未知との遭遇6
「さっきからの違和感。お前か、俺を殺すことが目的か、その羽、ミュータントか」
「嘘、なんで、というか私に触った?どうして!」
「シエル様!」
空人が鎌をへし折り、その拳が何のためらいもなく、彼女の行動を制限するために振り下ろされようとした時、通常よりも2周りは大きなカラスがその翼をはためかせ、突風を巻き起こし、空人の手を離させた。そしてシエルは空人の射程距離外の空中まで距離をとる。
だが、空人はやはり間違いなくこちらを認識している。どういう事だ?見えるはずがない。
だから触る事なんて決して、シエルはその腕に残る掴まれた感触に恐怖を覚える
「ありがとう。セフィラ」
「セフィラ、それがそのカラスの名前か、この感じ、ようやく聞こえるようになったし、だいぶんはっきり見える、お前らか、ここ数日の違和感の原因は」
「あなた一体」
「シエル様!何も話してはいけません、とりあえず引きましょう」
「……襲ってきておいて、理由は教えられない。でもその眼、俺への怒りは本物のようだな。どうだ、せめて理由くらい話はしないか、こう見えても俺は物分かりがいいんだ。
殺される明確な理由があれば殺されてやらないこともない」
「……一つだけ」
「シエル様!」
「私たちはあなたを殺さない。そんな事をすればそれで終わってしまう。それ以前に私たちは命の尊さを知っている。何万何億という命を奪いあなたとは違う。この悪魔」
しばらくの間二人の間に、無言のにらみ合いが続く、だが、人の気配がしだすとセフィラによって半ば強制的に二人は、そのままはるか遠方に消えていった。
「どうした?珍しい、こっちから登校」
「なんじゃ、空人か、どうした朝から深刻そうな顔をしおって」
空を呆けて見上げるに、空人に同学年の雷仁と蛮田長治が話しかける。
二人は、唯二、積極的に空人に話しかける宇宙でも稀有な存在だ。
校則違反のアクセサリをつけ、胸元を開き、死んだような眼をしているのが雷仁。祖父から古武術雷流を教えらた戦闘狂。普段何を考えているか分からないが、言葉が通じないわけではない。空人の唯一の親友で、よく空人に勝負を挑んでくるが、今までに一度も空人に勝った事がない実質的この地域2番目の実力者だ。
そしてもう一人、大柄で如何にも昔ながらの不良と言わんばかりのブレザーよりも学ランが似合うような風貌の男が蛮田長治、番長を自称しているが、高校進学直後、空人に喧嘩を仕掛けるが、圧倒的な力差でねじ伏せられた。それ以来こちらも何かにつけて空人に喧嘩を吹っかけてくる。性格も見かけどおりだが、決して教師には逆らわず、弱い者いじめは嫌いな漢字の漢と書く生き方を信条とする男だ。
蛮田は空人に勝ちたいという気持ちはあるが、認める男でもあり友だとも思っているが、空人の方は友達だとは思ってない。
「いや、さっきの、あれ」
空人は空を指さすが二人はその咆哮を見つめ怪訝な表情をする
「あれ?」
「いや、何でもない。それよりお前たち一緒に登校してるのか?こんな時間に?」
「いや、今日は何となく早く起きただけ」
「わしもじゃ、一緒に折るのは偶然じゃ、しかもお前もとは運命を感じるのう」
「お前らと一緒にするな」
空人は二人を無視し、一人先に早歩きで行こうとするが二人はそれについてくる。
「ついてくるな」
「なんじゃその物言い、方向は一緒じゃ、なんじゃ、虫の居所が悪いのか」
「俺は一人が好きなんだよ」
「ひゅー、一匹狼、かっこいい」
「殴るぞ」
「殴るー、勝負、勝負」
「お、喧嘩か、いいのう、せっかくじゃからわしも」
「……しねぇよ。馬鹿馬鹿しい」
空人は二人を無視し、さらに歩く速度を上げる。
今はこいつらに構っている暇はない、それよりさっきの
「なんじゃ、変じゃのう、」
「悩み事か?聞いてやろうか?」
「お前ら、死神の鎌を持った天使が襲ってきて悪魔って言われた、って言ったら信じるか」
二人はその言葉に凍り付く。




