●謎2 文と武、そして美とはなにか
まだまだ、いんちょー視点です。
さぁぁぁぁっ、と、シャワーの音と、湯気が一面に。真っ白に。
けれども私たち特殊部隊の人間は、その煙幕を通り越して、そこにいる人間の形を見ることができる。これもまた、五感のとぎすましである。
それをふまえて聞いてほしい。
……なんだろう、あの美しすぎる裸身は。
ゆるやかにウェーブを描く金髪が、流れる湯をはじく。
「いますぐにハグでもしたい! けど力入れすぎたら壊れそう、けど、ええいむしろいっそ壊してやろうか」的なヨコシマな感情を抱くほどの、細く、細く、柔らかそうで、白い肌、体つき。私はヘンタイか。
目をじっと閉じて、湯浴みをしているその姿。
胸の大きさは下品でなく、下半身のスタイルも均整がとれている。レースクイーンにも、娼婦にも、深窓の令嬢にもたどり着くことができない、神の造形たるその裸身。
ああ、バランスがとれているということは、これだけですでに「美」なのか。
やわらかそう。しゅっと引き締まった姿は抱き心地がよさそう。髪からすっごいいい匂いがしそう。
ということを、キギフィのシャワー姿をチラ見しながら思った。私はヘンタイかっ。
今日はシャワー室にいるのは、私とキギフィだけなのだが、いつも同姓のみんなは、キギフィをチラ見している。ヘンタイは私だけではなかったんだ……。
いやいや、安堵してどうするのだ。私はあの子が嫌いなんだから。
これはあれである。普遍的美、というものだ。
とにかく、要するに、キギフィは、美少女なのだ。
ユーゲントの、ギーク・ナード的な班(諜報部とか)は、オタク趣味ということでいつも「画面の中から嫁がでてこねえかな」みたいな戯れ言(狂った妄想である)を言っているが、そんなことを言わなくても、もうここにいるではないか、との思いを強くする。
とは言うものの、私はこの娘が嫌いである。規律というものを重視しないし、やる気があるのだかないんだかわからないし。そう、真剣見というのが足りないのだ、この子には。
いらだたしい。それなのに、才能ひとつとれば、この子の方が段違い。
それでいて、この美貌、どうしたものか、と思う。
きゅっ、とシャワーを締め、キギフィは髪をかきあげる。裸身が上向きになり、美しいうなじが大変に魅力的である。神々しい。
……はぁ。
嫌いなはずなのに、こうして、目が、なんだかんだで離せないのである。私が悪いわけではない。この子が、そもそも美しいから悪いのだ。