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Souls gate  作者: 大野 大樹
四章 神様参戦する。
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2.運営

 運営は、きっとよく見ているんだろう。

 卦だとか、ランクだとかそういったデータ以外のものを‥

 運営から直接、個人的に‥

 さっきアズマ先輩が言った。

 アズマ先輩なら、問題はないからだろう。

 楠さんは運営の人。そして、かってアズマ先輩にもそういう人がついていて、アズマ先輩はその人を信用している。

 アズマ先輩がそう人を信用するような人間には見えない。きっと、アズマ先輩は賢いし、‥思慮深い。(多分)そして、きっと、用心深い。

 そのアズマ先輩が信用している人なんだ。

 そして

 その人もまたアズマ先輩の人となりを見て、この人は信用が出来ると思ったんだろう。

 もしやその内、アズマ先輩も運営の人の側になっていくんだろうか‥。



 ‥カッコいい。

 カッコいいっですッッッ!!

 アズマ先輩!!



「ん? どうかした? (寝落ちか? )自分のワールド行こうかな‥」

 その間、ずっと通信がその間途絶えていた那須にアズマがそう思うのは、無理はない。

 結構がっつり考え込んでいた。

 考え事をしながら、別のことをする程、奈水流は器用じゃない。

 電話をしながら、掃除をする。

 そういう、考え事と、手を動かすという別々の行動なら可能。

 だけど、考え事をしながら考えることをするってのは、無理だ。

「は! すいませんでした!! アズマ先輩!! あの、ちょっと『翔』君のワールド行ってみます! 」

 で、復活した那須は、しかしながら、今まで話していたことと違う話をしたんだ。

 ‥やっぱり寝てたのか‥。

「え? あ、うん! じゃあ、またね。わからないことあったら、個人宛の掲示板のところにメッセージ残しといて? 」

 アズマ先輩は、でも、まあいつもその可愛い顔で通りシニカルに微笑んで手を軽く振った。

 ‥その、シニカルなスマイル、めっちゃ可愛い!!

 ‥奈水流はパソコンの前で悶えていた。

「あ、はい! 」

 勿論、那須にはそんなそぶり全然出ませんよ! ええ、パソコン万歳!!



 そもそも、このゲームでは、個人→個人のメールは出来ない。

 トラブルを防ぐためだ。

 内容は見ないけれど、一個人に対する大量のメールの送りつけは、運営から注意勧告がなされるし、ウイルススキャンでウイルスの確認されたメールを誰かに送り付けた者は、出入り禁止になる。悪質な場合は、警察に通報されることもある。

 ネットワークが大きいからこそセキュリティには気を遣う。

 だから、小さなバグやなんかを見つけ出し・修正するデバッカーソフトとセキュリティソフトの開発には、TAKAMAGAHARAも特に力を入れていた。

 出来るだけ、総てをTAKAMAGAHARAでやる。

 それは、TAKAMAGAHARAの独自な事情に起因していた。

 そして、個人の情報の管理。

 性格の分析。

 運営はそこまで管理しているのだ。

 まあ、それも西遠寺的によるスカウトを前提にしていたら、頷ける。

 徹底的に個人情報を隠匿する。

 警察による、覆面捜査を常に警戒する。

 でも、表向きは「個人情報保護の徹底」と「出会い系等の犯罪にユーザーが巻き込まれないようにするための措置」等だ。サイバーテロも怖いしね。

 

 

 そして、そうやって個人を保護しながら、徐々に囲い込んでいく。

 取り込んでいく。

「薬学部に行きたいんです」

 アズマは言った、自分の意志で。


 そのきっかけは何だっただろうか。


 アズマのリアルは科学部の部長を務める学生だ。‥別に可笑しなことではない。勉強は元々好きだったし、薬剤師は将来の職業として、間違いない職業だ。収入も悪くない。だから、彼が彼の両親にそう伝えたところで、両親も「今までそんなこと言ったことはなかったじゃないか」とは思うだろうが「でも、彼が将来のことまで見通して考えているんだから、いいだろう」と認めるだろう。

 そんな間、柳は良い相談相手になるだろう。

 アズマが将来就職する際に、柳は紹介するだろう。彼を心配して、また信用して。

 西遠寺的系列の病院があると同時に、西遠寺系列の薬局もあるわけだし、病院の中で薬剤師として働くことだってできる。

 そうしている間、Souls gateは常に彼の傍にいる。

 親しい友人で、頼れる相談相手で、遊び友達。

 そして、当たり前に、頼れる先輩と呼んでくる後輩に慕われ、彼もそれを普通に受け止め、決して裏切らない。

 TAKAMAGAHARAに入社する以外にも、Souls gateに関わっていく人はいる。

 実際、ゲーム制作側に興味のない、しかし、能力者として西遠寺が認めたユーザーの取り込みは、そういう形で今も水面下で行われている。

 その一歩が、Souls gateをユーザーの生活の一部にしていくことなのだ。



「翔君ってどんな子なんだろ。ゲーマーでSouls gateは初めてだけど、僕よりずっとゲームに詳しい子だったりしてね」

 那須は、ログイン済みの翔のワールドにログインした。

「あ! 那須君っすか? 俺は、翔です」

 ワンコっぽい人懐っこい微笑みで那須を迎えたのは、翔だ。

 サンプル「元気」をベースにした性格設定は、見かけともよく合っている。

 那須は興味が無くて、気が付かなかったんだけど、性格設定のパターンには「真面目」「元気」「ツンデレ」等のサンプルパターンが用意されている。

 あの、やたら作りこまれたアズマの性格パターンだが、ベースは「ツンデレ」だ。

 ‥一応女だしなあ

 という、アズマのひねくれた遊び心が加わってのものだったのだ。

 アズマの理想のタイプとかではなく、あの顔を見た瞬間「こうやったら面白そう」と思ったに過ぎない。

 ‥顔は変えられないから、後はキャラクターで何とかするしかないんだ。



「初めましてっす! 俺、実際にSouls gateするの初めてっすから、いろいろ教えて欲しいっす! 」

 ‥翔な梛がどんな設定なのかは、不明。

 でも、変身願望はないらしい梛は、しかしながら、「自分の事を特別な目で見られず、普通の友人として扱ってくれる存在」に密かに憧れていた。

 「翔」という人間の間だけでも、それを叶えたいと思っているのだろう。

「あ、初めまして。僕は、那須です。卦は『震』です」

「はい! 存じてますっす! 」

 ‥存じてますっすってのはおかしいだろ。キャラを作ってるんだろうが、少々間違ってる気がする‥(笑)

 パソコンを前に、奈水流はくすっと笑った。

 ‥年下かな。

 なんか、面白いっ!

「あの、すみません。かってに、僕の八卦表にメンバー登録しちゃって‥」

 ぺこん、と悪そうな顔をして那須が謝る。

 好青年タイプ。

 それをイメージして、奈水流が設定した行動パターンだ。

「勿論いいっすよ! よろしくっす! 」

 やっぱり、‥ワンコっぽい。

 ワンコっぽい顔の『翔』は、笑えば笑う程ワンコっぽい。

 それは、如何にも愛嬌があって、愛想よくって

 自分には、決して持ちえないその身体的特徴を、パソコンの前の梛は、瞳を細めて見つめた。

 ‥変身願望、かあ。

「あの‥俺の八卦表にも、那須君の名前入れてもいいっすか? 」

 翔が戸惑い気味に、上目遣いで那須を見る。

 あ、ちょっと那須より背がちっこいんだ。

 アズマ先輩よりちょっと大きいって程度かな?

「え? もちろんいいですよ! 大歓迎です! 」

 ニコニコ顔で那須がいう。

 これは、大歓迎って言葉に反応した仕草。

 いくらなんでも、全部の言葉のパターンを設定するのは無理だ。

 最大何ワードだったっけか上限がある。

 っていって、そんなに設定は無理だしね。

 そんないろんな話をするわけでもないし。

「他のメンバーとかもう揃った? 」

 ちょっと先輩風を吹かせたい那須は、アズマ先輩の真似をしてみた。

「いいえ? 那須君だけっす」

 コテン、と翔が首を傾げる。

「え? 初めから、プログラムの初期設定アバター以外に誰か入ってない? 」

「入ってないっすよ? だって、俺始めたばっかりっすから」

 ‥あれ、僕は入ってたぞ?

 入ってない人もいるってことかな? 

 パソコンの前で、奈水流はちょっと首を傾げる。

 


 なんてことはない。

 梛は、周りに聞き放題なんだ。

 だから、ランダムにチューターに選ばれた柳も

「なんだ、梛か。わからないことあったら、楠さんに聞いて? 」

 と言って、さっさと撤退したのだ。

 まさか、那須がこんなことにこだわっているなんて、思いもしなかったわけだし‥。

「一人も? 」

「ええ、一人も」

 アズマ的なサポートも同様の理由からつけていないわけで‥。

 対応としては間違ってはいない。

 だけど、奈水流的には、違和感が半端ない。

 ‥あれ? この子、僕らとはちょっと違うってことかな??



 慎重に、そして綿密に計画された、スカウトの準備は‥、しかし、身内へのちょっとした配慮不足で、微かに綻びを見せたのだった。

 その、綻びが奈水流の中で、決定的なものになるかは、今はまだ分からない事なのだった。

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