天使捕獲作戦1
彼らが身を寄せ、この周りに聞こえるはずもない場所で密談をしている様子シエルとセフィラとは双眼鏡で観察している。
「昼休みに柔道場の横で男三人、まったく色気がありませんね」
「薬の効果、はあるんだけど成果は全くなしね。周りの人が可哀想、私かなりの罪悪感が、」
「本来であればラッキースケベ的なものもあるかと思いますが、空人様はいつも神経過敏で、行動一つ一つに抜かりがありませんので、思わず、やつい、が起こりえなかった。すべて事前に回避されていますね」
「その結果が、あの事故パターンばっかり、だいたいどういう事なのよ。あの薬本人にもその気にさせるものが入っているんじゃないの?」
「そのはずなのですがね。もしかしたら、馬鹿が風邪をひかないのは馬鹿なので自分が今風になっているということを気付かない。そんな感じで、空人様は今までにそのような感情を持ったことがないために自分自身で欲情を認識できていないのではないでしょうか?」
「そんなことありうるわけ?」
「普通は考えられませんが、四六時中眉間にしわを寄せて、ストレスフリーな方ですよ。常識は通用しません、ましてやのちに本当に人間の価値観を喪失するわけですし。その兆候が最初かあるということも考えられます。あ、話が終わったみたいですよ」
「マジでやるの?いつ?」
「今日だ。言っておくがお前らに選択の余地はない」
「わしは構わんが、仁は約束があるんじゃなかったか?」
「断れ、」
「慣れてても、お前マジで時々本気でイラッと来るよな」
「それで貸し借りなしだ。何のために今までとっておいていたと思う」
「わかったよ」
空人たちはその後、何事もなかったように教室に戻り、いつもの様に授業を受ける。
そして放課後、
「シエル様、あれ」
セフィラに言われ双眼鏡で空人宅を覗くと、そこには私服に着替えた仁と長治が玄関の呼び鈴を鳴らしている。
「昼間の話し合いは遊ぶ約束だったのでしょうか。あ、出てきましたよ」
ドアが開くと、父親のティアドロップ型のサングラスに、パーカーに黒の刺しゅう入りのジャージを履いた空人が現れる。
「マジかよ、勘弁してくれよ」
その姿を見た仁が頭を抱え、座り込む
「空人よ。いくら見かけを気にしないとはいえ限度があるじゃろ」
「いつも制服のお前に言われたくない」
「これは校則じゃ、私服も持っておる」
「とにかく、行くぞ、」
「やっぱなかったことにできない?俺、学生服と変態と一緒に歩きたくないんだどけど」
「却下だ、行くぞ」
と、空人は後方も確認せずに、二人を置いてさっさと歩いていく。