥はたまた幼い恋心なのかは分からない。(あ、恋心って言って、ラブ的なもんじゃないよ。憧れって奴だね)

 そんな初めて感じる「想い」。そんな気持ちがモヤモヤして、でも、不快だって払って捨てきれなくて‥

 そんな熱っぽさを、持て余すんだ‥。



「‥どした、梛。熱でもあるのか? 怒ったり、悩んだり‥。ああ、思春期って奴だな。‥まあ、悩め悩め」

 からからと笑う柳さんが、‥憎いし羨ましい。

 だけど、代わりたいとは思わない。

 熱っぽさは、不快ではないし、考えるとき、俺は一歩一歩大人に近づいてる気になる。

 熱っぽさを持て余すのは、

 悪くない。

 俺にとっては、‥とびっきり幸せな時間なんだ。

 生きてるって実感できる時間なんだ。

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