表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/63

未知との遭遇2

『だから、あいつはもともと、最低限のコミュニケーションも取れない人間でしょ。だから下手に画策するよりシンプルに攻めてたほうがいいんじゃないかって思うの』

『はぁ』

『基礎ができてないなら王道から、名付けて、【恋の出会いは偶然から】作戦!というわけで、早速、昨日彼がいつも飲む野菜ジュースにこいつを仕込んでおきました』

『そ、それは!』

『そう、あなたの運命の相手を見つけます。いなくても作ります。これぞキューピット御用達、もとい、モテない男専用!因果律操作、その名もモテ薬!これを使えばあら不思議、昨日までドブ色だった人生が、今日からバラ色、あなたの人生にトラブルとともに女の子が迷いこんできます。1回10ccそれで効果が1週間持続。その後モテなくなる副作用は、気にしないでね。まぁ、彼の場合、その後世界中の人間を巻き込む因果がある以上多少の前借は問題ないでしょう。そんなこと気にしている場合じゃないし』 

『あのシエル様、かなり量が減っているに見えるのですが…』

『あぁ、どうせなら強いほうがいいかと思って、通常の3倍、大丈夫、もともとと元ジュース赤いし、あれ一本丸々飲むわけじゃないでしょ。だからそれも考えて』

『あ、あの、空人様。毎朝あれ一本飲み干していますけど。今朝は確認していませんが、おそらく今日も、彼は同じ行動の繰り返しですから、』

『ま、まぁ、たぶん10倍程度……』

『いや、いやいや、というよりですよ。それ300倍希釈ですよ!』

『キシャク?』

『薄めるという意味です、』

『つまり、どういう事?』

『いいですか、その薬は普通300倍の水に薄めて使用するんです。ただでさえ通常の10倍の量を飲んでいるんですよ!しかも300倍の濃度で!つまりは、』

『でも、私、いつもそのまま使っているけど、』

『それはドクトル様が調整されたものです!よく見てくださいラベルが違います!』

『やっべー、勝手に持ってきたから、ち、ちなみにどうなるの?』

『分かりません、過去に例がありません。ですが少なくとも目に見える変化として、あれには本人もその気にさせる、成分が入っています』

『つ、つまりは、』

『ムラムラしてきます』

『……いいんじゃないの、彼女のいない高校生なんてもともとそんなものじゃない?』

『普通ならその程度で済みますが少なくとも3000倍ですよ!目があった女性にいきなり襲い掛かったり、なんてことになれば、逮捕で人生終わりです!そんなことになれば、今よりもずっとまずい状況にだってなりかねませんよ!』

「きゃー遅刻遅刻」

T字路に差し掛かろうとする空人は単語帳を見つめ、前を見ていない。このままでは角から飛び出してくるパンを加えた女性に気づいていない。このままではぶつかってしまう

『ま、まずいです!この状況下で効果が!』

ぶつかってしまう。そう思われた時、空人は前も見ずに、交差点の手前で止まり、彼女を回避すると、まったく見ずに、何事もなかったかのように歩き出す。

『と、止まったわよ』

『どうしてわかったのでしょうか?蝉の声で、彼女の声など聞こえるはずも』

空人は慎重な男だ。彼女が来ることなど、道路に設置されたミラーで確認済みだ。前を見ていないように二人からしてみれば思えることだが、空人からしてみれば、手前の単語帳と、周りの景色を同時に見るなど当たり前だ。万が一ミラーを見落としていても、彼女の影で気づいている。

空人が自ら自覚する特技に人よりも複数のタスクを同時にこなすことに優れている。

目が二つ耳が二つ、口が一つ、手が二つ。本当にそれらを別々に使う事ができる。

また同時に常に同時に何かをする彼にとって、周りの状況の不測の事態に対応するなど単語帳を読んでいても、何もしていない普通の人よりも遥に最適な対応ができる。

角には常に通り魔が、家に帰れば強盗が、扉を開けば、死角に刺客が。

本気でこの日常でそういう警戒をしている。だからこそ、見ていないように見えて突然現れた彼女に気づくのも当然だ。

「パンを咥えている。走っているのに、呼吸しにくいだろ。それにまだ、7時前、あの制服うちの学校だが、何に遅刻する?時間もわからないバカか?」

とはいえこれ以上気にする必要はない。と単語帳に集中する。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ