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バッドステータス1

空人は思いっきり反射の様に机を蹴飛ばし、目を覚ました。

体の自由がきかない、やばい。視界が歪み、そのまま地面に倒れこみ、呼吸を落ち着けようとする。初めて経験する感覚、この世のあらゆる痛みと不快感が、体をめぐる。どんな姿勢を取ろうとも痛みも吐き気も収まらない、頭痛と言っていいのかわからない頭の痛みで思わず声を上げる。痛みで声を出すのはこれが初めてだ。

結局その後30分以上、周りの机をなぎ倒しながら、苦痛にもだえる空人を生徒会が発見し、救急車を呼ばれ、病院に搬送された。

救急車の中で症状が落ち着き始め、というより、この痛みの耐え方を習得し、何とか精密検査の前で、受診拒否することには成功した。

「すみません。病院まで付き添ってもらって」

病院の待合室、引率の先生が帰った後、付き添ってくれた生徒会役員の先輩にお礼を言う。

「ひょっとしたらストレスからくるものかもって、無理したりしていない。文化祭の準備」

「いえ、それは特に問題なく、それなりに楽しませてもらっていますよ」

「そう、よかった。そうだ言いそびれてたけど、予算の修正の件大丈夫だって」

「そうですか、ありがとうございます」

「……」

正直いまだに痛みとめまいに耐えるのに精いっぱいで、無理やり会話を続ける余裕はない。「!それじゃ、お迎えさん来たみたいだから帰るね」

生徒会員の言葉に反応し、病院の入り口を見ると、自動ドアが反応せず、必死にセンサーに向かって手を振る結愛の姿が、

「どうしてわかったんですか」

「さっき家に電話したらすごく慌てて、すぐに行きますって。それでさっき視界に入って多分この人だなって、空人さんって呼んでいたけどもしかして彼女さん?」

「……その予定です。それと余計なのが、」

「余計なの?」

「いえ、こっちの事です。今日は本当にありがとうございました」

空人は丁寧に頭を下げ、もう一度入口に目を移す。そこには結愛とシエルとセフィラが、

やっと自動ドアが開くと、勇み足の結愛は次の自動ドアに頭をぶつけながらやってくる。

「空人さん!大丈夫ですか!」

「結愛さん、ここ病院です静かに」

その様子を見て生徒会員の女性は温かい目で笑い手を振り、入れ違いに病院を後にする。

「すみません。で、大丈夫ですか!倒れて病院に運ばれたって聞きましたけど」

「少し、疲れが出ただけです。大丈夫、もう何ともありませんから」

泣きそうな顔で、何度大丈夫と言っても聞いてくれない結愛、心配してくれるのは本当にうれしいが、ここまで心配をかけると心苦しい。

結愛は結愛で、空人が素直に痛いともきついとも言わないことは初対面のころから百も承知。結愛なりの謎の体調チェックを、クリアし、何とか結愛は一安心をする。

あの日から、二人は形式上、恋人になった、そして結愛は他人が見たら完璧な彼女を演じ、

空人は彼女に好かれるために、最善を尽くした、結果が今の関係性だ。

「すみません、心配をかけて」

「そんなことは気にしなくていいです。でも本当によかった」

この安堵の表情、それを見ていると本当に痛みが引いていくようだ。

だが、その背後に若干本気で怒っている二人の表情がちらつく、

シエルはまだしもセフィラが表情を変えるのはあの挑発の時以来だ。

空人はトイレと飲み物を買って来ると言い、病院の裏手の駐車場に二人を連れだす。

「端的にお聞きします。何をされましたか」

感情的になったセフィラが高圧的に尋ねる

「たぶんだが、ちょっと未来の自分に喧嘩を売ってきた」

「ちょっとおなか見せてください」

「腹?なんで」

空人は言われるがままに制服ごとシャツをめくるとそこには大きなあざが

確かに夢の中で下半身を吹き飛ばされはしたが、

「どんだけやばいんだよ、未来の俺は、全然勝てる気がしないぞ……」

「何をしたんですか!もしかして扉を開けたんですか!」

「別にそんなことをしていない、お前たちが来る前からちょっとだけ見ていた夢がある、たぶんその夢は未来の俺で、今回は何か手が変わりはないかとその夢の中でちょっと無理してみただけだ。まぁ、こんなことになるとは思っても見なかったが」

「体に異常はありませんか」

「実は、超体いたいのと、吐き気、それに体がふらふらするというか視界がずっと揺れっぱなしだ。一番やばいのはそのめまい。現実だと分かってても夢の中にいるみたいだ。」

「でしょうね。魂が傷ついています。しかも肉体から離れかけている。肉体に魂が中途半端に固定されているからそれは意識もはっきりしません。痛みの方はおそらくその魂の損傷に依存するものでしょう」

「で、どうなる?」

「放っておけば、このまま幽体離脱そのままお陀仏、痛みはそのままお持ち帰りで、魂はそのままこの世に止まり地縛霊として他人に迷惑をかけTV出演。でしょうか」

「軽く言うな、何とかならないのか」

「私たちは未来からきた便利ロボじゃありませんよ」

セフィラは大きくため息をつき、シエルに目線で合図を送るとシエルは了解とジェスチャーし、病院の中に入っていく。


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