未知との遭遇3
『馬鹿、馬鹿って言ったわよ!というか、さっきの彼女、クラスメイトなのに、あの言い方と反応、覚えていないわけ?』
『必要のない人の顔を覚える気がない。この頃から変わっていませんね!!隠れて!』
『な、何よ、セフィラ。突然、そんな声出さないでよ』
『申し訳ありません、なぜかこちらを見られているような気が』
『見えているわけないでしょ、私達を認識できるようになるのはあと10年以上先よ』
『そうなのですが、なぜでしょう、明確にこちらを認識しているように、足を止めて』
『偶然じゃないの?それよりほら、次のフラグ、今度は年上のおっとり系よ』
「困ったわ、道に迷ってしまって、どうしようかしら」
今度はあたりをきょろきょろ見回しながら、女性がわかりやすく道に迷っている。
その前を空人は何事もないように通り過ぎていく。
『無視したわよ!あの男』
「あの、すみません、」
『ふふふ、そうよ、そう簡単にこの因果は断ち切れないわよ』
「あの、」
「聞こえています。ご用件をどうぞ。何を探しているんですか」
空人は足こそ止めはするが振り返りもせず、ゆっくりと単語帳のページをめくる
「まぁ、どうしてわかったんですか?」
「それだけ挙動不審で、つぶやいていれば嫌でもわかります。で、何を」
「あぁ、そうでした。あの、鈴木太郎さんという方のお宅を探しているのですが」
「申し訳ありませんが、自分はその方を把握していません。ですが、こんな時間の約束。相手と何か急ぎの約束ですか、であるなら電話で連絡してみれば?」
「それが、さっきかけたのですけど繋がらなくて、住所は分かっていますし、この近くだと思うんですが、私方向音痴でして」
方向音痴だとして駅から30分はあるこの住宅街まで来て、ここが目的地の近くであることまで把握しているのなら問題はない。
「スマートフォンをお持ちならナビアプリを入れればいい。というよりデフォルトでインストールされているものがあるはずです。それを使われればよいかと思います」
「それが、私機械は苦手なので、」
「ふう、」
空人は明確にさげすむように為にため息をつく。
『あ、これはまずいですよ。空人様、少しイラって来ていますよ』
「失礼ですが、よくわからないということは言い訳にしかなりません。せっかく道具を持っていてもそれを人が使えないのなら宝の持ち腐れ、使えないなら解約することをお勧めします。何のために持っているんですか、道具は使ってこそ意味を成す、
そしてスマートフォンがここまで流通したのはその素晴らしいものを民間人でも容易に使用できるようにしただけの事。
それの使い方がわからないはありえません。あなたもいい大人でしょう、もう少ししっかりしてはいかがですか。いいですか、僕は子供が迷子になって泣いていれば助けます。それは子供の能力を超えているからです。ですが、僕は子供がこけて泣いていても助けたりはしません。それは自分で立つことができるから、そこですぐに泣けば助けてもらえると思い込んでしまえば、それはよくない。それは大人になっても変わりません。
あなたは分からないとおっしゃいましたが、具体的には何がわからないんですか」
「え、その、何がって」
「その様子からして、分からないから触ってみてもいないという事でしょう、それでは経験の積み重ね、学習にはなりません。
いいですか、かのパスカルは、人は考える葦であるという言葉を残しています。人とは弱いものであるが思考できるということは偉大であるということです。ですが僕からしてみれば思考というものこそが人を人たらしめる。
逆を言えば思考を放棄するということは、葦であることに等しい。
思考が嗜好となり、至高にたどり着く。まずはご自身で考えてみてください。それでもだめなら、すぐそこの案内板にあるように300m先に交番があります。そこでお尋ねになってください。ですが、まずはご自分でそれを使ってみることをお勧めします。
長年身に付いた人にすぐ頼るということはなかなか抜けませんよ。あと、何かを探すなら、案内板にも気づく程度の注意力は持ってください。きょろきょろするだけ時間の無駄です。
失礼します」