(2)
「おつかれー」
キギフィは私のそんな気持ちをさらさら知ることなく(知ったら私は自害する)、のんきに声をかけてくる。
「少しは隠したらどう? 前をタオルかなにかで」
主に私の女としてのプライドと、どうしたって見てしまう美に対して、気を使っていただきたい。
「いーじゃん、セクシャルはイーブンなんだし」
「あなた、わざと難しい言葉使ってない?」
「まあそれはそれとして」
華麗に無視するなし。
「なんか今回も、私たちが一番だったみたいだね」
「私たち、じゃないでしょう。あなたが一番なんでしょう」
そう。
ユーゲントは、競争性を重んじる。
当然の話、たとえば義務教育のように「誰でも入れて、誰でも卒業できる」では、戦闘員育成機関として、意味がない。
もっとも、競争に破れたからといって、クズ扱いされることはない。ただ、黙って「出ていく」ことを求められるだけだ。
GMP3に、世界最強に憧れて、このユーゲントに入学してきた少年少女は、それでもいいだろう。ただ、己の才能が乏しかっただけだ。であっても、ユーゲントに入学できた、というだけで、民間の警備会社などでは、引く手あまただ。
「よかったね、いんちょ。がんばった甲斐があったというもんじゃない」
「……そうね」
その言葉には、素直にうなずく。
でも、私たちは、そうしなかったら、生きていけないのだ。
ユーゲントは、孤児をスカウトし、ひとつの戦闘機械として育成する、というのもある。
それは非人道的ではないか? と目する「安全圏」の人間はいうだろう。だが、孤児にとっては、それまで生きてきた世界のほうが、よほど非人道的なのだ。
誰にも頼るところがない。頼るひとがいない。まして、自分に力がない。
だったら、力をつけてくれるところが、自分をスカウトしてくれる、となったらーーそれは、いくだろう。
実は、私とキギフィは、そんな「孤児組」の人間であった。
この国--イースタ、と呼ばれる国だ。この国は、非常に「戦」というものが、近い。要するに軍事国家なわけだが。だがそれを最大限に生かした経済政策でもって、国土の貧相さを、かなりの部分カバーしている。
しかし戦が多いということは、治安安定のために、それ相応の武力が必要ということで……いつの間にか、その鉄火場国家は、世界最強の特殊部隊、というものを、国家ぐるみで作り上げてしまった。
それが、GMP3である。
私も、キギフィも、ほかの孤児組も、GMP3本隊に昇格しないことには、また「あれ」に戻らないといけないのだ。
誰からも祝福されない世界、生活に。
今回、ミッションで高得点を悠々ととった私とキギフィは、またひとつ、本隊昇格のキップを手に入れた。
けして、
「よかったね、よかったね、あの生活にもどりたくないものね、もうあんなのはイヤだものね、がんばろうね」
みたいな、ベタベタしたセンチメンタルで、この子となれ合っているわけではない。
むしろ、そういった奴は、さっさと脱落していく。
ユーゲントとは、そういうところだ。




