表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/63

変化7

教室に戻ると、空人は神妙な顔で頭の中で色々と思考を巡らせる。

昼休みはまだ20分ほど残っているこの状況で空人が戻ってくるのは珍しい。

誰もが余計な刺激をせぬように、空人のことは気にせずに、しかしわずかに声を小さくし、談笑を続ける。そんな時だ

「えーもー、分かんないよ。どうしよう。せっかく昼休みにやろうと思ってたのに」

次の数学で確実に当たる横の席の女子生徒が頭をかかえ、問題を解こうとしている。

空人は初めこそ無視をするが、不平不満の独り言が永遠と続く、

意味わかんない、なんでこういう時に限って皆どっかいっちゃうのと、本当に考えているのかと思いたくなるようにしゃべり続ける。

空人の中で彼女は馬鹿だという事、友達が多くうるさいという印象のクラスメイト。

うるさい静かにしてくれないか、と言おうかとも思ったが、この様子、いつもは仲良しグループと一緒に学食に言っているのに、机に食べかけのパンと先ほどの言葉、まぁ、馬鹿なりに努力しようとはしている。空人は集中する彼女のノートと教科書の問題に目を通し、

「4、」

突然そうつぶやいた。

「え、」

突然のことに一瞬何の事だか、空人に話しかけられたこと自体を驚き、彼女は固まる。

「そこの答え、」

「あ、ありがとう。ございます」

この反応、予想通りで、今まで通りの想定の範囲内。だが、なるほど。結愛に長治にいろいろ言われたが、確かにその通りだ。今なら少しは自分の言動に反省できる。

しかし、まずはこの顔、全く理解できていない。なんで答えがそうなるかだけ言っても無駄か、コミュニケーションの取り方はともかく、まずは解を口を出した責任はある。

「よかったら説明するけど、時間ある?」

「は、はい、お願い、します」

空人は彼女が分かるように説明する。

元々、理屈屋で観察力に優れ、演説のように抑揚をつけ、論理的に喋るだけのスキルを持っている。つまりは彼女がどこを分かっていないか、どう説明すべきかを理解できている。

彼女の許可なく、彼女のノートに図を書いて説明するあたりは相変わらずだが、

彼女に合わせるように早口ではなく、途中途中に間を挟み考えさせる配慮はできている。

「これでなら分かる?」

5分程度で説明を終えた空人は、意図的に怖がらせないように優しく尋ねる。

「うん、大丈夫、あ、あのさ、それじゃこっちは」

彼女がさしたのは次の問題、確かにこっちがあたる可能性もある。

とはいえ問題の内容は先ほどと類似したもの、ほんの少しだけ違うだけ、

空人は自分で考えろ、何も分かっていないじゃないかという感情を抑え、

先ほどのことを交え、彼女が同じ問題でどう違うかに気づけるように説明をする。

空人にとって彼女は背景の一つでしかなかった、いや、うるさい為、嫌いだった。

でも、少なくとも、今の一生懸命理解しようと理解しようとする姿勢には好感を持てる。

空人は一通り説明を終えると、自分でやってみるという彼女を待ち、彼女に自分に気を使わせないために自分のスマートフォンを広げゲームをはじめる。

すると空の指の動きで、彼女はちらちらと空のほうを見始める。

「はい、集中」

「ねぇ、空君も、それやってるんだ、何使ってるの」

「何って、知ってるの?これ」

空人は彼女に画面を見せる

「私超強いよ。ほら」

それに返すように彼女も取り出し、空人に自慢げに見せる。

興味のない話題なら流すが、事ゲームならそうはいかない、安いプライドに火がつく。

「確かに、でも、俺のほうが強いよ」

空人は机の上に携帯をおき、タッチペンを使い、ものすごい速さでゲームをやっていく。

彼女のほうが持っているキャラクターは強いが、パズル要素の強いこのゲームで

空人は頭の良さでその上を行く、そのあまりのすごさに彼女は声を上げる。

「めっちゃすごい!何それ!」

「まぁ、これくらいはね」

今までの空人なら、こんなに自分の趣味の説明もしなければ、勉強を中断して話をそらす事を良しとするはずもなかった。でもそれを変えたのもまた結愛だ。

「なに、その動き、全部考えてやってるのめっちゃ速い!ありえない!信じられない!」

「俺からすると普段。八木さんがメール打つ時の動きのほうが信じられない。フリックって、あぁいう風に使うんだって、絵文字とかも含めてほとんど見ずに選んでいるし、あっちの指の動きのほうが常軌を逸している」

名札で名前をすばやく名前を確認するわ、常軌を逸しているという言葉のチョイス

だが、それを補って余りある。すごさを見せつけた。

「ねぇ、これ全部考えてやってるの!どうやったらそうなるの教えて!」

「とりあえずまた今度ね。とりあえず今はその問題を終わらせてから」

空人は携帯をしまい、彼女のやりかけのノートをタッチペンでタップする。

「そうだね。そうしよう」

空人は余計な気を取らせないように今度は黙って彼女が考えるのを見守る。

「意外に、空人くん優しいだね」

そう言って彼女は笑った

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ