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Souls gate  作者: 大野 大樹
三章 絶対に交わらない線
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9.絶対に交わらない線 ――奈水流とTAKAMAGAHARA――

 奈水流に感じた「それだけ」感。

 強くって、安定してて「心配はない」

 でも‥この子には、可能性だとか、なんか将来変わっていく「期待部分」がない。

 今はまだ安定していないが、その先にみえる可能性だとかそういうもの。安定していない原因を取り除いた時に出来る、心の強さだとか、成長。

 そういうのが、‥期待できないタイプ。

 自分はこういうものだと知っていて、その身の丈に応じて努力するタイプ。

 自分が分からなくて、でも何とかしたくて目標を見つけようとする。

 これらは、一般的に期待されるタイプ。だけど、西遠寺的に期待できるタイプとは違う。

 西遠寺的に期待できるタイプ、それらは、もっと柔軟なものだ。

 簡単に言えば、自分の方向性を決めてしまおうとしないタイプ。不安定で、だけど、周りに何かを言われて妥協するような「素直さ」も「妥協」もなく、ただ、不安定を受け入れ、自分を見失わない。

 そのまま、何もせずにながされるとは、違う。

 流されず、漂着点も決めず、自分の人生を導き寄せる特別な魂。

 容易に「何者かになろう」としないタイプ。

 そういう「特殊」なタイプ。並みの精神力じゃない。図太くって、純粋な精神。

 これが、西遠寺的に期待できるタイプ。

 もっとも、それだけが条件ではない。

 力が強いこと。

 これがもっとも大きな条件だ。

 力が強いがゆえに、安定できず、常に迷っている、それを救いだすってのが、実は一番確実なスカウトで、それを西遠寺的のスカウトは度々「心の隙間につけ入る」と言っている。

 だけど、奈水流には、その迷いがない。もう既に安定している。そして、安定した今、彼女は自分を高める努力を現実生活に特化させていくだろうと考えられる。

 精神的方向にではなく、将来に結果を出すために。



 強くって、安定してて「心配はない」

 でも‥この子には、可能性だとか、なんか将来変わっていく「期待部分」がない。


 

 これが、この前偶然奈水流を見た時の楠の感想の全て。

 チューターである楠は、本当は最も奈水流に会うべきではなかったのだろう。

 先入観を持ってしまう。

 写真で見るのと、実際に会うのは違う。

「‥まあ、そればかりはな‥」

 でも、偶然だから仕方がない。

 会ってしまったが、先入観を持たないために、「ああいう面もある」という見方をすることも出来る。

 仮想世界の方が、本性を出しやすい人間だっている。

 リアルでの対人が苦手で、「演技」って程ではないが、そんな態度を取ってしまう人だって、多い。

 だから、「あれが全て」って考えるのは間違っている。

「‥人間は単純じゃない」

 判断基準なんてものは、どこにあるんだろう。



 あの子は、支える必要もない。そして、あの子の心につけ入る隙も、ない。



 ‥あの時、「君の第一印象は? 」って柳さんに聞かれたときの僕の答え。

 あれが全てではないだろうけど、「第一印象は」って聞かれたからああ答えた。

 どうしても、TAKAMAGAHARAというものと、あの子がイコールにならない。

 TAKAMAGAHARAという線と、あの子の今後っていう線が交わらない。

 TAKAMAGAHARAにブレはない。そして、あの子にもブレがない限り、全く遠くじゃなくてもずっと平行線上にいるだけ。



「あの子が、ここに来るのはいや? 」

 柳がふふ、と楠に微笑みかけた。

「え? 」

 驚いた楠が柳を正面から見る。

「怖い、かな? 」

 ただ穏やかに微笑んでいるだけの柳の眼差し。

楠を探っているような様子はない。問いかけているわけでも、質問しているわけでも、ない。ただ楠が今彼にとってどう見えているか、ということを言っているに過ぎない。

「そういう風に聞こえましたか? 」

 首を微かに傾げて、楠が訝しそうな表情をする。

「うん」

 くいっと口元にも笑みを浮かべる。

「今までに君の周りにはいなかったタイプってことなんだろうね。だから、‥得体が知れなくて扱い方が分からない。分からないからって放り出しちゃ駄目でしょ」

「‥そういう風に聞こえました? 」

 失礼な。

 楠がちょっと抗議の目を柳に向ける。

「怖いから、あの子には関わりたくない、っていう風に聞こえたよ。‥君にしては、切り捨てるのが早すぎる」

 一目会っただけで、「支える必要はない」なんて、楠にしては‥冷たすぎるんじゃない?

 あの柊さんに、事情も聞かず寄り添って

 梛の心を開いて

 桂に居場所を作った

 そんな楠が、一目会っただけの少女を切り捨てる。

 その不自然さ。

「俺は実際に彼女にあったわけじゃないけど‥」

 と、付け加える。

 だけど、会ったとしてもやっぱり、即座にその子の人となりを判断することなんて出来ない。出来るわけがない。

「‥怖い。そうかもしれないですね。‥僕らが関わることで、TAKAMAGAHARAとあの子がこの先接点を持っていく‥それが、怖いかもしれないです。普通の子のままでいられるならば‥その方がいい‥」

 TAKAMAGAHARAは、特殊だ。

 普通か普通じゃないかといわれたら、確実に普通じゃない。

 関わらない方が、普通の子だったら絶対にいい。

 ただ、楽しくゲームをすればそれで、いい。

 そういう子の方が、多いわけだし。

 奈水流がそういったその他大勢と違っているのは、特別にランクが高いからだ。

 そして、それに彼女自身が何の危機感も持っていない。

 犯罪に巻き込まれる可能性もそう。

 そういう危機管理は普通だったら、梛のブロックがしてくれる。

 だけど、今回はそのブロックが効かない。

 相手の意志とは無関係に関わらなければいけない事態なのだ。

「できれば、こっちの非を謝罪し、それ以上に関わらないようにしたい‥」

 彼女はこれをきっかけに、TAKAMAGAHARAとの接点を望むタイプではない気がした。

 だから‥。

「‥それを決めるのは、‥でも、彼女の意志だね。最終的には」

 ふう、と小さく柳がため息をつき

「ええ」

 楠も小さくため息をついた。

「様子をもう少し見てみようか」

 柳の意見に楠も無言で頷く。



 ‥あの子の為って言いながら、自分の為だ。‥僕は、あの子にここの生活をかき回されれるのが怖い。普通で「幸せそうな」子。それは、‥今まで僕が警戒して、ただ他人としか認識してこなかった人たちだ‥。



 その人たちの人生と僕の人生もまた、交わることがない線と線なんだ‥。

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