50.最奥
先の戦いから2分経過し、再び洞窟の中を私は歩いている。
先程の奴の行動を見るに、奥にはまだ奴らの仲間がいるはずだ。
どれほどいるのか、こいつらを生み出した覚醒者かリーダー的存在がいるのか警戒しつつ、私は考え事をしていた。
ここが異世界だと仮定して、そもそも人はいるのか?
確か自称女神の話では魔王によって虐げられてる筈だったが、緑色の人型生物に人並みサイズの狼人間がいるこの世界で人間は生き残れるほどの力があるのか?
銃という生態系のトップに立てる道具があれば可能だろうが、恐らくこの世界には存在しない。
いくら先の緑色の人型生物の知能が低いとは言え、銃の知識があればそれに対策するだけの事はするだろう。
洞窟を歩いている最中に矢の刺さった木の板の盾が何個かあったが、あれは弓矢対策と思われる盾であり、銃への対策は全く無かった。
となれば知らないか存在しないのどちらかだろう。
人間は一体どうやって生き延びているんだ。
仮にいたとしても文明レベルは良くて中世前期くらいか、さらに低いか......よそ者の私を受け入れてくれればいいが。
私が頭を悩ませていると、目の前にまた開けた空間が見えた。
慎重に中を見ると、異様な存在を目視した。
奥にある松明の光が何者かの背中を映している、はっきりとは見えないが明らかにデカい。
そしてさらに奥の松明の光は、進むべき方向に壁を映し出しており、何処かに抜け道などが無ければここが最奥と理解した。
中にいるのは1匹のみであり、さっきまでの小さい人型生物の姿は見当たらない......奴が覚醒者か、それとも人型生物の主人か。
背中しか見えないが、明らかにさっきの奴らよりも危険な存在だ。
だが奴しかいないのなら、奴を尋問するしかない。
私はゆっくりと動き出す。
奴にバレない様......間違っても音を出さず......慎重に.........。
ガンッ!!
背後から突如、頭を固い何かで殴られた。
「ぐ....!?」と、突然の衝撃に少し声が出ながら倒れ、頭を抑え背後を見ると、武器を持つ先程の緑色の人型生物が16匹立っていた。
目の前の巨体生物に気を取られ、背後を油断してしまった。
その集団は防寒服を身に着けているあたり、狩りにでも行っており、巣に戻ってきて異変に気づいたのだろう。
斧や弓を持っており、そして私を殴ったであろう先頭の奴は木製の棍棒を手にしていた。
刃物や斧で斬られなかったのは不幸中の幸いだったが、頭は頭蓋が割れた様なズキズキとした痛みを起こしている。
一滴....また一滴と頭から血がポツポツと地面に流れ落ちた。
私が痛みに耐えながら何とか立ち上がろうとすると、先頭に立つ人型生物が突然叫び声を上げた。
私に向かって叫んでいるわけではない、奥の巨体生物に向かって声を響かせている。
私が再び前方を見ると、背中を見せている巨体は動き出し、ゆっくりとこちらを振り返る。
そいつは人型なうえ肌の色が緑色で後ろの生物とほぼ一緒だが、その体の大きさは私をひと回り超え、人など簡単に真っ二つにできるであろう巨大な斧を持っていた。
私と目が合うと、こちらにゆっくりと近づいてくる。
「シンニュウシャ......ヨンニン......コロシテル」
背後の奴らが巨体生物に私の事を報告し始める。
しかし巨体生物の方は何も言わず、ただ聞いているだけだ。
見ればわかる事だが、奴がこいつらの主人で間違いなさそうだ。
完全に挟み撃ちの状況......このままでは確実に死ぬな。




