挑発4
「もし、そんな状況にないのだとしても、あなたがそうなってしまった最大の原因は、孤独、誰もあなたを止められなかった事にあります。妹君は例外ですが、あなたの場合、ご両親もご友人も特別にはなりえない。誰にも理解を求めず、誰にも知られず、ただその一人でその狂気を高めていった。人は出会いで良くも悪くも変わる。
でも、あなたはそこから先の人生誰とも出会う事なく、たった一人でその世界を完成させていく。それが最大の間違い。特別な存在がいない。たった一人の世界。
だからこそ特別な存在を作ることでしかあなたの未来は変えられない。
外的要因なしには、この問題は解決しません。一人だと結局そうなります。
でも、だからと言ってあなたの場合、決して与えられた人間関係では変わらない。
恵まれていてもそれを放棄するような性格、だからこそ自分から求める必要がある。
誰かと一緒にいたい、その人と分かり合いたい。
理解してくれる人が、あなたが大切にできる人が、
あなたは大きな愛は知っている。この星の全てを助けたいという大きな愛は、でも結果それが世界を滅ぼした。だからあなたは人間としての愛を知らなくちゃいけない」
「別に恋人でなくても良いのですよ、家族で会ってもご友人で会っても、ですが空人様。あなたはご自分の悩みを弱さをお二人やご両親、妹君にさらけ出せますか」
「ありえないな、なぜなら、俺は悩みもなければ弱さを他人に見せて慰めてもらうような軟弱な精神を持ってはいない。個人の感情など自分で処理しろ」
「ね、絶望的でしょ。それが分かっているからこそのまだ彼の概念の中にない、自分で好きになった恋人が可能性があるのよ」
「あのー質問。もう面倒だから、空人を殺しちゃえば早いんじゃないの?」
「残念ながらそれではダメなのです。私たちがいる未来では彼は世界の中心、歴史の胎動のど真ん中にいます。それが失われるという事は歴史の軸が失われるという事どのような影響が出るか分かりません。
本来であればこうして彼が自分自身の未来を知ることも望ましくはありません。ですが、私たちがこの時代に来たことで、すでにその影響は出ている。
ならばこうして直接話して協力をと考えているのですが、その表情、難しいようですね」
「……別に協力しないとは言っていない。だが、言いなりになるというのは気に入らない。
だから確認する最近のトラブルの原因は俺に恋人を作らせる為にお前らがやったことか」
それは、と一考する二人であったが、こちらの表情で既に結論付けられている。今までの事もあり下手な嘘は逆効果と、怒らないことを約束させ、ありのままを離すことを決める。
「というわけでして、ぐうz年の出会いは未来の出会いも今に集中していますそれこそ1年、いや半年以内に恋人を作っていただかなければ絶望的といいますか、」
「人の人生を好き勝手に、だいたいなんでお前たちの間では俺に恋人ができないことが確定的になっている。たとえお前たちの未来でそうだとしてもそれこそお前たちが言うように今の俺はまだその未来が確定ではないのだろう。だったらどうしておとなしく見守るや、最初に相談することをしなかった。それに俺もその気になれば恋人の一人や二人くらい」
「無理」
「まぁ、無理じゃな」
「ですよねぇ」
仁も、長治も即答することに若干イラッと来る。
「いいか、俺は興味がないだけで、作る気かないだけで、」
「すぐに作れるとでも?無理だよ、無理、確かにお前にはその気はないけどその気になっても無理。いいか、お前、顔もいいし、頭もいい、スポーツもまぁできる。だが、それを補って余りある程、性格が最悪だ。いいか、性格が悪いんじゃない。最悪なんだ」
「お前、」
「私たちもそう判断し、このような手段をとりました。集中的に身の回りで出会いが続けば彼もその気になるのでは、そうでもしなければ出会いは絶望的でしたから、」
「雲をつかむとはまさにこのこと、でもこれしか私たちに残された方法は、」
「お主らも苦労しとるのぅ」
「だからなんでお前たちは俺を決めつける。いい加減にしろ」
「よく観察している。まっとうな判断だと思うぞ」
「いえ、観察もしているのですが、私たちは一応分化したとはいえ、元はこの星の根源意志、特にセフィラは知識をつかさどる存在でしたから、こういうものが、」
そういうとセフィラが読めない文字が記された。紙を顕現させる。
「これは?」
「人の確定している事項のみを表示することができる私の力の一つです。要はここに書いていることが現時点でのその人の履歴書、考察報告。未来の空人様には通用しませんが今の苦様ならこちらが有効でして、一種の取扱説明書と思っていただければよろしいかと、観察結果とこれを見てこのような手段を取らせていただきました」
「なんて書いてあるんじゃ?」
「そうですね。これは蛮田長治様の物になります。読んでもよろしいでしょうか?」
「わしの説明書か、気になるのう、変なことは書いておらんじゃろうな」
「いいじゃないか、面白そうだ」