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Souls gate  作者: 大野 大樹
三章 絶対に交わらない線
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5.デザイン

 ‥誰だ?

 楠は首を傾げて考えるが、どうも思い出せない。‥というか、覚えがない。多分、「はじめまして」だ。

 ここに入ってこれてるってことは、誰かの客人なのだろう。

 と思いながら、目の前の人物を見ると、社員証を首から下げている。

 ‥社員。

 多分ここでは見たことないから、一般の社員だろう。

 そのまま周りをぐるりと見まわして確認をしていると、すぐ横にいる梛と目があった。

 ‥まさか、梛じゃないわな?

「あ、高橋さん」

 ‥おお、まさかの梛だった。

「? 」

 楠の「? 」な表情に気付いた梛が、「ああ」と頷いて

「『Souls gate』制作部の高橋さん。キャラクターのデザイナーさんだよ」

 と、若い女(?)を紹介した。

 ‥どっちなんだろう。「オネエさん」に見えないでもない。

 華奢なんだけど、骨ばった身体、ナチュラルって感じじゃない微妙なメイク。指も長くて細いんだけど、結構骨ばっている。

 ‥声も低いし‥。

 ‥触れないでおこう‥。

「え。あ、‥初めまして。『Souls gate』企画制作部課長の楠です。座ったままで失礼いたしました」

 慌てて立ち上がって、隣に並び自己紹介する。

 ‥背、低い!

 桂ちゃんよりかは高いかな、って位。

 桂は、だいぶ低い。150cmあるかないか位だ。だから、この「彼女」もそれに近いんだろう。

 因みに、楠や柊は、そろって180cmを超えている。

 梛には、憎々し気に「暑苦しい、かさ高い」と言われている。‥半分やっかみだけど、梛はまだ小学生だから、まだまだこれから大きく成るだろう。

 高橋はにこ、と微笑むと

「あらあ、貴方が楠さんなんですね! 初めまして♡ 楠さんって、素敵ですね。私、目の細い人って好きなんです♡」

 高橋も会釈した。近くで見ると、高橋が化粧をしていないことが分かった。つまり、化粧をしているのかって思う位、肌が綺麗なんだ。

 随分とくだけた自己紹介だが、丁寧な会釈だ。

 雰囲気はどことなく、女性っぽい??

「ははは。楠の目はホントは細くないよ。習慣で細くしてるだけ。ふふ、楠は、シャイだからぐいぐい行くのは禁止、ね」

 尚も座ったままの梛が、からから笑いながら言った。態度デカいな、おい。

 桂は、高橋に椅子を取りに行っているようだ。

「あらあ、ふふ。了解です♡」

 ‥梛、お前は僕の保護者か。

「どうぞ」

 桂が高橋に並ぶ。

 お!

 やっぱり、桂の方が小さい。

 しかも、幼児体形の桂は‥高橋の横に並ぶともっと華奢に見える。

 うん、やっぱり高橋さん、若干がっしりしてる。

「あらあ、ありがと♡」

 高橋が桂に、にっこりと微笑みかける。

 椅子は、梛の座っている席の横に置いた。丁度、桂、楠、高橋、梛木という順番になっている。

 高橋は持っていたカバンからUSBフラッシュメモリーを取り出すと

「『梛』君のキャラクターデザイン見てみる? 」

 梛に見せた。梛は頷いて、USBポートにさす。

「これが社内用? 」

 つまり、梛がチャーターをした場合には、これを使う。

 さっきのわんこな「翔」とは全く違う。

「ふうん」

 と、梛は口には出さないが満足そうだ。

「実物をやっぱり若干意識しちゃうのよねえ」

 ‥そうか? 柳さんはともかく、僕は全然違うよね?!

 ‥あ‥そうか。高橋さんと、僕はさっき「初めまして」だったんだ。納得。

 だから、「あなたが楠さん」だったわけか。

 名前は聞かされてたけど、見たことはなかったから。‥それは、桂ちゃんも同じ、か。

 梛は、打ち合わせやなんかで会うことがあり、柳は制作部やらリサーチ部の人とも会うことがあったんだろう。

 ‥逆に、今までそういうのをしてこなかった僕って‥。



「同じアバターの子っているの? 」

 梛が、面白そうに『梛』の3D画像の角度を変えながら高橋に聞いた。

 高橋が、別の画像を開く。

 ‥色見本?

 ちょっと得意そうに、高橋がふふと笑う。

「これが、案外いないのよ! 全部の卦に標準パターンってのがあってえ、それを基準に機械で調整していくんだけどえねえ」

 ‥調整?

 色見本があるってことは、色違いってことかな?

「レアと一般は別の標準パターンがある? 」

 梛が更に質問を続ける。

 高橋が頷き

「それどころか、ランクごとにあるのよ♪ 」

 何枚かの画像を開く。

 ‥あ、さっきの「翔」の原型。「標準パターン」って奴だろう。

 さっきの梛のアバターより若干人間っぽい、かな?

「ランクってどうやって決めるの? 」

 梛が首を傾げる。

 ‥それは、でも、デザイナーさんに聞く質問じゃないだろう。

 高橋は、一度小さく頷くと

「あの判定機は、筮竹に見立てた六本の棒が出て来るでしょ? あれは実は、一本目の(こう)が何パーセント、二本目の爻が何パーセント、三本目の爻が何パーセントってでるの。‥判定してる人には、そんなデータ分からないけど。そうそうレアの子は、この三本でほぼ百パーセントになるのよ。だから、小成(しょうせつ)八卦(はっけ)っていわれる「八卦」だけの形になるのね。で、他の一般の子は、また四本目五本目六本目と割合が決まる」

 ‥おお、初めて聞いた。

 やたら長い説明を始めた。

 よどみなくすらすらと。

 この人は、しゃべり方とかはアレだけど、結構職人タイプなんだろう。(てか、オタクなのかな。梛と同じ人種って感じがする)

 僕は、こういうプログラムはノンタッチだからな。‥もう少し関心持って聞きにいかないといけないな本当に(本日反省二回目)。

「今回は、梛君の艮について説明するわねえ。艮は、二本の陰を三本目の陽が抑えてる形だから、三番目の陽の力が、他の二本の陰と同じ力関係なのが、一番いいバランスなのね。単純に言うと、25:25:50ね。これが、標準パターン。だけど、この25:25が30:20でもバランスは一緒。だから、これも同じ最高ランク」



 因みに、艮っていうのは、

 下の二本の陰を一本の陽が抑えている象で、山が動かず万物を止めているという卦だ。

 正象 山

 色  黄色

 動物 犬、牙のある物

 


 ここで、ちらっと「ついて来てる? 」と梛の顔を覗いて、ついて来てるらしいことを確認すると、小さく頷いた。

 小学生だといって、うちの梛を侮ることなかれ、だ。

「それは、結構いるもの? 」

 梛はぐいぐい質問を続ける。

 気が付けば、プログラムオタクの桂もちゃっかり席を高橋の後ろに移動させている。

 こういうのは、普段聞くことないから興味深いんだろう。

 だけど、人見知りなところがある桂から高橋に話しかけることは、やっぱりなかった。

「まずいないんじゃなあい? 。少なくとも私は、見たことないわあ」

 高橋が首を傾げる。

「同じバランスだったら、同じ「標準パターン」の顔になる? 」

「例えば、さっきの25:25:50のパターンと30:20:50のパターンについては、違うわよお。私が決めただけの決まりなんだけど♡。艮の場合だったら、陰の二本の一本目が髪の色。二本目が全体の雰囲気、三本目の陽が目の色って風に割り振ってて、50を最高値にセットして、それより減ったら特徴が薄くなるって決まりにしているわあ」

 あ、こういう「決まり」を作ったから、こういうプログラムにも詳しいってわけか。

 成程、納得。

「目が高橋さんにとって一番大事ってこと? 」

 梛木が目を細めて聞くと、ふふ、と楽しそうに高橋が笑う。

「そうよ~。私ちょっと目フェチなのかも♡」

 そんな楽しそうな顔に、自然と他の三人も微笑む。

「レアじゃない場合は、どういう感じでキャラクターが決まるの? 」

「メインになる卦があるのは、変わらないの。だけど、レアじゃない場合は、卦が二つなのよ」

 梛が頷く。そんな梛を確認してから高橋は話しを続ける。

「つまり、レアじゃない子のアバターはすべて、混合ってことね。二つの卦の特徴が混ざったアバターが出来る。まず、判定によって、対象者のメインの卦が判定されて、その後、干渉されているもしくは干渉している卦が出る。だから、六十四卦の形としては、メインの卦が下に来る場合と上に来る場合があるの。でも、実際に対象者の画面に表示される卦は、メインの卦と、混合されたアバターだけ。‥結構難しいからね。でも、オタクな子だったら、何との混合か分かるんだから、すごいわよねえ」

「メインの卦がベースになって、もう一つの卦の特徴が加えらえる‥」

 楠が首を傾げて確認する。

「そうそう」

 にこりと笑って高橋が頷く。

「俺は、レアだから、艮の特徴のみ。で、俺のアバターがこれ‥。

 目力が強いのは、結構このランクではマックスに近いってことかな? 艮の色は「黄色」だったよね。

でも、最高ランクじゃないから、見た目はどことなくワンコっぽいってことか‥」

 ちょっと不満そうに梛が言った。

 いいじゃん、耳とかついてなかっただけ。

 もうちょっとランク低かったら、耳付きしっぽ付きだぞ。

 ‥怖くて、自分の「一般アバター」とか作れないね! 坎の動物って豚だぞ。豚っぽいって、嫌だ‥。

 ※楠は、そうはならない。ランクが高いから

「そりゃそうと、あのステータス画面って‥」

 と、梛が言いかけてはた、と止まる。

 ‥つい、なんでも聞いちゃうとこだった。あんまり何でも詳しいから、知ってるかと思ったけど、専門外だろう、

 それが、高橋にも伝わったらしい。

「それは私の専門外よう」

 ‥ですよね~。

 高橋はからからと笑う。‥ホントに明るい性格の様だ。

「あれって、RPGの「魔力」とかそういうステータス表示とは違う感じよねえ。よくは分からないんだけど、多分あれはあくまで「性質」なんでしょうねえ。‥例えば身体能力が高いとか、頭脳が優れているとかは、‥性質ではないわねえ」

 うーん、と考えながら、それでも分かることを何となく話してくれているようだ。

 考えるとき顎をちょっと上げる癖があるらしい。

 ‥あ、喉ぼとけ。

 でも、女の人でも、それっぽいのある人‥いるよね? もう、‥どっちでもいいや。

「だからステータスとかがあんな感じなんだ」

 ※二章の1部で「那須」がステータスを確認した際には、属性 雷の表示だけで、那須が大いに不満に思っていた。

「あら、それは初期設定だからよ。そのうち加わったりするわ。特性を使えるようになったりとか」

「そうなの? 」

 は、梛と桂の会話。(高橋とは話せないが、梛と話す分には変わらない)

「ふふ」

 高橋が微笑む。

 二人が話していたら、本当の姉弟みたいだ。

 ほんわかと、その場が和む。

 孤独の天才児って聞いてたけど、‥ここにいる限りは、彼も大丈夫そうだ。

 高橋は、もう一度優しい微笑みを浮かべて、持ってきた荷物をまとめた。

「ねえ」

 梛が、「じゃあそろそろ」と帰ろうとする高橋の袖をつかんだ。

「え? 」

 こてん、と高橋が首を傾げる。

「艮の最高ランクって、どんなの? 」

 ふわっと笑って、高橋が座り直し、画像を開く。

「ああ、これよお。名前は「大山咋」」

 ‥少男設定忘れたか? という中途半端にオヤジな‥男の姿

 ‥この格好‥。古事記とかの挿絵にある神様の恰好‥。しかも、この名前には憶えがあるぞ‥

「あ‥神様の名前‥? 」

 おず、と声を出したのは、桂だった。

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