告白3
「空人さん、ここ凄く高いですよ、二人で一週間分の食費ですよ」
強制的に連れ込まれた結愛が空人が注文した後、おろおろしながら結愛が周りを見回す。その様子を見てここぞとばかりに空人は落ち着いて、余裕を見せる。
「たまにはいいじゃないですか、それに僕がこうしたいんです」
「こうした言って、高校生のお金の使い方じゃありませんよ」
「高校生、そうじゃなくて、」
ここまでしたんだ、もう後には引けない、いや元から引く気はない。
「結愛さんとこういうところで食事をしたいそう思ったからです」
「はぁ、私作りますよ。似たようなものでよければ」
伝わっていない。せっかくの渾身の言葉だったのに、そうだ、結愛さんはそういう人だ。
「そうじゃありません。結愛さん、僕はあなたの事が好きなんです。
だから、こういう場所で食事をしたいって思ったんです」
空人は真剣な顔で結愛を見つめる。結愛はまだ空人の真意を理解していない。
「あなたは僕を変えてくれた。あなたのおかげで僕は毎日が楽しくて、すごく、幸せだって思えるんです。これからもずっと結愛さんと一緒にいたい。
だから、その、僕の彼女になってくれませんか。絶対に不幸になんてしません。
僕がずっと守りますし、結愛さんのためにだったら何でもします。
僕と付き合ってください」
『どう思う?』
『まぁ、いささか急かとは思いますし、結愛様がついていけていない時点でムード作りには失敗しているかと、自分の事も僕だなんてキャラじゃないですよ。ですが、』
『うん、一生懸命さは伝わっていると思うよ。パラメーターからいくとこれでも大丈夫のはず、いよいよ私たちの任務は完了』
シエルが勝利を確信しようとした瞬間
「ごめんなさい」
「……」
全てが夢であってくれ、空人はうつむき、彼女を見れない。
「気持ちは凄く嬉しいです。そんな風に思っていてくれただなんて、でも、」
「やっぱり!俺なんかより、年上の黒木さんの方がいいんですか?」
「黒木さん?どうして黒木さんの事を」
「あ、いやそれは、」
「というより、どうして黒木さんが出てくるんですか、そういう事じゃないんです」
「じゃあどういう、事ですか!俺に悪いところがあれば直しますから」
最初の料理を持ってきた男性が思わず、テーブルの少し手前で止まる。
「ち、違いますそういう事じゃないんです。落ち着て、すみません。」
結愛は男性に会釈し、テーブルに料理を置いてもらい席を離れると話を続ける。
「私は空人は十分魅力的だって思います。今日も私のために色々考えてくれて凄く凄く嬉しいです。でも、ダメなんです。空人さんが悪いとかじゃなくて私の問題で、」
「それはどういう事ですか」
「い、今はまだお話しできません。それはちょっと、」
前のめりになった空人であったが、本当に困った表情をする結愛に落ち着きを取り戻し、椅子に座りなおす。
「本当にごめんなさい、」
「いいえ、俺の方こそすみません」
「できれば、今は、今までのままで、今日の事はなかったことに」
そんなことできるわけない。こうして言葉にしてフラれた事実は変わらない。
「でも、誤解しないでくださいね、私、男性で好きになるなら、絶対に空人さんみたいな人を好きになります。どうして黒木さんの事が出てきたのかわかりませんけど、私の中では空人さんと黒木さんは別格です」
だったら、さらに食い下がりたい気持ちはあるが、これ以上彼女を追い詰める勇気はない。
「あ、空人さん料理が冷めてしまいます。せっかくですから楽しみましょう」
そういって彼女はワイングラスを手に取り、空人のオレンジジュースと乾杯をする。
その後、本当に彼女は何もなかったかのようにいつもの様に笑い、いつもの様に明るくふるまう、空人もそれに付き合うが、心ここにあらず、作り笑顔もうまく作れない。




