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 「おつかれー」

 キギフィは私のそんな気持ちをさらさら知ることなく(知ったら私は自害する)、のんきに声をかけてくる。

 「少しは隠したらどう? 前をタオルかなにかで」

 主に私の女としてのプライドと、どうしたって見てしまう美に対して、気を使っていただきたい。

 「いーじゃん、セクシャルはイーブンなんだし」

 「あなた、わざと難しい言葉使ってない?」

 「まあそれはそれとして」

 華麗に無視するなし。

 

 「なんか今回も、私たちが一番だったみたいだね」

 「私たち、じゃないでしょう。あなたが一番なんでしょう」


 そう。

 ユーゲントは、競争性を重んじる。

 当然の話、たとえば義務教育のように「誰でも入れて、誰でも卒業できる」では、戦闘員育成機関として、意味がない。

 もっとも、競争に破れたからといって、クズ扱いされることはない。ただ、黙って「出ていく」ことを求められるだけだ。

 

 GMP3に、世界最強に憧れて、このユーゲントに入学してきた少年少女は、それでもいいだろう。ただ、己の才能が乏しかっただけだ。であっても、ユーゲントに入学できた、というだけで、民間の警備会社などでは、引く手あまただ。


 「よかったね、いんちょ。がんばった甲斐があったというもんじゃない」

 「……そうね」

 その言葉には、素直にうなずく。

 でも、私たちは、そうしなかったら、生きていけないのだ。


 ユーゲントは、孤児をスカウトし、ひとつの戦闘機械として育成する、というのもある。

 それは非人道的ではないか? と目する「安全圏」の人間はいうだろう。だが、孤児にとっては、それまで生きてきた世界のほうが、よほど非人道的なのだ。

 誰にも頼るところがない。頼るひとがいない。まして、自分に力がない。

 だったら、力をつけてくれるところが、自分をスカウトしてくれる、となったらーーそれは、いくだろう。


 実は、私とキギフィは、そんな「孤児組」の人間であった。

 この国--イースタ、と呼ばれる国だ。この国は、非常に「戦」というものが、近い。要するに軍事国家なわけだが。だがそれを最大限に生かした経済政策でもって、国土の貧相さを、かなりの部分カバーしている。

 しかし戦が多いということは、治安安定のために、それ相応の武力が必要ということで……いつの間にか、その鉄火場国家は、世界最強の特殊部隊、というものを、国家ぐるみで作り上げてしまった。

 

 それが、GMP3である。


 私も、キギフィも、ほかの孤児組も、GMP3本隊に昇格しないことには、また「あれ」に戻らないといけないのだ。

 誰からも祝福されない世界、生活に。

 今回、ミッションで高得点を悠々ととった私とキギフィは、またひとつ、本隊昇格のキップを手に入れた。


 けして、

 「よかったね、よかったね、あの生活にもどりたくないものね、もうあんなのはイヤだものね、がんばろうね」

 みたいな、ベタベタしたセンチメンタルで、この子となれ合っているわけではない。

 むしろ、そういった奴は、さっさと脱落していく。


 ユーゲントとは、そういうところだ。


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