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Souls gate  作者: 大野 大樹
三章 絶対に交わらない線
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6.神様の名前

「あ‥神様の名前‥? 」

 いや、今は話した内容はどうでもいい。

 ‥桂ちゃんが、初対面(※高橋は、桂には一度も話しかけていないし、桂も高橋に話しかけてはいない、という意味で)の人に話しかけた!!

 緊張しているからだろう、いつもより声が小さい。

 か細く消え入りそうな口調で、桂が高橋に話しかけた。

 それには、研究室の皆が目を見開いて桂を見た。

 桂が今まで自分に話しかけてこなかったので、「嫌われてるのかな‥」と思っていた高橋の驚きは、しかしながら他の者とは違っていたが。

 ‥何しろ、こんな口調や外見だ。軽蔑され、話すらしてくれない者は今までだっていた。(好きでやってるから気にしてはいないけど)

 だけど、桂はそんな自分に椅子を持ってきてくれた。(第一印象はかなりいいよね! )

 勿論その時に、お礼を言ったが、桂は真っ赤になるばかりで、離れた席に座ってしまった。

 目も合わせず。

 ‥やっぱり嫌われちゃったかな‥。(ちょっとしょんぼり)

「すみません。彼女は極端に人見知りをするんです」

 楠がフォローを入れた位だ。

 『人見知りなんです。』

 これ、子供の親が相手に懐かない子供のことを謝るときの常套手段だ。

 『‥別に貴方だけじゃなくって、うちの子、結構誰に対してもこうなんです。すみませんね。貴方だけとかじゃくれぐれもないんです。しかも、礼儀を教えてないとかでも勿論ないんです』

 って意味。

 相手に対するフォローでもあるが、一番の目的は「そんな感じなんで容赦したげて♡」っていう言い訳だ。ぶっちゃけ。

 流石に、成人前の女子にそれは‥駄目だろ‥。彼女は『ココ』に就職してるわけだしさ‥。

 ‥まあ‥だからこその。ココなんだろう。

 彼女は、多分普通の会社には勤められない。研究室に籠って論文を書いたって、発表をしなければならない。将来的に講師なり教授になれば学生に教鞭を執らなければならない。

 それはきっと無理だろう。

 そんな彼女が、だ。

 独り言ではない、と高橋は桂の口調と、自分に向けられた視線から正しく気付いた。

 ‥か、可愛い‥。

 ‥そんなに緊張しなくても、虐めないよ~!!

 普段あんな口調だし、女っぽい仕草をしてはいるが、高橋は、普通に女の子が好きな男だ。

 ただ、あの口調とあの仕草が好きなだけで、考え方とか恋愛観とか、そういうのは結構標準的な男性だ。

 ‥つまり、ただの変わり者。

 オネエっぽくしている、っていっても、服装はただのベージュのパンツスーツだ。ラフな感じのジャケットとゆったりしたパンツ。

 ‥まあ、あんまり男性がベージュのジャケット着ることはないかもしれない。って位か。

 細くって、小柄で、あんまり筋肉がないから女っぽく見えてるだけなんだ。

 梛は、初めて会った時に、すぐに「ああ、そういう感じなのか」とわかり、以来、「高橋さん」と呼んでいる、

 もう少し親しかったら、「(はる)()の兄ちゃん」(※本名 高橋 悠翔)とか呼ぶのかもしれないが、多分、梛的に今より親しくなることはないだろう。

「ふふ、なあに。何でも聞いて? ええと‥お名前聞いてもいいかしら? 」

「あ、‥桂っていいます。梛君と‥プログラム組んでいます」

「ああ! 貴女が桂ちゃんね! お名前だけは聞いてます」

 ‥ぐいぐい近づくなよ、‥桂ちゃんひいてるじゃん‥。

 ‥まあ、普段見ないタイプだし、余計にね‥。

 楠は、それとなく桂を後ろに下げた。

 ‥何、この細目 ※高橋の中でこの瞬間、楠のあだ名に決定した。 桂ちゃん狙い? ‥見たところ、私より年上に見えるけど、‥ロリコンか‥!。

 因みに、楠は25歳、高橋は26歳。(実は高橋の方が年上)。そして桂は22歳だ。

 楠は年齢不詳なんだ。

 笑ってたら、年齢より若く見えるし、今みたいに目を細めて通常運転に微笑んで停止してたら、凄く年上に見える。

 ※ 桂は、4年生大学を卒業後、楠の通う大学に編入(3年に編入になる)して来年卒業するので、22歳。だけど、幼く見えるから、高橋には大学に入りたて位に見えている(多分幼児体形もそれを助長している)

「‥楠さん。私は桂ちゃんと話してるんですけど‥」

「あ、すみませんでした。桂ちゃんが困ってるように見えたので。‥少し落ち着いて話してくださいますか? 」

「それはすみませんね~」

「‥‥‥」

 ‥なんだこりゃあ‥。

 梛は、予想もつかない展開に、呆然と男二人を見た。

 ‥楠は、いつもの如く「オカン」な対応なんだろうけど、‥高橋さん、どうしちゃったのかな? 恋かな? 一目惚れかな?? え? さっき何かあったっけ??

「‥あ、高橋さん。ありがとうございました。‥大学に行く時間なので」

 あ。桂ちゃん、‥逃げたな。まあ、こんな状況、困っちゃうよねえ。ったく、男二人が何アホなことやってんだ。

「また、‥お話聞かせて下さいね」

 桂は、勇気を振り絞って、微かに

 ほんの微かだったんだけど、高橋に微笑んで見せた。

「ええ!! 喜んで!! 」

 高橋は嬉しそうに元気いっぱいに答えて、楠はその様子を呆れた様な顔で見ていた。

 ‥オカンなだけ‥だよね? ‥もしかして‥! 柊さん、大変! ライバルかもよ!?

 面白半分、ちらっと、ホントにちらっと畳で寝転ぶ柊を梛は見て

 ‥目が合った。

 偶然。

 ‥タイミング合い過ぎて、びびった。マジで。



 その、また、は意外と早くやって来た。

 というか、あれから高橋は毎日この研究室に通うようになったのだ。

 初めは、(桂ちゃんを怯えさせて)敵認識していた楠も、次第に慣れたらしく、今では世間話をしたりもするようになった。

 神様の名前の話も、桂と一緒に聞いてます☆

「『天照大神』は天の性質‥というか、化身よね。だけど、天は本来の八卦だったら「ケン」で陽の卦なの。陽は、一般的には男性ということになってるけど。天照大神は女性よね」

「そうだね」

 有名な神だ、それ位は知っている。と楠も頷く。

「私の『TAKAMAGAHARA』八卦は、そこら辺を自由にしようと思ってるの。天照大神は女性だけど乾で陽。素戔嗚『素戔嗚』は男性だけど、コンで陰」

 ‥確か、素戔嗚は黄泉の神だっけ。海原もそうじゃなかったかな。でも、確かに陰って感じはするよな。‥陽気じゃない。

「震は雷だから、『武御雷』かな。艮は山だから、『大山祇オオヤマヅミ』。坎は水だから、『豊玉姫』。巽は風だから『志那都比古』、離は火だから『火之夜藝速男神ヒノヤギハヤヲ』つまり、加具土命ね。兌は、沢だから『泣沢女』よ」

「‥火の神は、『木花咲耶姫』も、火の神ね」

 ‥ただ、話がちょっとマニアック過ぎて、ちょっと楠には入っていけないのだった。



 (この会話、誰かがどこかでしていた気がする‥)

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