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Souls gate  作者: 大野 大樹
四章 神様参戦する。
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3.事前の打ち合わせの必要性

 ‥なんだ。那須君のこの質問。

 俺、もしかして何か変なこと言ったか?



 ここで梛は、那須の微妙な空気に気付いた。

 常に人に対して警戒を怠らない‥というか、人の変化には直ぐに気付く。人の言葉の裏を読む。言葉尻を捕らえる。

 ‥癖みたいなもの。

 この頃は、以前ほど常に緊張を強いられなくなっていた。人間関係も‥驚く程円満だ。だから‥ちょっと油断していたんだ。

 いや、今は考え事に集中しよう。反省は後だ。今後の対策も後だ。



 ‥さっき那須君は明らかに、何かに反応した。

 なんだっけ「プログラムの初期設定アバター以外に誰か入ってない? 」と、「一人も? 」。

 まるで誰か入っているのが普通ってことなんだな。

 そう言えば、柳さんはあの時‥、俺が「今日ログインしてみる」って言った時、何て言っていた? 

「なんだ、梛か。わからないことあったら、楠さんに聞いて? 」

 だ。

 ‥ああ、そうか、柳さんが俺の「チューター」だったんだ。

 一般のユーザーとしてログインした俺には、勿論「チューター」が付いていた。そして、それが柳さんだった。そして、柳さんはユーザー情報を見て、「それ」‥「翔」が、俺だって分かった。

 だから、「なんだ、梛か。わからないことあったら、楠さんに聞いて? 」だ。

 そして、今那須君が言っているのが「チューター」が入っていないの? って話か。

 しまった、うっかり「自分にはチューターが付いていない」→「チューターは要らない立場の人間」っていう情報を漏らしていた! 他のユーザーとは違うよ、って自分からばらしてどうする‥!

 というか‥。那須君は、運営の存在みたいなものを、何となく気付いてるってことか?!

 ‥とにかく、対策を練らないと、‥それには時間がいる。

「あ、いや。ホント最近始めたから、見てないっす。見てないだけで‥いるかもしれないっすね。どうやって見るんっすか? 」

 翔は取り敢えず、「今初めて気づいた」みたいな態度をとって、その場を誤魔化すことにした。

 ‥我ながら苦しいな。頼む、騙されてくれ‥!

「ん? ああmy八卦表を開くんだ」

 当たり前だけど、那須はその位では騙されてくれないだろう。

 とにかく今どれ程言葉を重ねてもぼろが出るだけだ。ここは、「持って帰って」対策を練らなければ‥!

「my八卦表ってどこに入ってるんです? 」

 翔の『俺は知りませんアピール』、出来てるかな? 

 思わず、ごくっと唾を飲む。

 手汗が半端ない。

 ごしごしとポロシャツの裾で手汗を拭う。

 よし、今だ

「ステータスボックスだよ。そこで‥」

 那須が説明を始めるタイミングで、焦ったように言葉をかぶせる。

「あ!! しまった。今からちょっと用事があるんっす! すいませんっす! 。次の時までには、my八卦表をあけて確認しておきますっすねっ! ホントごめんなさいっす! 」

 で、突然ログアウト。

 ‥しかし、我ながら、なんだこの「キャラ設定」。ワンコ顔だから、ワンコ系。

 ‥あんまり慣れないから、ここからぼろがでそう。



「ん~。my八卦表をあける前に、とにかくメンバー募集に乗った‥? 変なの。でも、分からないっていいながら、ネットには色んな情報が流れてるわけだし、自分が聞き知ったところから始めたってことかもしれない? 」

 ‥何にせよ、運営の人が初めから入ってるって情報は、別に僕やらアズマ先輩だけが特別気にするだけで、他の皆はそんなに気が付かない様なことなのかもしれないし?

 感じ悪いこといったり、変なことで疑ったりって、「楽しくゲームする態度」じゃないよね‥。‥嫌われて、ブロックとかされたらどうしよう‥。

 さて、(梛は焦っているわけなのですが)奈水流は奈水流で思うところがあったらしく‥、しばらくパソコンの前で頭を抱えていた。

 ‥自分のワールドに帰ろう‥。

 アズマ先輩には、‥ちょっとまだ報告できないなあ。次にまた翔のワールドに入れたら嫌われてなかったってことだし、入れなかったら、もう嫌われちゃったってことだよね‥。登録自体抹消って感じになるのかな。‥怖い‥。

「は~。余計な話するんじゃなかったよ‥」



 ‥焦った~!

 しょぱなからぼろを出すとこだった。

 ‥ってか、ちょっとアウトか?

「せめて楠と事前打ち合わせしなきゃならなかったな。‥今からでも、何とか挽回しよう‥」

 Souls gateからログアウトすると、のっそりと梛は立ち上がった。

 さっきから半端なくついているため息に、柊さんが眉をしかめて怪訝そうな顔をして梛を‥でも寝ころんだまま‥見ている。

 ここで、「どうしたの? 」って聞いてくれないのが、流石柊さんって感じなんだけど。

 オカンな楠なら真っ先に心配して聞いてくるだろうし、桂ちゃんも、そう。柳さんは‥心配って感じとは違うな「なんかヘマしたか? しでかしやがったか? 」的な‥。柳さんはちょっと鬼軍曹なところあるから。

 いや、別に嫌な人ではないよ? だけど、仕事には、人一倍プライドがあるし、西遠寺第一だし。‥それは、それで尊敬できるしね。

 ‥そんな、尊敬できる西遠寺第一主義者よ!! 俺に、チューターの件念を押すくらいしといてくれよ~!!

「今回は、チューター抜けるけど、他の人には入っているって言っといてね。チューターは皆はいってるから、入ってないっていったら「ちょっと変だぞ」って思われるかもしれないからな」

 って念押しといてくれよ~!!

 ‥てか、そんなこと疑問を持つなよ、那須君‥いや、奈水流さん。

 梛の頭に、楠を睨みつけていた奈水流の目がフラッシュバックした。

 「いざとなればなんとかやってやる(いや、やれないわけがない)」って『いう気』になってる目。

 ‥怖えよ。



「どうした? 頭を抱えて。なんか、ヘマした? 」

 ‥柳さん。

 予想通りの反応アリガトウゴザイマスここでばれたら不味いですめちゃ怒られそうです。

「イヤナンデモ」

 へらりと誤魔化し笑い。

 ‥誤魔化されてくれるかな?

「まあ、いいけど。何か問題があったら、何でも報告してね? 直ぐに対処すれば何とかなることなら、そうした方がいいし」

 ちらり、と梛を見る。

 その目が、‥冷たい。

 ‥これは、バレてるな。

「あのさ。‥ちょっと口が滑って‥」

 梛は、さっきの那須との会話を柳に話した。

 もう、‥恐る恐る。

 鬼上司に失敗を報告する新人部下そのものの対応でしたとも! ええ! 

 で、それを黙って聞いている柳は、いっそ面白い程無表情。腕を組んで梛の話を無言で聞いてる。

 その様子は、どうポジティブ的見解で見ても、弟や後輩を慰めるって感じなどなくって‥。

 梛的にも、でも、そんな対応は望んでいない。

 梛はここで働いている立派な社員としての自覚がある。

 だから、楠ではなく柳に報告したのだ。

「‥う~ん。その、那須君のサポートって‥アズマだったよね‥。確か。アズマがそんな話したのかな。聡い子だけど、ちょっと‥人が好過ぎるのかな、口止めしたわけじゃないから、口が軽いとは違うんだけど‥。う~ん」

 と、これは完璧独り言。

 ちょっとイラついている。

 そして梛に頭を下げ

「今回のことは、悪かった。‥完全に俺の判断ミスだ。アズマのことをちょっと見誤ってたのもそうだし、チューターのことを念を押さなかったのも悪かった」

 謝ったのだ。

 怒られるどころか謝られた!!

「いや! チューターの件は俺のミスだ! 俺がちょっと考えたら分かったのに‥」

 梛は慌てて謝り返した。

 柳に謝られてしまうと、さっきまでちょっとあった「言ってくれよ」的な不満が自分の甘えであると思い知らされて、寧ろそんなことで謝られる自分が恥ずかしくて仕方がなくなった。

 俺は、子供だけど社員なのに。

 失敗して、挙句謝られるって、なんだその屈辱は。

「柳さん、今後の対策を一緒に考えて下さい! 」

 今、出来ることは対処でしょ!

 さて、リカバリー頑張ります!!

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