挑発7
「すぐ未来に行ってぶっとばしてやりたい」
仁を殴りつつ、こぶしを鳴らす。
「だいたい、そのごにょごにょう王とかは、こいつらも一緒だろうが、なんで俺だけ、というか!どうしてその点のみで取り上げられる、あれかそれがステータスの基本か、最低条件か!ワールドワイドの価値観の統一の終着点か、俺はそのような低俗な価値観を断固否定する。人は理性と知性を持ってこそ、」
空人が熱くなり始めたところで、仁が呟く
「俺は違うぞ、現時点で、」
その言葉に空人は言葉を失い仁を見つめる、だが、仁は当たり前だろ、何言ってんだという表情だ。そして助けを求める様に、長治に視線を移す。すると長治は恥ずかしそうに
「わしは確かにそうじゃが、わしも彼女はおるからのう。いずれはそういう事も」
「は?」
これは夢か幻か
「俺の今は、すぐそこの大学生。長治は確か、メガネ委員だっけ、相手」
「図書委員じゃ、前にあったじゃろ、覚えておけ」
「あ、え、まさかうちのクラスのメガネにおさげで、人見知りで、余計に超目立つ、地味なあのメガネさんが!なんで!」
「お前、わしもさすがにわしの事なら怒らんが、麗華の事を馬鹿にするなら怒るぞ」
「え、あの子、そんな名前負けする名前なの!なんで!ありえないだろ!!」
仁は百歩譲っていい、顔はいいし、服装に髪型も調子に乗っている。だが、長治は……
「小学校からの幼馴染じゃ、家が隣で、中学の時から勉強を見てもらっておった。その縁で、その、何だ、高校に受かった時に告白されて、その、」
何だろうこの圧倒的敗北感、いや劣等感。それ以上に何だ、その設定は、あとそのなりでうじうじするんじゃねぇ、ぶっ飛ばすぞ。
「えぇ、そうですね。長治様の結婚は30近くになってからですが、今の彼女様とそのまま
仁様は、そのあと数人お付き合いされたそうですが、初めは学生結婚ですね。
その後、離婚してますがすぐに再婚されていますね」
「お主、その浮気性何とかせんか」
「浮気性じゃないよ。その時は本気だよ。俺二股はしたことない。たぶん全部俺の方がふれている気がする、それで別れたって知ったら次の子が声かけてると思う。今までもそうだし、たぶんだけど。でもそっか、遥さんとも別れるのか、結構好きなんだけどな」
知らない、こんな奴ら知らない、さては、ここは俺の知らない世界、そうかだからこそこんなわけのわからない奴が出てきて、そうかだったら元の世界に戻れるように、
「し、シエル様!まずいです。空人様が急速に力を、認識の範囲を広げようと、」
「ちょ、ちょっと何してんのよ」
「まずいですよ、まずいですよ。やはり接触は避けるべきでした。いかがいたしましょう」
「嫉妬か見苦しいな」
「別に俺はそんなんじゃ!」
空人の纏う危険な雰囲気が、強まる。図星だ。今までにない敗北感に感情を処理できない。
人の感情などと吐き捨てる空人だが、自分と同類だと思っていた二人が、
「嫉妬、そうか!だ、大丈夫です。風上空人!彼らには確かに将来の伴侶がいますが、それでも、あなたを止めるために、お二人とも家族を捨てて、あなたを止めるために立ち上がります。大丈夫!あなたへの愛のほうが深いです」
「……ちょっとシエル様!何言ってんですか!」
「え、だって嫉妬だって、」
「そういう意味じゃありませんよ」
「家族を捨てるって、じゃあ何、俺たちこいつのせいで将来、最後の時も奥さんと一緒にいられずに、こいつを止めるために死ぬの?」
「はい、私たちと行動を共にしてからですから最後の2年は、その間に空人様が世界の通信交通手段を奪ってしまいますので、奥方がどうなったかは知りません。ですがおそらく、」
怒れる空人を冷たい目で仁と長治が見つめる。
「俺、お前の友達止めよっかな、」
「わしも、せっかく手にした幸せをお前のせいで、」
「えっと、その、なんかごめん」
空人が冷静に戻ると、力の覚醒が急速に収まっていく。




