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五人の『覚醒者』は異世界へ~五つの物語~  作者: オルレアンの人
最終章『転生軍人』

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53.決して外さない


「コホン、リーダー....そろそろ僕の事も紹介してくれないかね?」


 そうマルコシアスに向かって口を開いたのは、フクロウだ。


「ああ、タカハシさん。紹介しとくとこいつは『ストラス』、うちの村1番の知恵者だ。剣の腕もそこそこあって戦士隊の頼れる副リーダー。ちなみに王冠被ってるが別に王だとかじゃないぞ」

「王冠はどんな衣装にも合う究極の美だぞ。それよりもタカハシ君、君のその手に持つそれ、もっと近くで見せてくれないかね?というか触らせてくれないかね?」


 そう言ってフクロウ......ストラスは私が先ほど取り出した水の入ったプラスチック製の水筒を指を刺す。

 できれば渡したくないが、友好的に接するためには致し方なく、ストラスに水筒を渡す。


「ほぉー........!革製ではない水筒......見たことのない素材で作られておるな...!!人間世界ではこんなのが出回っておるのか......!」


 剣や弓で戦ってるあたり、やはりここは中世前期あたりの文明世界。

 当然プラスチックなど存在しないか。


「タカハシ君!よければこの水筒、私に譲ってはくれないかね?」


 私の水筒をくまなく触り、隅々まで見たストラスはそんな事を言い始める。

 当然だがこれは私物ではなく軍の支給品、緊急事態でない限り一般人に渡す事は許されない。


「申し訳ない、これは国から渡された物。おいそれと譲るわけにはいかない」


 私は丁寧に断るが、ストラスは食い下がってくる。


「ほぉ....君、さっき危機的状況の様に見えたが、それを助けたのは僕たちなのはわかっているかね?ならば褒美として何か渡してく...痛っ!」


 喋っている途中でストラスは横から殴られた。

 殴ったのは猫......消去法で『レラジェ』って名前の奴だ。


「いきなり何をするのかねレラ...「そうやってすぐあれこれ理由つけて物を奪う癖、いい加減治しなさい」


 すぐにストラスが怒るが、その言葉はレラジェに遮られ逆に叱られた。


「こっちも紹介すると名...「私はレラジェ、よろしくタカハシさん」


 レラジェは、自分を紹介しようとしていたマルコシアスを無視して私に挨拶する。


「あぁ、よろ...「はい握手握手」


 私の挨拶は聞かず、私の右手を強引に握り、握手が交わされた。

 人並みサイズの手にそれ相応の大きさの肉球があり、すごいぷにぷにと感触を感じる。


「彼女は村一...「私は村一番の狩人、狩りや弓での戦闘なら村で私に勝てる者はいないわ」

「それと彼女...「戦闘で使う私の矢には毒が塗ってあるから、間違っても矢傷に触れないでね」

「......うん」


 マルコシアスは言いたかったであろう事を全てレラジェに先に言われたからか、少し悲しそうな顔をしている。


 (しかし毒.....あまり褒められた物じゃないが、まぁ...この世界に私がいた世界のルールなど持ち出せないしな)


「......とりあえずこんな所で話してるのもあれだ、よければ俺らの村に来ないか?」


 立ち直ったマルコシアスは私に願ってもない提案をしてきた。


「ありがたい、ぜひお邪魔させて......」

 会話に気を取られ、今気付いた。

 マルコシアス達の背後に巨大な影が立っていた。


 それは、ストラスに切られ倒れたはずの巨体生物....ゴブリンの姿だ。


「マルコシアス!!座って肩貸せッ!!!」

「っ!?お、おう!!」


 私は即座に腕を銃に変え、丁度いい高さの姿勢に座ったマルコシアスの右肩に乗せ、奴の頭に狙いをつける。


「んっ!?ゴブリンオーガ!まだ生きてた!」

「くっ、私の剣で確かにトドメを刺したと思ったが、相変わらずの生命力だね!!」


 ゴブリン....オーガ?にようやく気付いたレラジェとストラスは、剣と弓をそれぞれ構え戦おうとするも、それより早くゴブリンオーガは斧をストラスに向けて振ろうとしていた。


「っく!!間に合わん!!!」


 狙いは自分と気付いたストラスは、咄嗟に回避しようとし、レラジェは矢を筒から急いで取り出そうとしていたが、斧の迫る速度を考えるととても間に合わない。


 だが、一瞬早く気付けた私の方が......早い。


「そこだ...」


 私は冷静にトリガーを引き、弾を放つ。

 再び洞窟内に閃光と銃声が響き、弾丸は目標目掛けて飛んでいく。

 肩に乗せたことで安定性は確保し、目眩も多少マシになった....のなら決して外さない。

 私の放った弾は奴の頭に命中し、弾が直撃した箇所の反対側から、弾と共に奴の血飛沫が飛んだ。


 斧はストラスを掠め、そのまま手から離れ落ちる。

 ゴブリンオーガを今度こそ確実に仕留め、奴は再び倒れた。

 奴の重たい倒れる音はしばし空間を静寂に包み、洞窟の最深部を本来の静けさが支配する。

 肩に私の腕の銃を乗せているマルコシアスも、ゴブリンオーガが倒れた姿を見て口を開けたまま硬直している。


 次に音を発した者は、私だった。

 弾を放った瞬間、再度頭に衝撃が走り、いよいよ限界が来てしまった様で、意識をほぼ失い後ろへ倒れてしまう。


「....!!タカハシさん!」

「な......なに今の......一瞬....とんでもない......音と光が....」

「彼がやったのか....?タカハシ君.....」

「すぐに応急処置を....!!!」


 薄れゆく意識の中、彼らの声が最後に聞こえた......。


登場人物

【マルコシアス(男)】

狼の顔を持つ戦士隊のリーダー、欺瞞を嫌う正直者で180cmの長身の獣人。剣士系のスキルを主に習得している。


【レラジェ(女)】

猫の顔を持つ弓使いの獣人、森林での戦いを得意とする。スキルで矢を強化しており、彼女の矢の攻撃を受けると傷が壊死して治らない.....が、<ヒール>で対応可能。


【ストラス(男)】

フクロウの顔を持つ戦士隊副リーダー、体に羽が生えているが飛ぶ事はできない。王冠に強い美を感じ常に頭に乗せている。知識に優れポーション作成を得意とし、自身の知らない技術や物に強い関心がある。

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