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人肉食用

作者: 黒木 司

家畜なんてのに普通は同情なんてしない。

例え、『人間』だとしても……

今から近未来の話。


 私達は二十歳になると人間に食べられる。


「私の将来の夢は『食料』となって、みんなの口に運ばれることです。」


 画面の向こうには私が幼稚園の時に皆の前で発表していた映像が流れていた。

 今から近い未来、地球が飢饉に襲われる。先代の人間がやらかした地球的破壊行為が原因らしい。

 それを救うのは私のような『人の形をした食肉』だ。

 …そもそも人間の肉を食べても大丈夫なのかって意見が出そうだが、私達は“そういう遺伝子”なのだ。


『あなたは食べられるために生まれてきたのよ。』


 私が生まれて、まだ物心がついたばかりの時から、その言葉を言われ続た。


 私達は二十歳になると人間に食べられる……。


 判断力…と言うより知識の足りなかった当時の私はその意味を知らずに、それが当たり前だと思い育った。


 しかし、知識をつければつけるほど“その意味”を嫌でも知ることになる。

 ……いや、環境自体が普通とは違ってくるのだ。


 その異変に気づいたのは中学に上がる前。

 私達『食肉』は大切な『食料』だから過剰なほどの保護を受け、普通の人間から教室を隔離された。給食まで『食肉用』の物に変わった。

 無論、周りからは奇異な目で見られたり、好奇な目で見られたりした。

 時には人間から心ないイジメも受けた(発覚後、イジメた人間が学校から姿を消した)。


 人間とは違う。

 存在意義も、価値も、夢も、未来も、何もかも。

 そもそも『私』とは何か?

 本当に分からない。


 そのまま私は空っぽの人生を、味の切れたガムを噛むように無意味に消化した。

 決まった未来に、変えられない未来に、一体何の価値があるのか?

 私は『私』を見失った。


 だが、私に転機が訪れた。

 いわゆる“一目惚れ”だろうか。


 私は人知れず彼に恋をした。

 自分の本当の正体を知ってから何事にも考えを裂かなかった私が普通の男に恋をした。

 ただ、彼は『人間』。

 私は、二十歳になると誰かに食べられる『食肉』。


 私と彼に対するあまりにものの『それ』が私の恋の妨害する。

 好きなのに触れられない許されない恋。

 彼の側にいたいのにいられない。彼と一緒に過ごしたいのに過ごせない。彼と一緒に話したいのに話せない。彼と一緒に触れ合いたいのに触れられない。彼と一緒になりたいのに━━━━


 ……私は『食用』。


 彼と一緒なんかには…………






「ああ、そっか。」


 私はビデオの電源を落とした。画面の光で照らされていた部屋はたちまち暗くなる。






ざくり




     ぐちゃ




ぐちぐち









『もしもし、ドクター?』

「ああ、世値ちゃん?久しぶり。」

『こんばんはです、ドクター・レイナ。』

「あれ?世値ちゃんから電話が来るってことは観測は終わったの?」

『はい、実験体123528は食用として役割を果たしました。』

「……ってことは……ひーふーみー……おお、14年でも大丈夫だったんだ?」

『おそらく今までで一番早くに食べられた実験体でしょう。』

「すごいね~。今までは18年がハイスコアだったのに。で、味は?」

『「旨い。」と食した者は言っておりました。』

「ふーん…いいな。」

『ちなみに食した者は一般男性の14歳です。』

「ほー同い年か。こりゃ『恋』が絡んでるかな?」

『おそらく……「『恋』をさせれば早熟になる」とレポートにまとめときますか?』

「いや、別にいいよ。ただ実験台123528も皮肉だな。」

『……。』

「『アレ』を口に含むとたちまち食した者の遺伝子に異常を叩き出して『食用遺伝子』になるんだからね。」

『……だから、彼も……。』

「よし、世値ちゃん。彼に123529の実験体になってもらおう。“莫大に増えた人類を絶滅させる”第一歩だ♪」



END

最後まで、お付き合いいただき、ありがとうございます。

実はケータイのメール作成機能で幾つかの作品を(自己満足w)書いているのですが、初投稿だけにあり、自分の中で一番の力作を投稿しました。……楽しんでいただけたら幸いです。(……すごい力不足を感じる)

さてはて、この話なんですが、この話を作ったキッカケは友人とのお喋りで『人って増えすぎたよねww』みたいな風になり、『殺すと死体が出るから嫌だな』『じゃあ、喰っちゃえば?飢饉時みたいにww』って感じで作っちゃいました。

先代がやらかした事は想像に任せますが、まぁ、地球環境問題とも考えてもw

実はドクター・レイナが(実験の為に)仕組んだとも解釈しても大丈夫です。想像に任せます。

では最後に登場人物を紹介


『人肉食用』キャスト


エト(山田 干支)

   実験体123528


産まれた瞬間から「食用」として育てられてきた

誕生から14年と6ヶ月でマツダニに食べられる

『人肉食用』

(当時14歳・中学2年)



マツダニ(松谷)


肥満、大食い、自己中心の人間を嫌う

中学2年の時に人肉実験体123528を食べる

『人肉食用』

(当時14歳・中学2年)



セチ(華橋 世値)

   実験体000001


人肉食用の観測者

人肉食用の自殺防止とレポートを作っている

人肉食用の第一号で唯一の生き残り

元は「人肉食用ウイルス」開発者の助手をしてたものの、実験体が足らず彼女でも実験を行い、初めてリンクした

人肉食用にも感情的になれる

数多の実験から15歳から成長、老化が止まってしまった

『人肉食用』

(当時56歳・助手/実験体)



ドクターレイナ(華橋 麗那)


「人肉食用ウイルス」の開発者

セチにファミリーネームを与えた

莫大に増えた人口を消したいと思ってる

すでに人肉を口にしている

『人肉食用ウイルス』を開発してから人前に姿を表さなくなった

無機質な物が大好き

24歳の時から自身の肉体も朽ちない物にしている

『人肉食用』

(当時73歳・研者)


最後まで、お付き合いいただき、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 面白かったです。 食べた者が、また同じような肉に変わってしまうという要素にもしびれました。 現実に無理矢理置き換えるなら、 とある豚肉を食べた人間が豚になるとかそんな感じですかね。 自分は…
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