未知との遭遇4
『……』
『ご理解いただけましたか?風上空人という男がどういう男であるか、』
『色々言いたいことはあるけど途中のあれ何?突然自分の価値観話し出して、ドン引きしてたじゃない。普通に案内してあげた方が早かったでしょ』
『彼の場合、言葉は会話ではなく、演説のために用意られることが多いようですね』
『しかし、あんなに魅力的な女性を前にしても、少しも揺らぎませんでしたね。本当に薬飲んだんですかね?!どうやらそれは間違いないようですね』
空人の早足で数分、今度は別な女性が空人の目の前で倒れこんだ
「あの、大丈夫ですか?」
空人が呼びかけるが彼女は痛いと繰り返すだけで、空人の質問には答えない。
すると空人は間髪入れず、携帯電を取り出す」
「救急車をお願いいたします。はい、場所は……」
空人は場所を伝え、同時に女性の様子をつぶさに観察し、的確に客観的にわかる症状を伝えていく。そして向うからの質問に答えながら、分からないことを聞かれると携帯電話のスピーカーをオンにして直接女性に答えさせる。
『さっきの感じ、おそらく向うは質問する前に必要なことをこたえていましたね。
本当に、こういう時は頼もしい限りですね。右往左往するわけでもなく、自分の処理範囲を超えればすぐに適切な判断を」
「はい、わかりました。やってみます。あの、動かすのは?道路の真ん中ですので、はい」
空人は電話を終えると彼女を道の端にゆっくり移動させ、テレビの音が漏れる家の呼び鈴を鳴らし、状況を説明し、有無を言わさず協力させる。
そのかいあってか救急車は10分足らずで到着。そのころには女性も自分の症状を話せるくらいには落ち着きを取り戻していた。そして空人は救急隊員に必要な事項を伝え終えると、そのまま何事もなかったかのように単語帳を開き、騒然としている現場を後にする。
とはいえ、さっきから何かがおかしい。通常、この時間に出会う人間はこの住宅街では決まっているそれが今日は3人もイレギュラーが、それに普通なら会う人も今日はあっていない。空人は足を止めもう一度あたりを見回す。
そうして何を思ったのか、唐突に単語帳を閉じると突然走り出す。
しかもいつもの通学路ではない、違う道、そこは交差する道が少なく、視界も良好。何が起きても対応できる。しかもその道を感覚を研ぎ澄まし、敏感に人のいる気配を感じ取ると道を変えそれを回避していく。
『すさまじいですね。因果を理詰めで、これではとてもじゃないですが対応できませんね』
『さっきからなんでわかるわけ?』
『あたりを見回しています。あえて車の多いところを選び、先に車に移る景色で状況を把握したり、なにより違う道を選んだこと、と走っていることで、因果の変更が追いついていません。偶然の出会いをことごとく、しかし、これはまずいですよ。予想以上に効いていますよ。これはまずい』
想定外の事態に各省のない考えられる想定を立てていく