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Souls gate  作者: 大野 大樹
一章 救済
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2.お仕事

「行くぞ」

 気合を入れてビルの外に出ると、柊さんはちょっと眩しそうな顔をした。

 室内は明るいけど、外みたいに眩しくはない。僕等の目は色素が薄いから、実はこういう眩しいの、ちょっと苦手。梛がかけてるなんちゃってサングラスは、子供のおもちゃに見えてるけど、実はマジな仕様だ。

 ‥この前、初給料が出たとき買いに行くのについて行かされた。

 お金は、僕が預かって僕が払う感じ。子供が大金持ってるのって、ちょっと感じ悪いもんね。

「やっぱ、それちょっとセンスないわ」

 こういう「外し方」は小学生っぽい。かな? 

 前髪を目が隠れる程伸ばしている柊さんは、目つきが悪いようには見えない代わりに、陰気に見える。(もっとも、勝手に目つきが悪いと思っているだけで、確かめたことはない)

 僕らの後ろを歩く柊さんは、普段は横になっていることが多いから気付かないが、背が高い。それでも、かさが高く思えないのは、やせているせいか。

 ‥でも、僕みたいにガリガリって感じには見えないんだけどなあ。

 まあ、どうでもいいんだけど。

「さっきのデータ見せて♪ 」

 梛は(彼曰く)外向けの笑顔で、僕のスマホに手を伸ばした。

 子供らしく笑顔を浮かべているつもりなんだろうけど、僕に言わせたらまだまだ。笑顔だったら僕の方が年季が入っている。

 もうこれが、素の表情って思えるくらい。ちょっとやそっとで崩れることはない。

 何の自慢にもならないね。

「ん」

 楠が梛にスマホを渡す。僕らって、他の人から見たら年の離れた兄弟とかに見えてるのかな。友達にしたら年が離れ過ぎてるし。(親子だと思われていたら、嫌だな)

 悪目立ちしてないか。最低限気を遣う。

「ま、こんなプログラムより柊の兄ちゃんが判断した方が確実なんだけど♪」

 梛はガラにもない機嫌のいい(らしい)声なんて出して「普通の子供」をアピールしている。

 柊兄ちゃん‥。

 そう! なにより腹が立つのがこれ!

 なんで柊さんが「柊の兄ちゃん」で僕が「楠ぃ」なわけ?!

 桂さんだって「桂ちゃん」で呼び捨てじゃないし、柳さんだって「柳兄ちゃん」だのに?!

「どうしたのさ。なんか不機嫌になるような出来事あった? 」

 梛の冷ややか~な視線をこっそり向けられ、撃沈。

 小学生に沈められるって、どうだ。我ながらナサケナイ‥。これか、この小物感か?

 思わず、がっくりと膝がから崩れる。

「あの子、‥外れってか人間じゃない」

 膝から崩れながら、梛の耳元にこそっと呟く。

「臣霊って奴? 」

 梛も小声でこそっと返す。

 僕は無言で首を振る。

「後は帰ってから、だ。梛! あのデカい看板と写真、兄ちゃんが撮ってあげる♪ ああいうの好きだろ? あ、ちょっとずれないと(あの子が)入らない」

 スマホを構える。

「も~また~? 兄ちゃん写真ばっかり~」

 なんて言いながら、ポーズを取る梛。

 僕の意志を読み取って乗ってやってる、って? 「ホント僕の事好きだよね~」って? 惜しい! 外れ。その反応は、付き合い初めのバカカップル!

「気色悪いこと言うな! お前が東京見物したいって言ったんだろ! 」

 僕の設定は「東京見物をしに、弟が地方から遊びに来ています」だ! 

 え? 設定がおかしい?

 柊さんは、冷めた目(前髪で隠れて見えないけど多分)で僕らを見ている。ほんっとに、非協力的だよね! 因みに、長男柊さん、次男僕、三男の梛って感じかな? 

 僕らは、皆ここの出身じゃないし、それにこんなに人がいるんだもの。僕らの事知っている人なんていないだろう。まあ、僕らのこと気にしている人もいない、だろうしね。

「撮れた? 」

「オッケー♪ 」

 僕らの声に、あの子が振り向いて、ちょっと笑う。

 その目は

 宝石みたいなシトリントパーズの色だった。

「もう一枚、いっとこかな」

「兄ちゃん! ポーズ取ってないんだから、急に撮らないでよ! 」

 で、そろそろ撤収しますか。

「尊~。もう、一人で行かないでよ」

「ごめんごめん」

 お、いいね。調べなくても、名前が分かった。尊ちゃんっていうのか。

 ‥っていうか、ん? 

 僕は、黙ってもう一枚写メを映した。

「また! 」

 梛がわざとらしく怒る。そういうの、もう、どうでもいい。

 ピピン♪

「レア」

 柊さんの聞き取りにくい、超低音ボイス。低音って言うか、闇に沈むような不吉な声。耳障りって感じではないんだけど、縁起悪いもの聞いちゃったような気分になる。

 柊さんは、あの一瞬であの「お友達」にスマホを向けて、アプリ「souls catch」を起動していたのだ。柊さんの挙動不審な行動に、だけど僕は驚かなかった。だって、僕も感じた。

 この子は、なんか、あれだ。

 違和感が半端ない。この子は、あれだ。

「レア‥」

 souls catchが、正しく判断したことは、僕だけではなく柊さんが認めたことから保証された。ラッキーなことに、さっき写した写メに顔もバッチリ映っている。

「しかし‥」

 コストトが送信してきたレアが、この「尊ちゃん」で、今のこのレアが「尊ちゃん」の友達?! なにそれ。

 しかし、この光景。末っ子を(というか、被写体は実は後ろの女の子たちなんだけど)写メしまくっているバカ兄貴たちという、どう考えてもやばい感じで‥。

「カ‥カオスだ‥」

 梛は、俯いて苦笑いをした。


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