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失恋2

「仁には彼女がいるだろ、そんなことはありえない」

「例えばです。どうすれば仁さんの事を好きになれますか、彼を心から愛せますか?」

「無理だな、」

「例えば、性転換したとして?」

「それでも無理だ。俺は今の仁を知っている。」

「それと同じ事なんです。結愛さんにとって空人さんを好きになるということは」

「性別を超えて俺という魅力で惚れさせる」

「自分はそんなことは無理でも、彼女にはそれを強要する、傲慢なことです」

「あぁ、そうだな。でもそれしかない」

「男と女、確かに愛は自由であるべきだ。性別にとらわれない愛の形もあるでしょう。でも彼女は女の子が好きで、それ以外を恋愛対象として見られない、生まれ持って、今まで彼女が培ってきたものです。それを覆すことは容易ではありません。

少し、調べさせていただきました。彼女は過去に何度か好きになった女性に振られています。友達だった一線を越えようとして、拒絶され、友好関係も失いました。その後も、何度も同じことを繰り返し、そのたびに彼女は悩み、自分を変えようとした、でも、それもできなかった。悩んで傷ついて、今では彼女はそんな自分を受け入れ、大事にしている。

女の子が好き、は彼女にとって大切な自分です。でも空人さんはそれを否定しなければ、彼女の心を手に入らない。だけど彼女のその気持ちは彼女そのもの。この矛盾どうします」

「別に彼女は男が嫌いというわけじゃない。そして少なからず、俺に好意を持ってくれている。別に彼女の価値観を否定するんじゃない、新しい価値観を開く」

「自分は彼女の事以外見えてないくせに、本当に傲慢なことです。

恋は盲目ですか、この世界に運命の人なんていやしません、その時はその人と思っていても、これから先、何があるかわは分かりませんよ。タイミングひとつで、かなわぬ恋もあれば、唐突に燃え上がり、その後最良となる間ってある。別に最初から一つに絞る必要なんてない、とはいえ、そんな気持ちで人を好きになれる人でもありませんよね。

本当に分の悪い恋愛をする人ですね」

空人は鉛筆を置き、シエルを見つめる。その視線シエルは一瞬怯える。

「……で、用事は、一人で現れているんだ、セフィラにも言えない話でもあるんだろ」

「そんな状況を打開する方法が一つだけあります。セフィラには黙っておいてください」

「了解している。」

「私たちは肉体を持たない精神体です。空人さんが私たちを触れるのは私たちを認識し、それに触れるだけの力を持っているから、普通はそんなことはできません、逆にいえばこの姿もまたイメージに過ぎません。本質は魂、いえ意識体というべきですね。私たちは意識だけの存在です。私たちは世界樹の力を借りて様々な力を行使しています。

何度も使っている関係図や、履歴書。はじめのころに空人さんに使おうとした因果を刈り取るはさみ。それらはすべて、この世界樹と人の無意識がつながっているからこそできるこその芸当です。世界樹そのものはもっと先の未来でないと存在しません。ですが、その元となる物は普遍的に存在している」

「すべての命はつながっている。君たちの本質はその集合意志だったか」

「はい、その通り、ですが普段それを認識する事はできません、それは命が自分を守るために個別の肉体を持っているから、ですが私たちにはそれがない。ですから本質の私たちはどこにでも存在するしどこにもいない。その深層意識の先にいる存在です。今はこうして空人さんの影響を受けここにいますがこれだって本来の私そのものではない。

だからこそ、私たちにはできる事がある」

「……」

「空人さんを通じて、私が彼女の中に入ります。そこで彼女の記憶を改ざんし、彼女の本質に少しだけ修正を加えいます。そうすれば彼女は男性を好きになることができます、

そうすれば空人さんの事だって好きになれますし、お望みであれば今すぐにでもあなたを、」

その時だ、明確に伝わる怒りの波動、最近は収まっていると思っていたが、未来の空人に近しいその威圧感。

「俺の事を思っての事だろう。だがもし、本当にそんなことをしてみろ、殺されるくらいで済むと思うな」

「やっぱりそうなりますか、」

「あぁ、そうなるな。本気でもないくせになんでそんなことを言うんだ」

「本気でしたよ。空人さんが乗ってくれれば、今の私がそのまま結愛さんの意識に潜り込むことはできませんが、空人さんが例の扉を少しだけ開いてくれれば、私はそこを通じて、結愛さんの中に行ける。本当にやるつもりでした」

「あれは開くなと散々言っていたのにな」

「空人さん扉の向こうに行くのは、です。今回の場合、あそこを超えるのは私、向うに言ったらすぐに内側からすぐに閉めます。そこからなら結愛さんの意識に行ける、最もそうなれば私は二度と戻ってこれなくなる、私はそこで消えゆくだけの存在になりますが」

「お前、なんでそこまで」

「……実はですね。私たち予定より長くこの世界に入れないようです。

未来は何も変わってはいない、でも未来は少しだけ早く同じ結果になりそうです。私たちがこうして空人さんに出会った事で、空人さんの力の覚醒が少なからず早まったようです。今の空人さんなら扉を開けばすぐにでも力を使いこなすでしょう、すぐに星の声を聞こえるようになるでしょう。何のきっかけかそれは分かりません。どれだけ余裕があるか、それも分かりません。でも、もう間もなく、私たちはいなくなります」

「元の世界に戻る、のか」

「いいえ、元から戻れはしませんよ。この時代にも別の私がいます。まだそれが表に出ないだけ、その私も、私で、同じなんです。だから世界樹が現れれば、昔の私が今の私に上書きされる。それだけの事です。セフィラは多分そんなには変わらないでしょうけど、私は色々な人の影響を受けて今の私になってます。正直消えたくはないんですけど、こればっかりはどうしようもないことです。」

彼女は乾いた笑い声をあげる。

「だからどうせ消えるなら、せめて、皆との約束は果たしたい。未来を変えるって、その為なら、私は結愛さんの心だって犠牲にできる、自分のことだって平気で、」

「平気な奴の顔かよ」

彼女の目から涙がこぼれる。彼女は神様だ。でも自分以上に彼女は人間だ。

「女の子を泣かせるのは趣味じゃないんだけどな」

これもまた俺のせいか、俺はどうしてまぁ、いつもいつも

「シエルさん。正直初対面の印象は最悪だったし、あの出会いは別に全面的に俺が悪いとも思っていない。でも、シエルさんを泣かせたのも俺なら、シエルさんにそんな運命を背負わせたのも俺だ。そのことは本当に悪いと思っている。でも、俺は感謝もしてるよ。二人に、俺は変われてよかったと思ってる。ありがとう。

だから俺はその感謝を結果で伝えたい。

俺はその力の覚醒を否定するシエルさんも、セフィラも消させはしない。

元の時代に来られなくても、この時代に来て良かったって思える様に、」

その言葉にシエルは信じると言ってくれた。そうだ、俺は約束を守る男だ。

絶対に裏切ったりしない。絶対にだ。


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