天使捕獲作戦2
「どこに行くつもりかしら」
「さぁ、わたくしが見ている中でもご友人とどこかに行くのはこれが初めてですね。いかがいたしますか?とりあえず、つけますか」
二人は空人に見つからないように距離を空けて追跡を行う。
電車に乗り、やって来たのは繁華街、空人は予約していたゲームを電気店で受取り、、その後も繁華街のお店を転々とまわる、服屋に、雑貨屋、本屋。
平日の放課後にも関わらず、目的を決め、平均来店時間5分未満の、直線的な動きしかできない空人からしてみれば異常なウインドウショッピング
途中、薬の効果により何度か女性との出会いがあるもそのことごとくを見事に回避して、19時を過ぎた頃3人はゲームセンターの中に入っていく。
そして連れまわされ、飽き飽きしている仁と長治が後ろの椅子に座る中、空人は初めてのリズムゲームの初級でゲームオーバーになりながらコンテニューをしてゲームを続ける。
「確かに変だな」
「それは、そうじゃろ、そもそも空人と遊びに行く事自体、」
「いや、そうじゃなくて、俺たち3人でいて、ここまで何度か女の子が話しかけてきてくれた。でも、そのことごとくが俺じゃなくて、空人に、ありえない。しかも可愛い子」
「なんじゃい、それは?」
「いや、冗談じゃなくて、普通あんな目つきと恰好しているやつに話しかけるか?
しかも俺は一度もその間話しかけられなかった、これも異常」
「お前、」
「だが、事実だ。っと、空人」
仁はポケットに突っ込んだ手で携帯の振動を確認すると、立ち上がり、本気で熱中し始める空人に話しかける。
「来たぞ、とりあえず、連れション、行くぞ」
空人はその言葉に手を止め振り返る。
「出てきましたよ。今度はどこに行くつもりでしょうか」
「それにしても気に入らないわね」
「何がですか?」
「別にあの子たちだけじゃないけど、こんな時間に子供が、こんな良くないものがある場所に、キューピッドの私がいう事じゃないけど、もっと健全な出会いや交際ができないものかしら、彼らにだって家族がいるでしょう、夕食くらいは家族でとりなさいよ」
「それは酷な話です。この国の家族は希薄で一緒にいるのが当たり前というものでもありません。大人になるにしたがって家族よりも、友達、恋人そういうものです。それに例えばあの子、あの子は家に帰っても食事は用意されていません。
ずっと小さいころからそうです。用意されているのは1000円札、好きなものを食べてね、せめてもの忙しい親の愛情ですが、それが正しいものとは思えません。
一人でとる出来合いの食事よりはせめて友達と一緒に、あの子の心のよりどこはすでにご両親ではなく、あの友達です」
「これだけ人と物に溢れているからこそ、ね」
「そういう意味では、この時代に生きる人たちもまた愛される事を渇望する。
昔から何も変わらない人の営みです。むしろ少し前よりもいい傾向だとは言えます。
今の子供たちは必要以上の富や名誉に興味はありません。
当たり前に生きて分相応に苦労する。遊ぶために、友達と愛する人と一緒に、
物から心に価値観が戻りつつある時です。只今はその過渡期、心の隙間に付け入る悪い大人たちに利用されたり、過度のコミュニケーションの重視の価値観に飲まれ、ストレスや、逆に対人恐怖を患ったりと、まだまだ人の心の進化、価値観の変化に社会がついていけていない状況にあります」
「そういう状況で、彼はあぁ、なってしまった。人は孤独に勝ってはいけないのに」
「社会を変えれば、あるいは、しかしそんなことは私たちにはできません。さぁ、行きましょう、どんどん細い道に入っています。見失ってしまいますよ」
二人が町を見下ろしている間に三人はメインストリートを外れ、どんどん暗く細い裏路地へと進んでいく、そこはサラリーマンが散見される飲み屋街。この先に何がある。
通路が狭く視認性が低いため、次第に二人が距離を詰めていく。
そして、繁華街のビル群を抜けたマンションが立ち並ぶコインパーキングの前で三人は足を止め、動く気配がない。
「誰かと待ち合わせ、ですかね?ずっと携帯で誰かと話しているようでしたが、」
「わざわざこんなところで?何よ、あの子、犯罪は絶対に許さないって説明書に書いてあったでしょ。これじゃまるで犯罪者みたいな感じよ」
「そうですね。あ、誰か来ました」