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Souls gate  作者: 大野 大樹
二章 『souls catch』と『Souls gate』
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4.仮想空間

「やっと出来る! ゲームにログインしてさっき貰ったIDナンバーを入力して‥。ええと‥」

 ネットによると、沢山のアバターがログインしてて、交流できたりするんだ。MY八卦表を持ってるアバターは、服装とか変えられて、見たらそれとわかるらしい。

 ‥と、思ったんだけど‥?

 自分のアバター「那須」がぽつりと立っているだけだ。

 景色も、荒れ地って感じ。

 そして、ふと那須の全身を見たのが初めてだということに気付いた。

 麻地と思われる生地の、短い丈のシンプルな着物。着物と言っても、袂があるわけではない。作務衣とか甚平に近いのかな。袖が筒になっている。ただ、作務衣や甚平と違って別にズボンはついていない。着物一枚だ。だのに、その丈がやたら短い。膝上ってどういうことだ。そこから日に焼けた綺麗に筋肉のついた足がすらりと伸びている。子供か。江戸時代の子供か。しかも、何かしら製作者の個人的な趣味を感じずにいられない。袖も肘位しかないし。

 しかし‥

 鳶色の髪、鶯色の瞳。着物の色は、‥ちょうど番茶を薄く入れた様な‥草木染したような色。

 つまり、お世辞にも「華やか」とは言い難い容姿。

 ‥ちょっと、貧乏くさい? 言い方悪いけど。

 だけど、悪くない。ジャニーズjrとかにいてもおかしくない感じ。可愛い系のイケメン。

「誰も来てないなあ。ん? ステータスの『持ち物』に、『MY八卦表』がある」

 気をよくしながら、自分の装備を確認する。

 ‥いつの間に? 

「あれ、説明が書いてある。『レアの方は、一般のユーザーと違い、同じレベルの仲間が見つけにくいので、こちらで用意させていただきました。なお、このメンバーは、TAKAMAGAHARAの創ったアバターで、実際のユーザーとは違います』ああ、なるほど」

「レベルがあんまりにも違うアバターと組んでも仕方ないもんな。弱いやつだったら、敵も僕だけで倒せちゃうかも、だし」

 『次に』を選択する。

『アクセスしている、同じくレアな方が通信を希望することもあります。通信を許可しますか? 』

「ふむ。『します』それはいいでしょう。どうせだったら、他のユーザーともチャットしたい」

 奈水流は、『します』を選択しながら、独り言を言った。

 なんだかおもしろくなってきた。自然に顔がにやついてくる。

「なんせレアだもんね。『震』のレベルカンスト目前だもんね。くふふ。『真の仲間を探したいあなたは、『メンバー募集・登録』画面で、まず登録をしてから、メンバーの募集を掛けて下さい』ふうん‥なんか、ちょっと考えるなあ、まず登録しないでやってみようかな『知り合った他のアバターをTAKAMAGAHARAの創ったメンバーと交換することができます。募集は、その機会を増やすのに有効です』ふむふむ。それはそうだな。でも、まあ、ちょっと様子を見て行こう」

 こうして僕は、『Souls gate』の世界に一歩足を踏み入れてしまったのだった。

「では、記念すべき最初の一歩! 」

 僕は、アバター「那須」を動かしてみた。

「あーあー」

 キーボードに文字を打ち込めば、那須が話す。それは、一般的なゲームと同じだ。

 思ったより、声が高い。少年って感じだ。

「初めまして」

 意味のある言葉を発してみる。

 でも‥

 ‥すっごい、無表情。

 何だろこれ。すごい違和感ある~。

「性格設定しなくちゃダメなんですよ。というか、したいでしょ? 性格設定。「こんにちは」でにっこり笑う紋切り型のアバターとか、嫌じゃないですか? 」

 突然後ろから、笑いを含んだ声を掛けられ、僕はここに自分以外がいることを知った。

 ん? でも今まで誰もいなかったから、たった今ログインしてきたアバターか。聞かれてたとか、恥ずかしい‥。

 これって、自分だけが見れる設定とかじゃなかったのか。‥違うわな。

「性格設定? 」

 でも、先輩ってことだよね。分からないことを教えてくれる人は貴重だ。仲良くしたい。

「ええ。設定画面でできますよ。新入りさんですね? 初めて見る顔だ」

 可愛らしい柔らかい声、だのにその話し方は一言でいえば女の子らしくなかった。

「はい、那須って言います」

 自分としては愛想よく笑ったつもりだが、那須の方は相変わらずの無表情だ。

 すっごい態度悪い。

 やっぱり、早く性格設定しよう。これじゃ、メールしてるみたいだ。いや、メールでも顔文字とかあるぞ。メールよりひどい。

「ナス? ‥野菜の? 」

 こてり、と首を傾げる先輩アバター。

「‥‥」

 やばい。めっちゃ可愛い。

 よく見たら、めっちゃ可愛い。

 髪、さっらさらの目きっらきら。

 黒髪のおかっぱ。背がちっさくて、金色の大きな目。飛鳥時代とかの服着てる。いや、飛鳥時代かどうかはわからないけど、古墳の壁画に書いてあるような服。デザインを変えたんだろう、丈も長くないし、生地も若干厚手(多分)壁画とかのだったらもうちょっと生地に動きがある気がするけど、そんな感じじゃない。木綿って感じ。

 多分、動きやすいようにデザインされているんだろう。女の子だけど、ズボンだし。(確か、この手の服は女の子はスカート(というのかどうかはわからん)だったはず)。

 何にしても。めちゃ可愛い。

 ‥しまった、ガン見しちゃった。睨んでるように見えてないだろうか。

「ごめん。悪かったよ。冗談だよ。ここにいるってことは、自分でつけた名前でもないもんねえ。選べない名前をいじられてもって感じだよね」

 やっぱり睨んでいると思われたらしい。先輩に謝られた。

 うう、ごめんなさい。誤解です。嫌いにならないで下さい‥。

 ‥でも、「見とれてました」とか正直に言ったら「真面目に聞け」って怒られそう。

 ‥ってか、何の話してたっけ。

「え。‥いや。そんな、いいですよ‥」

 取り敢えず、笑ってごまかそうと思ったのに、この無表情。やめた。余計なこと言わないでおこう。

「‥そういやあ、自己紹介まだだったね。後で何人か来たら紹介するよ。組むとかは、別の話な」

 先輩は、そういうとにやり、と笑った。

 組む。いいなあ、チームプレー‥。

 しかし‥。

 先輩のこの、性格設定‥成功してるのかな?? キャラと顔とは全然合ってませんけど‥。そもそも、どういう性格の設定なんだろう?? ツンデレ‥でも、無いよね?

 そんなことを考えながらも、返事は迅速に。にこやかに!

「はい、お願いします」

 ‥もう! 「お願い」してるように見えないって! この無表情~!

 ふふ、と笑うと先輩は、真っ直ぐと無表情・那須を見上げた。

「僕は『アズマ』です。卦は『』。陰の卦だから外見が女みたいでちょっと嫌だけど、男です。惚れないでね」

 那須は、慌ててちょっと大きめなリアクションでぺこり、と会釈した。

 アズマさんっていうんだあ! 可愛い! どんな漢字書くんだろう!?

 ってか、男の子なんだぁ! 

 しかも、公表しちゃうの!? 仮の性別楽しもうとかないの? それとも、男の人ってそういうの嫌なのかな‥。そういうものかもしれない‥。男に惚れられて面白いもんでもないものね。女の子が男装して女の子に騒がれて楽しい、はあんまり実害がなさそうでいいけど、男の子の場合は、生理的にも嫌なのかも。

 まして今、僕は男の格好してるわけだしね。男だと思われてるよね。

 奈水流は、パソコンの前で大騒ぎだ。初めてのことばかりで、もう何もかも興奮してしまう。いつもより、確実にテンションが上がっている。

 ‥やばい、やばい。早く返事しなきゃ。

「はい‥。よろしくお願いします。俺は『那須』です。那智の那と須磨の須で、那須」

 那須が、ロボットよろしく無表情で挨拶する。ええい、ホント何とかしてくれ、これ。

「須磨? 何? 」

 こてり、とアズマ先輩が首を傾げる。

 うう、やっぱり可愛い。男だって聞いたのに可愛い。

「地名です。関西の。那智は、那智の滝って有名ですよね」

「ふうん? 」

 またアズマ先輩、こてり。

 ダメだ、精神がやられる。

「結局どんな字かわかんないけど、‥君漢字があるんだね」

「え? 」

 今度は、無表情・那須がこてり。

 あ。こてり、は全キャラクターに標準仕草なのかな? 『何? 』とか『え? 』とか疑問詞を打ち込むと自動的に『こうする』、みたいなプログラムなのかもしれない。

 面白い~! そして、無表情・那須の「こてり」。似合わない~!

「僕は、無い」

 と、アズマ先輩。

「カタカナか、ひらがなで名前が書いてあったってことですか? 」

 疑問文に連動して、無表情・那須、またこてり。

「うん。カタカナ。那須君、ちょっとステータス見せてもらっていい? 」

 アズマ先輩もこてり。こっちは相変わらず悩殺されるくらい可愛い。

 しっかりしろ、男だぞ。

「いいですよ」

 おお、無表情・那須が頷いた。ここら辺も標準仕様っぽい。

「卦は『シン』。属性は雷‥。あ、僕よりちょっとランクが高いんだ」

 へええ。ランクなんて出てたっけか?

「そういうこと、なのかな? 」

 全くの初心者の僕にそんなことわかろうはずもなく‥。無表情・那須はまた、こてりと首を傾げるのだった。

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