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シスターとヴァンパイア  作者: 微睡 虚
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第六章 暴かれる正体

 翌朝、コーデリアは一度教会に戻ってから、ノエルと再び合流した。

「今朝は大変でした。神父様に怒られました。泊まるなら事前に連絡をしておきなさいって」

「まぁそうでしょうね。でも泊まった甲斐はあったでしょう?」

「……は、はい」

 気恥ずかしくなったコーデリアは話題をそらした。

「そういえば、昨日はおじさんが逃げだしたのに話題になりませんね」

「それはそうでしょう。貴族が捉えていた罪人が逃げ出したとなると、貴族の面子か潰れるからね。あなたが教会に言っている間に、貴族達が逃げ出そうとしたクラークを処刑したと発表したわ。」

「そうなのですか……」

 喜んでいいのやら、悲しむべきなのかわからなかった。とりあえずクラークに追手が行くことはなさそうだった。

 今日は日差しが強い。ノエルが珍しく日傘をさして外出してくれている。よほど気分が良いらしい。手を繋いで歩いていく。二人が町に入ると、クラークの話に変わって新しい話題が囁かれていた。

「また殺人事件ですって」

「怖いですねぇ」

「今度は街角らしい―――殺されたのは、未亡人のようだ」

「前は娼婦でしたな。そのさらに前はストリートチルドレン」

「最初はホームレスでしたね」

 街の人々は、最近起こる殺人事件について話していた。今朝に新たな犠牲者が発見されたという。耳に入ってきた話しを聞いてコーデリアが嫌な顔をした。

「嫌な話題ばかりですね。それにしても、不幸な話なのに皆さん少し笑っています」

「それはそうでしょう。こんな時代だから不幸な出来事こそが話題の種になるのよ。共通の敵を持つことで連帯感も生まれるしね」

「そうなのですか? 嫌な話ですね。でも殺人事件は放っては置けません。また犠牲者が出てしまいます」

「はぁ、相変わらずね。貴女は優しすぎるわ。あんまり余計なことに首を突っ込むと変な恨みを買うわよ?」

「でも、犯人を捕まえないと安心できませんよ。私達もターゲットにされるかもしれません」

 二人が話していると、男が声をかけてきた。

「やぁ、お嬢さん方」

「アルフさん」

「この辺は危ないみたいだよ。前もこの近くであったからね」

 そう言うと、アルフは去っていった。

「今の誰?」

「ああ、この近くで学校を開いている先生ですよ。この辺りは生徒さんの家でもあるので心配してるみたいです。」

「そうなの……」

 遺体の前でコーデリアが「アーメン」と祈りを捧げると、二人はノエルの家に引き返した。彼女達はしばらく本を読んだり裁縫をしていたが、夕方あたりから街の方が騒がしくなっていた。

「おい! また町で殺人事件だってよ! 今度は旅人だ!」

「路銀がつきていたって! かわいそうに……」

 村ではそんな声が上がっていた。コーデリアが正義感に燃える。

「許せません! 非道な殺人犯を早く見つけないと、また犠牲者が出ます!」

「コーデリア……あなたね……」

 呆れるノエルの手をコーデリアが掴んだ。

「ノエルも行きましょう! 何か証拠が残っているかもしれません!」

「あ! ちょっと!」

 コーデリアはノエルを引っ張って町を目指した。


 着いた街では、人だかりが出来ていた。被害者を町人達が見ているようだ。被害者の男は長旅をしてきたのが分かるような服装だった。しかし、路銀が一銭もなかった。

「怖いですねぇ……」

「早く事件が解決できればいいのですが……」

「犯人はいったい誰なのでしょうか……」

 怯える町人に一人の男が言った。

「皆さん! 落ち着いてください! 私の児童を教えている身!不安なのはわかりますが、私は身を呈しても子供達を守る所存です! どうか皆さんも恐怖に負けないで!」

 発言した男はアルフだった。

「すごいですね、アルフさん。皆を元気づけています」

「あんな無責任なこと言って大丈夫なのかしら?彼、真っ先に死ぬタイプよ」

 コーデリアは人の間を抜けて遺体を見つめる。

「せめてあの世で幸せになるように……アーメン……」

 コーデリアはシスターらしく祈りを捧げた。

「かわいそうに……喉元をざっくりやられているわ。一目で手遅れだと分かる……手慣れた犯行ね」

「冷静ですね……人が死んでいるのに……」

「人間の死は今まで何度も見てきたわ」

 現場には犯人を指し示す物はなかった。二人はやる事がなく、帰ることにした。

「また明日ね、コーデリア」

「ええ」

 別れて教会に帰るコーデリア。床に着くと、今日の出来事を振り返った。

「殺人事件、怖いです。早く犯人が見つかればいいのですが。それにしても、ノエルと折角仲良くなれたのに、まだ分からない事があります。時々冷たいような……」

 その夜、雲から丸みを帯びた半月が覗いていた。


 翌朝、事件はおかしな方向に進んでいた。

「犯人はヴァンパイアなのですよ!」

「見えない犯人、増え続ける犠牲者、これは人間の犯行ではないですよ!」

「そうですねぇ。凶器も見つかっていませんし……」

 町人、村民達は実しやかに囁いていた。連続殺人事件の犯人はヴァンパイアとされていたのだ。様々な状況が人々の恐怖心を煽り、犯人像を怪物にしてしまったのだ。シスターとしての仕事を終えたコーデリアは、ノエルの家に言って村で聞いた情報を告げた。

「ええ、私の耳にも入っているわ」

 ノエルは機嫌が悪そうだった。

「やっぱり、ヴァンパイアが犯人なんて嘘ですよね?」

「ええ。これは列記とした人間の犯罪よ」

 それから、なぜかノエルが犯人探しに意欲を見せ始めた。そして今度はノエルが先導して町に出かけた。無論この殺人事件の解決のためである。

 町に着くと、二人は聞き込み調査を行った。よく散歩をしていると言うおじさんに話を伺った。連続殺人事件の発端の事件、ホームレス殺人事件の第一発見者である。

「発見した時の状況? そうだねぇ、俺は毎日散歩してる。あの日も散歩してたら、ホームレスが倒れていたんだ。ホームレスは珍しくなかったが、様子がおかしいんでよく見たら、刃物で滅多刺しにされていたような傷跡が残されていて死んでいたんだ」

「何と残酷な……それで……その、凶器は見つからなかったのですか?」

「ああ、傷跡から刃物だと思ったが、凶器はなかったな。他に証拠品もなかったよ」

「他に気になった点はなかった?」

「とくにはないな……」

 聞きたい事は大体聞いたので例を言っておじさんと別れた。その時、ノエルは立ちくらみした。

「ノエル、大丈夫ですか?」

「ええ。ちょっと血が足りなくなったみたい……」

「貧血ですか?」

「大丈夫よ。少しふらついただけ。次に行きましょう」


 二人は次に第二の被害者のストリートチルドレンを発見した夫婦の店に聞き込みに言った。発見者はパン屋をしている夫婦である。

「ああ、あの事件ねぇ。悲しかったわ。こんな時代だけど子供が飢えるのは見てられなくて、あの子に余ったパンや時間が立って売り物にならないパンを分けてあげてたの。いつも朝早くに来るから渡してたんだけど、あの日はあの子が来なくてね。おかしいと思ったんだ」

 奥さんはその時の状況を話してくれた。夫が妻の話の続きを紡ぐ。

「それで、まだ店はオープン前だったし、妻と一緒にあの子のねぐらの方に見に行ったんだ。そしたら頭から血を流して倒れていて脈を測ってみて死んでる事が分かったんだ」

 悲しそうな顔で発見した時の状況を語る夫婦。奥さんの方は泣き出してしまった。その子に相当感情移入していたらしい。

「それは痛ましい出来事です。心中お察しします」

 夫婦を気遣うコーデリア。ノエルはお構いなしに彼らに質問する。

「凶器は見つかったの?」

「いや、鈍器で殴られたようだったが、凶器は見つからなかったよ……」

「そう、教えてくれてありがとう」

 二人は、二件目の事件の聞き込みを終える。凶器は見つかっていないが、情報は順調に集まってきている。次は3件目の娼婦殺人事件である。この事件は娼婦が夜道を歩いている最中に何者かに背中を三か所刺されて死亡したというものだ。早朝で目撃者は多数いたが、犯人も凶器も見つからなかったという。被害者の娼婦と仲が良かったと言う男性に話を聞く事が出来た。

「彼女はいろんな男達から好かれていたよ。格言う俺もその一人さ」

 男にノエルが辛辣な質問を浴びせる。

「娼婦なんだからトラブルの一つや二つあったんじゃない?」

 だが男は首を横に振った。

「いやいや、彼女は娼婦だから金を払えば誰とでも寝たが、人当たりも良くてトラブルはなかったよ。疑うんなら他の奴にも聞いてみるといいよ。それにしても残念だ」

 男性に話を聞いた後、他の人物にも聞き込みをして回ったが、娼婦はトラブルを抱えていなかった。娼婦になったのも貧しさから仕方なくだった。

「凶器もない。恨みもない。被害者に共通点もない。犯人の手掛かりもない。……八方塞ですね……」

「そうでもないわ。今まで聞いた一連の事件には共通点があるわ」

「共通点?」

「一つは、凶器が見つかっていない事、二つ目は被害者が社会的に身分が低いものである事、三つ目に被害者が発見されたのは早朝ということよ」

「結局、犯人への手掛かりがないですよ」

「でも犯人像は掴めてきたわ。もう少し聞いてまわりましょう」


 コーデリアとノエルは事件の手掛かりを探るために第四、第五の事件の調査に出掛けた。第四の殺人事件は昨日に起こった事件である。夫に先立たれた未亡人が殺されたのだ。未亡人と仲の良かった貴婦人と話し合う事が出来た。

「あの子残念だったわ。夫が死んでも健気に生きていたのに、一体誰がこんなひどい事をしたんでしょう。そうは思いません?お嬢さん方?」

 わざとらしくハンカチを手にし顔を覆う貴婦人。コーデリア達はとりあえず合図ちを打っておいた。

「それでご婦人? あなたが第一発見者なのよね? 事件前後で変わったことはなかったかしら?」

 ノエルが尋ねると、貴婦人は手をひらひらとさせて「そうそう」と話しを始めた。

「あの日も私はあの子に忠告したのよぉ。この辺りではヴァンパイアが出るから夜出歩くなって。でもあの子は月明かりが綺麗だって言って外に出て行ってしまってねぇ。旦那さんとの思い出があるみたいで……私は止めたのよぉ? でも行ってしまって……朝の挨拶に行ったら血まみれで殺されていたのよぉ」

「ヴァンパイア?」

 貴婦人の話に気になる点があった事をノエルは見逃さなかった。貴婦人は長話が好きなのか質問に律義に答えた。

「ええ、村の方にもヴァンパイアに家畜が襲われるって言う話があったでしょう? その時期からこの町でもヴァンパイアが出るって言われ出してねぇ。この町は夜に霧が出るし人気もないから如何にもって感じじゃない?だからあの子もヴァンパイアに襲われたんじゃないかしらぁ?」

 貴婦人がしたり顔で自分の推理を語る。気の長いコーデリアも流石に話しを遮った。

「ありがとうございます。十分なお話が聞けました」

 ノエルも礼を言うと、すぐさま貴婦人から離れた。貴婦人はまだ話し足りないようだったが、二人の少女が走っていったのを見て諦めたようだった。

「あの人、少しおかしいです。親しい人が亡くなったのに……」

「あんまり親しくなかったんじゃない? そんなことより、気になる情報を聞けたわ」

「気になる情報?」

「ええ。なんで朝に被害者が見つかるのか、犯人の目撃情報がないのかわかった」

「ヴァンパイア騒動ですか?」

「察しがいいわね、コーデリア。犯人はヴァンパイア騒動によって夜の人通りを制限して、犠牲者を選び、かつ、目撃者が現れないようにしたのよ。そうして夜道を歩く人を殺していった。翌朝には死体が発見されると言うことよ」

「じゃあ、ヴァンパイア騒動を起こしたあの青年が犯人なんですか?」

 ノエルは首を横に振った。

「彼は犯人じゃないわ。彼は食料が欲しかっただけだし、人殺しまではやらないでしょう。この事件の犯人が意図的にヴァンパイア騒動を利用しただけよ」

「そうなのですか? そうなってくると犯人は益々分かりません。ホームレスやストリートチルドレン、娼婦は夜にも出歩きますけど、今回はただの未亡人ですよ? 今までとの関連性が薄くなります。消えた凶器の謎も解けていません」

「そうなのよねぇ……じゃあ最後の殺人事件の第一発見者に話を聞きましょうか」

 コーデリアとノエルは議論した後、最後の手掛かりを持っているであろう最後の殺人事件の第一発見者に話を伺う事にした。

「やぁ、お嬢さん方、昨日以来だね」

「あ、はい。こんにちはアルフさん」

「ああ、例の教師ね……」

 最後の事件の第一発見者は教師アルフだった。彼に詳しい話を聞くことにした。

「事件の話かい?解決できるなら協力を惜しまないよ。と言っても話せる事は少ないが」

「教えて頂戴」

「ああ。最近物騒な殺人事件ばかりだから生徒を親御さんに送ったり、見回りをしていたんだ。そしたら大男が倒れていてね。息を確かめたが、手遅れだったんだ……」

 アルフの証言は簡潔だが明確だった。コーデリアは納得したようだったが、ノエルは違った。

「コーデリア、この事件だけ他と違う点があることに気付いた?」

「え? えーと……」

「今までの事件はいつに起こってる?」

「全部夜ですが……あ!」

 コーデリアも気付いたようだ。

「そう、この事件だけ、夕方に起こっている。おかしいとは思わない?」

 ノエルの質問に答えたのはコーデリアではなく、アルフだった。

「たまたま、犯人が選んだ時間が夕方だっただけでは? 今までの事件も無差別殺人でしたし……」

「いいえ。無差別ではないわ。被害者は皆社会的身分が低い者達。未亡人は微妙な所だけどね。最後の事件を見直すとその謎も解けたわ」

「それでは貴女の意見を聞かせてもらおうかな? お嬢さん?」

「ええ。犯人は独善的な人間よ。自分が正しく、世間が汚いとする人間を見下している。だからホームレスやストリートチルドレン、娼婦が襲われたのよ」

「でもノエル、それなら未亡人と旅人はどうなのですか?」

 コーデリアが言わんとしている事は未亡人と旅人は社会的に身分が低いとは言い切れない事である。その件を説明できなければこの事件は解明できないだろう。

「それも説明するわ。犯人が社会的身分が低い人を襲っていたのは話した通りよ。でもそこで問題が生じたの」

「問題? お嬢さんは何が言いたいのかな?」

「その問題はターゲットがいなくなった事よ。ターゲットは夜中に一人でいる卑しい身分の人間だった。ところが事件が続いて行く内にその条件を満たす人間が逃亡、又は徒党を組むようになった。だから犯人は未亡人を狙ったのよ」

「確かに、筋は通っていますが、なぜ未亡人を殺したのですか?」

 未亡人を殺すにはリスクが高すぎる。卑しい身分の者を殺せなくなったのなら、それで止めればいいと言う話だった。

「犯人はね。人殺しを止めれなかったのよ。殺し過ぎた人間のなかには、その行為が癖になる人間と、その行為を正当化するために新たな殺人を繰り返す人間が現れる。犯人がどちらのタイプかは知らないけれど、殺しが止めれなくなったのは確かよ。」

「殺しを止められなくなった?じゃあ未亡人は犯人の殺人欲を満たすために殺されたのですか?」

「そうよ。犯人はたまたま目に入った未亡人を殺害。……しかし問題が起こった」

「問題?」

「殺害の光景を目撃されてしまったのよ……」

「犯人は目撃されてしまっていた?」

「ええ。その時は見られた事に気付いていなかったようだけどね。でも翌日の夕方に犯人と目撃者の間でトラブルが起こった。それが最後の殺人事件よ」

 ノエルの語る推理は人を惹きつけた。いつの間にか町を歩く人達も足を止めて耳を傾けている。その中には今まで話を聞いた人物達もいた。

「じゃあ、旅人の方は目撃者? でもなんで目撃した時に犯人を咎めなかったのですか?」

 コーデリアが疑問を口にする。アルフも頷いた。

「お友達の言うとおりだね。お嬢さん、犯人を野放しにした目撃者の意図が分からない。殺害が夕方に行われた訳もね」

「目撃者がその場で犯人に接触しなかった明確な理由は、犯人の素性を知りたかったのだと思うわ。それが彼が殺された理由に繋がる……」

「彼が殺された理由? 一体君は何を言ってるんだ?」

「あの旅人は路銀がなかった。長旅で尽きたのでしょうね。それで手っ取り早く金を手に入れる理由が強請よ」

「強請? あの旅人が犯人をゆすったと言うのか!?」

「ええ。旅人は何とか深夜にこの町に着いたけどお金がなかった。そんな時に犯人が未亡人を殺害する所を見てしまった。彼は犯人の素性を一日かけて調べて、夕方には犯人の生活を調べきった。それで犯人に接触したの……」

「夕方!? じゃあその時に!」

「ええ。犯人は口封じと集りへの抵抗として旅人を殺した……」

 観衆から「おー」と感嘆の声が上がる。それだけノエルの推理には説得力があった。しかし納得していない人物もいた。

「お嬢さんの推理は素晴らしいが、一連の殺人事件の犯人と凶器について何も明らかになっていないじゃないか」

「確かにアルフさんの言うとおりです。肝心の凶器と犯人が分かっていません」

「この事件の犯人は分かっているわ」

「!」

 コーデリアもアルフも観衆達も驚いている。それはそうだろう。ノエルはこの一連の未解決事件の犯人が分かったと言うのだ。聴衆達が騒ぎ出した。

「一体誰が犯人なんだ!」

「早く教えてくれ!」

 騒ぐ聴衆達を手で制してノエルが話し出した。

「私は最初、この事件の犯人がわからなかった。でも聞き込み調査をしていると様々な情報がつかめた。そしてその中にはおかしなことを言っている人物もいた。私が犯人を突き止めたのも聞き込み調査による者よ。そして犯人が分かれば、凶器も分かった。」

「何だと! キミはたったそれだけの情報で犯人が分かったと言うのかい!?」

「それで犯人は誰なのですか? ノエル!」

「焦らないで、犯人はね……」

 聴衆達も「ゴクリ」と唾を飲み込んでノエルの次の言葉を待った。

「アルフ! あなたよ!」

「!」


 ノエルの口から出たのは教師アルフの名だった。聴衆もコーデリアも名指しされたアルフ本人も驚いている。

「そんな! 僕は殺人なんてしていない! 何の根拠があるっていうんだ!」

 当然殺人の容疑を否定するアルフ。しかし、ノエルは容赦なく糾弾する。

「あなたの教師という仕事柄、教育のために様々な道具を持っているはず……生徒には鍛冶屋の息子も多かった。子供たちの教育に使っている道具を使えば刺殺も撲殺も容易なはずよ。その後、道具を元の場所に戻せばいい」

「言いがかりだ! 僕は子供達を教育する立場の人間だぞ! そんな立場を揺るがしてまで卑しい身分の奴らを殺したりしない!」

 声を荒げて否定するアルフ。ノエルはその言葉を指摘した。

「卑しい身分の奴らねぇ。本音が出たわね。言ったはずよ。犯人は独善的な人間で卑しい身分の人間を選んで殺していたと……」

「でもノエル! 彼は教育者ですよ!?」

「コーデリア、相変わらず人を疑う事を知らないのね。時に聖職者が間違いを犯すこともあるわ。こんな時代に学校に通う人間なんて身分が高い者ばかり、ストレスも溜まると思うわ。その解消法として彼が選んだのが人殺しなのよ……」

 悲しい顔をしてノエルが告げた。聴衆達は口々に驚きの声をあげている。コーデリアもアルフを庇う言葉を探しているようだったが、しばらくして皆の視線がアルフに集まった。

「人を馬鹿にするのも大概にしろ! 俺が人殺しだと!? 証拠はあるんだろうな!」

 声を荒げるアルフに冷たい視線を送りながらノエルが答えた。

「貴方を疑った理由は二つある。それこそが貴方が犯人である証拠よ」

「二つの理由だと!? 説明してみせろよ!」

「ええ、ご要望にお応えしましょう」

 ノエルは指を立てながら丁寧に説明し始めた。

「一つ目の理由は貴方が殺人現場に居合わせ過ぎていた事よ。私が初めに聞いたのは最後の旅人殺しの時に演説してた時とコーデリアが会ったと言った件だけだったけど、後で聞いたら事件現場では必ず貴方が見られていた。そうよね、皆さん?」

「ああ。確かにアルフさんを見たよ」

「そうねぇ」

「物騒な事件だと立ち話をしたのを覚えているよ」

「ええ。いましたわ」

 口々に証言するのは一連の事件の被害者を最初に発見した人達だった。

「こんな町で事件が起これば興味を持つのは当然だろう! 他の皆だって大体事件後に現場にいたじゃないか! まして俺は教師だぞ! 子供達の安全のために情報を集めるのは当然だ! なぜ俺を疑うんだ!」

 もっともらしい事を言うアルフだったが、ノエルは首を振った。

「殺人犯は大抵事件現場に戻ってくるのよ。証拠が残されていないか、目撃者がいないかを確かめるためにね……でも貴方の言うとおりこれだけでは証拠にならない。そこで二つ目の証拠を指摘してあげるわ」

「二つ目の証拠だと!?」

 アルフは動揺を隠せない。

「二つ目の証拠は貴方が自ら提供してくれたわ」

「アルフさん本人がですか?」

ノエルの言いたい事が分からず首を傾げるコーデリア。他の聴衆達も同じようだ。

「貴方は言ったわよね?『倒れている被害者の息を確かめたら手遅れだった』と――」

「たしかにアルフさんはおっしゃっていましたが……」

「それがどうしたというんだ!」

「忘れたの? 最後の殺人事件で殺された旅人は、喉元を切り裂かれて即死に近かった。一目で手遅れだと分かる状態だった……」

「――!」

「―――それなのに、何で息を確かめたのかしら?」

「ぐ!」

 うろたえるアルフにノエルが指をさして言った。

「貴方はいかにも関係のない第三者を装う事で疑われないようにした。でもそれが返って不自然な証言になってしまったのよ。生徒達を送って夜の見回りをしていたのも、善良な市民を装うため、新たなターゲットを探すためでしょう?」

 ノエルに指摘されたアルフは沈黙した。

「アルフさん、本当に……」

「そんな、彼が犯人なのか?」

 皆が動揺する中、アルフが走り出した。彼が向かったのは自身が学校を開いている建物だった。

「アハハハハハ! 屑どもを殺して何が悪いんだって言うんだ! 皆消えてしまえ!」

 アルフは完全に錯乱していた。そしてランプの灯を建物にぶつけて放火したのだ。油を使っていたのか日は瞬く間に燃え広がり、アルフの絶叫だけが辺りに響いていた。最後に見えたアルフの顔は優しい教師の顔ではなく、醜く歪んだ快楽殺人者の顔だった。


 校舎の火は建物を壊すことで消火された。完全に火が消えた頃には夜だった。焼け跡からはアルフの死体が見つかった。子供達は下校していて無事だった。皆はアルフの変貌に驚いていたが、連続殺人事件の班にも死んで安堵しているようだった。

「嫌な事件だったな。しかし、殺人事件の幕は下りたが、襲撃事件の犯人も彼だったのだろうか……」

「あの、襲撃事件って何ですか?」

 コーデリアは初老の男性の独り言に興味を持った。

「ああ。キミも危ないから話しておいた方がいいだろう。実は殺人事件の他に若い女性が襲われる事件が最近あってね。まぁ外傷はないし被害者たちは無事だが、皆後ろから襲われて意識をなくすらしい。そして起きると貧血をおこすんだ……」

「そんな事件があったんですか。もしかすると、ヴァンパイア騒動の根幹かもしれませんね。ノエルなら解決できますよね?」

 そう言って振り返るコーデリア。しかし、彼女の近くには見慣れた銀髪の少女は見当たらなかった。

「あれノエル? さっきまで一緒にいたのに……一体どこに行ったのでしょうか?」

 コーデリアはノエルを探して町を彷徨い出した。もう夜になっていて町を闇が包んでいたが、月明かりが道を照らしていた。


 連続殺人事件の全貌が判明し、犯人の放った火も消し止められ町は静寂に包まれていた。コーデリアはノエルを探している間に人気のない所まで来てしまった。

「ノエルはいったいどこでしょう?」

 その時、女性の叫び声が聞こえた。急いで駆け付けると、見慣れた銀髪の少女の背中が見えた。

「ノエ……ル……?」

 コーデリアの声に反応して振り向いたノエルの口は血で赤く染まっていた。コーデリアは目の前の光景が信じられず後ずさりする。

「――!! コーデリア? 待って……」

 ノエルがコーデリアに近づきその手を握るが、その手は振り払われてしまう。

「ノエル……私を騙していたんですね。ヴァンパイアがいないと言っていたのも嘘!貴女がヴァンパイア騒動を鎮静化しようとしたのはこの行為を隠すため……」

「待って! コーデリア! 誤解してるわ! 話を聞いて!」

 ノエルが再びコーデリアの手を掴むが、強引に振り解かれた。

「町の人が言ってました……。夜に女性が襲われることが多いと。襲われた女性は貧血になる事が多いと。貴女だったのですね……。私も貴方と出会ってから貧血になる事が多かった。私に近付いたのも血を啜るためだったのですね……。ノエル貴女はヴァンパイアだったのですね!」

 コーデリアはノエルという存在に懐疑的になってしまった。ノエルに不信感を抱くには十分な状況だった。ノエルはコーデリアに説明しようとしたが、コーデリアは涙を蓄えた懐疑的な視線でノエルを一瞥すると、逃げて行ってしまった。

 ノエルは、その場に立ちつくした。

「あんな目で見られたのは……何百年以来かしら……。血は争えないわね。私ももう少し早く説明すべきだったのかな……」

 ノエルは遠方に消えていく金髪の少女の背中を見つめていた。紅い瞳から涙が一筋零れ落ちた。


 コーデリアは教会に帰ってくるなり、風呂にも入らず夕食も食べずに部屋に籠ってしまった。

「コーデリア、何かあったのかい?」

 神父がドア越しに話しかけても返事がなかった。

「こんなことは初めてだ。お友達と喧嘩でもしたのかな……」

 神父はコーデリアをそっとしておくことにした。

「酷いです……私に嘘はつかないって言ったのに……ノエルが、私を騙していたなんて……」

 布団の中でコーデリアは呟いた。今まで信じていた大切な人が自分をだましていたなんて受け入れがたい事実だったが、目の前で女性を襲っているのを目撃してしまったのだ。ノエルへの懐疑心が心を埋め尽くしてしまう。そんな彼女の心情を表すように満月に近付く月を雲が覆っていた。


 翌日、コーデリアは出掛けなかった。教会の仕事に専念した。仕事が無くなっても教会の掃除や神父の手助けに時間を割いていた。

「コーデリア、またキミと過ごす時間が増えたのはうれしいが、お友達はいいのかい?」

 朝食の席で神父が問いかけた。

「ええ。今は会いたくないのです……」

 俯いてそういうシスターに神父は追求する事をしなかった。教会に来る信者達もコーデリアの元気がないのを気にかけていた。

「コーデリアちゃん、どうしたのかな?」

「元気がないわねぇ」

「いつもはマリア様のような笑顔だったのに……」

「この前なんて気の合う友達が出来たと言って喜んでいたのに……」

 コーデリアは教会の仕事が終わると、村や町に出掛けた。人々に祈りを捧げるためだ。しかし、その祈りを思いの他、早く片付いてしまった。信心の薄い人が多くなっていたのだ。思えば、最初にノエルと出会った時もこんな状況だった。

「紅い瞳も、日の光や十字架を嫌うのも、今思えばヴァンパイアの特性そのものだったのですね。恋は盲目というのは本当ですね。……ノエル、どうして私を騙していたのでしょうか」

 コーデリアは気がつけば、銀髪の少女を探していた。そんな自分に気がついて驚いた。ここ最近いつも彼女が隣にいた。彼女との楽しい思い出が駆け巡る。しかし、その思い出が最後の夜に行き着き、陰鬱になってしまう。

「もうあの子のことは考えないようにしましょう。人々のためになるように頑張りましょう。迷える子羊を導きましょう」


 コーデリアは町に出掛けた。すると、声がかかった。

「失礼、お嬢さん」

 声をかけた男は貴族だった。

「貴族様ですか? 私に何の御用でしょうか?」

 貴族が村娘に声をかけるのは意外だった。そもそも城に引きこもっている彼らがこんな町中に来ることも意外だった。

「実は、牧場の家畜略奪事件や連続殺人事件を解決した貴女の力を借りたいのだが―――。もう一人の銀髪の少女はどこに?」

「すみません。彼女とは喧嘩してしまって、今どこにいるのか……」

 本当は家の場所等知っていたが、ノエルと顔を合わせたくないコーデリアはあえて告げなかった。

「まぁいい。貴女だけでも城に来てほしい」

 そう言ってコーデリアの手を引いた。抵抗しようにも相手は貴族で護衛の兵隊もいたので何もできなかった。

 城の中に入ると、会議室のような場所に案内された。そこには身分の高そうな男達が座っていた。

「いやぁ、手荒い歓迎ですまない。ぜひともキミの知恵を借りたいのだが―――」

 口を開いたのは中央に座った一番偉そうな人だった。

「私の知恵を借りたいとはどういうことですか?」

「うむ。知っての通り、この国、この地域は貧困に喘いでいる。貴族として何とかしたいんだ。そこで何事件を解決したキミの知恵を貸してほしいのだ」

 そう言えば、元旅人のクラークも知恵を借りたいと城に呼ばれていた。それだけこの国、この地域の問題は深刻化していると言う事だった。

「わたしで良ければ、力になりますが……」

「うむ。それではこの不景気の改善策を聞かせてもらおうかな」

 コーデリアは本来聡明だったが、ノエルとの問題で冷静さを欠いていた。そうでなければ、貴族に助言し、この国を助けようとしてクラークが冤罪を背負わされたことに気付いていたはずだった。

「人々は疲弊しています。今しばらく税金を下げるか、徴収した税金を人々のためにお使いください。そうすれば数年後には改善するはずです」

 コーデリアの答えを聞いた貴族達は苦い顔をした。

「君……もう帰って良いぞ……」

 初老の貴族が静かに言った。コーデリアは納得できなかったが、貴族に逆らうことはできず、お辞儀をして部屋から出ていった。

 コーデリアが部屋を出てからしばらく体を震わせていた貴族だったが、両の拳で机を叩いて叫んだ。

「それでは駄目なのだ!」

「どうして分からない! 我々貴族の金が底を尽きかけていると言うのに!」

「クラークと同じような事を言う! もっと素晴らしい解決策があるはずだ!」

 貴族達は全てが上手くいくようなありえない解決策を望んだ。そんな策はあるはずがないのに。

「いかがいたしますか?」

「我々貴族が行き詰っていることを知られてしまった。捨て置くことはできないな。すぐに捕えろ! そして小娘を魔女として処刑するのだ!」

「国民の不満は限界だ。魔女としてスケープゴートにするのも流石に感づかれる」

「だがもうそれしかない。早くしなければ革命が起きる。だから下賤の輩にも知恵を借りようとしたと言うのに!」

 城内には政治に失敗して絶望する貴族達の声が響いた。私利私欲の政治に限界が来たのだった。碌な改善策を取らずに手遅れになってから下々の者に知恵を借りようとするのは滑稽だった。


 コーデリアは町に戻っていた。しかししばらくして町が騒がしくなってきた。貴族達は狡猾だったのだ。自分の弱みを隠すため、そして新たなスケープゴートを用意するためにコーデリアを貶めた。彼女が身を隠している間に彼女が魔女だとするビラをばらまいたのだ。人々は驚くほど簡単に貴族達に乗せられた。民間人も兵隊たちもコーデリアを捉えようと動き出したのだ。

「おい!この手配書の少女を差し出せば懸賞金がもらえるそうだ!」

「修道服の若い女ってあいつじゃないのか!」

 町人がコーデリアに気付いたようだ。

「いったいどういうことなのですか……」

 コーデリアは町の様子が一変した事と人々が自分を狙っている事は理解したが、なぜ自分が狙われているのかわからなかった。

「考えている暇はなさそうですね……」

 コーデリアは追ってから逃れるように駈け出した。人通りの多い所は避けて隠れながら移動した。

「助けてください! 追われているのです!」

 コーデリアは民家に逃げ込んだが、貴族達がコーデリアの首に懸賞金に目が眩んで彼らは手のひらを返した。

「おい! コーデリアという娘を捕らえたら懸賞金をくれるそうだ!」

「本当か! いくらくれるんだ!」

「あの寂れた教会のシスターだろう?」

「どのみち親なし子だ! 捉えても誰も悲しまんさ」

「優しい子だったが、生活のためだ……」

 コーデリアは逃げた先でも裏切られ、居場所を密告された。見知った人間達も自分を簡単に売る。人間に失望したコーデリアは物陰に隠れながらどうすべきか思案した。

「どうしよう。町の人は懸賞金に眼の色を変えている。私の逃げれる場所は限られている。こんな時ノエルならどうするのでしょうか」

 コーデリアは頭を振った。こんな時でも思い出してしまう愛しかった人の名。何故あの人は私に嘘をついていたのだろう? そんな疑問が心を駆け巡る。追い詰められた今だからこそ考えてしまうのだ。

「いったい私は誰を信じたらいいのでしょうか? 村の人も町の人も貴族に踊らされる人ばかり、ノエルは……」

 かつて大切だった人の顔を思い浮かべたが、コーデリアはすぐに首を振った。

「駄目ですね。彼女に頼る癖がついてしまっています。私はどうしたら……」

 そこで彼女はクラークに託された手紙の存在を思い出した。

『もしキミが誰かを信じられなくなった時、あるいは全てに絶望した時にコレを読んで欲しいんだ』

「そうだ! あの手紙……」

 コーデリアは手紙を鞄に入れたままだった。それを取り出して見てみる事にした。今が誰を信じていいかわからなくなった時だったからだ。

 人間不信になった少女は縋るように手紙を丁寧に開いた。


『コーデリアちゃんへ

この手紙を読んでいるということは、キミは今人を信じられなくなっているのだと思う。直接キミを助けられないのは残念だが、君には信じられる友達がいるはずだ。彼女を頼りなさい。』


「でも、ノエルはヴァンパイアだったんです。そのことを黙っていたのですよ! ヴァンパイアが恐ろしいと言ったのはクラークおじさんだったじゃないですか!」

コーデリアは嘆いたが、手紙には続きが書かれていた。


『キミが今懐疑的になっている理由の一つは、ノエルちゃんの正体の事だと思う。彼女は確かにヴァンパイアだが、キミを害する気はないんだよ。ヴァンパイアは人間より強い種族だ。殺そうと思えば殺せたはずさ。でも彼女はキミを殺そうとはしなかった。彼女は他のヴァンパイアとは明らかに違う。』


「でも! あの子は人を襲っていたのですよ! それなのに害する意図がなかったなんて」


『ヴァンパイアという種族は食料が無くても生きていけるが、血を飲まなければ、自我を失ってしまうんだ。私はヴァンパイアを恐れて彼らの事を調べたから知っている。だからキミは彼女を恐れることはないんだ。もし彼女が血を吸っている所を見たのなら、それは生きるために仕方なくやっている事だ。彼女は優しい。彼女が襲った人は誰も死んでいないだろう?』


「確かに、みんな生きています。でも、あの子は私に正体を隠して近づいたのです」


『ヴァンパイアという種族はそれだけで恐れられる。私がそうであったようにね。事実人間を積極的に襲う奴等もいる。だからこそ彼女は正体を隠していたのだと思う。彼女はキミに知られたくなかったんだよ。純粋に友達として一緒にいたかった。だから言いだせなかったのだと私は思う。彼女と過ごした思い出は、彼女の優しさは、彼女との信頼は、彼女の正体がヴァンパイアだと言う事実だけで消え去ってしまうものなのかい?』


 コーデリアはクラークの手紙に衝撃を受けた。ノエルに対する不信感が徐々に消えていくのがわかった。確かに彼の言うとおりだ。ノエルは自分を助けてくれた。いつも優しくしてくれた。そんな彼女を好きになった。

「―――そうだ。私はノエルの正体が恐ろしかったんじゃない。ノエルが私に重大な事を隠していた事実が嫌だっただけ。あの子の事を知ったつもりなのに知らない部分があったのが嫌だっただけ。それなのに、冷たくあしらってしまって……。ごめんなさいノエル……ごめんなさい……」

 コーデリアの脳裏に悲しそうな銀髪の少女がかすめた。あんな悲痛な表情は初めて見る。それだけのことをしてしまったのだ。罪悪感がコーデリアの胸を抉る。

 ――その時。

「いたぞ! 魔女だ!」

「捕えろ!」

追手がすぐそばまで迫ってきていた。コーデリアは無我夢中で逃げ出した。


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