45.日本国自衛軍
西暦1999年
世界各地に突如として『力』を持つ、通称『覚醒者』が出現した。
一部の覚醒者はその『力』を悪事に利用、世界中で争いが頻発し、ある国では政府機能が麻痺する甚大な被害をもたらした。
日本でも警察や軍が、暴れる覚醒者の対処に追われ、膨大な数の覚醒者を取り締まり、処分してきた。
しかしそれも昔の話だ。
西暦2031年
覚醒者による犯罪率は昔に比べ減っていた。
それは、警察と日本国自衛軍にそれぞれ作られた『対覚醒者部隊』の働きの結果だ。
警察の対覚醒者機動隊は、銃を扱う特殊訓練を受けた者で構成されており、軍の対覚醒者部隊は国に属する覚醒者で構成されている。
私はそんな自衛軍の対覚醒者部隊に所属していた。
今まで様々な覚醒者を逮捕、殺害をしてきた。
『合成』、無機物同士を合成することができるらしく、我々が理解できない未知の兵器を作り出し、『力』を持たない犯罪者にばら撒き国を荒らした。
警察と軍が協力し、ついに捕え死刑を執行する。
『幻覚』、人の目を騙す幻覚を作り出すことができる『力』。
配信サイトにて、幻覚を使い人々を騙す動画を投稿し取り締まる。
捕縛する際に幻覚を使用し、にげられそうになるも、覚醒者部隊にそれに対抗できる『力』を持つ者がいたため捕えることができた。
『銃化』、エアガンを本物の銃に変換する『力』。
エアガンを集めるのが趣味の男が、ある日エアガンを本物にできる様になったらしく、それを使い強盗殺人事件を起こし、対覚醒者部隊による確保作戦が始動するも、抵抗を受け射殺。
『スライム』、自身の体をスライム状の液体にでき、もはや人間とは思えない見た目に変われる『力』。
国会議事堂を襲撃するテロ事件を起こし、銃が通用せず苦戦したが、塩をかけると液体状になれなくなるようで、人の姿に戻りなんとか無力化する。
捕え、塩漬けにし死刑を執行した。
『軌道操作』、空を飛ぶものを遠距離から操作できるらしく、軍事基地を襲撃する事件を起こし、弾が無力化されかなりの被害が出るも、格闘術でなんとか制圧する。
その危険性から、捕らえた2週間後に死刑が執行された。
他にも様々な『覚醒者』、特に動物に変身する『力』を持つ者と多く戦ってきた。
そして当然、自衛軍対覚醒者部隊に所属する私も...覚醒者であった。
ある時、覚醒者によって父を殺された私は、覚醒者から市民を守る者になろうと警察になり、“対覚醒者機動隊”に配属される事になった。
配属されてからは暴れる覚醒者の取り締まりを始めるが、覚醒者は未知の『力』を持ち、命の一つや二つじゃ足りないほど危険な仕事に、先輩方は次々と殉職していった。
さっきまで冗談を言い合っていた先輩が、30分後に見つけた時は、一つの丸い真っ赤な肉塊になっていた事もある。
そんな日常を送っていたある日、覚醒者による無差別殺人事件に対応していた時の話だ。
次々と仲間が殺されていく中、私は何とか生き残っていた。
異常なタフネスを持つその覚醒者は、弾を何十発と食らっても倒れず、ついに私の持つ銃の弾は切れ、絶体絶命の状況となった。
死が迫り、初めて本物の恐怖を目の当たりにした私はその時....ただ神に祈った、自分に戦える武器を、覚醒者と戦える武器を、と。
ここでこの覚醒者を逃せば、また私の父の様な被害者が出る、それだけは絶対に阻止したい、それが恐怖を目の当たりにした私を動かす力であり、意志だ。
そして私は、その時『力』を手に入れた。
一瞬だけ気を失っていた様な感覚があり、違和感を感じた自分の右腕を見ると、腕が先端の手に近づくにつれ肌色は黒くなり、手の部分は銃のハンドガードからバレル部分までできている。
どうやら、私の腕は銃に変わったようだった。
材質は金属、触りなれた本物の銃の触感だ。
何が何だかわからないが、不思議とそれは長年使っていたかの様に感覚で動かせ、その腕の銃で覚醒者を射殺した。
国家の所有する覚醒者は日本国自衛軍の管理下に置かれるため、私はこうして警察から“自衛軍対覚醒者部隊”への転属が決められた。
なぜ急に昔の事を思い出して振り返っているのだろうか。
これが走馬灯というやつなのか。
目を現実のやり、私の体を見る。
体は血まみれとなり、腕も足も原型を留めておらず、倒れていた。
なぜこんな事になってるのだろうか。
覚醒者との戦いの衝撃で記憶が飛んでいたが、徐々に私の頭の中で思い出してくる。
先日東京でテロ事件が起きた。
犯人は国際テロ組織『アウェイクニング・ドミニオン』所属の男で、雷を操る『力』を持つ覚醒者だ。
男は日本から逃げようとするも、自衛軍対覚醒者部隊の追跡に戦いとなり、死んだ。
凶悪犯の死に日本中が安堵して間も無く、今度は九州でテロ事件が起きた。
今度はアウェイクニング・ドミニオンとは関係のない国際指名手配犯、女の覚醒者による攻撃だ。
自衛軍はすぐに対覚醒者部隊を送り、それが私の所属する部隊だった。
私は凶悪な覚醒者を追い、ついに対峙した。
しかし、奴の『力』は想像以上で重症を負い、そして今の状態となった。
恐らくもう助からないだろう。
また『力』を授かった時の様に神に祈っても、今度は何も起こらない。
漫画の主人公なら、新たな『力』が目覚めて復活、なんてことが起きるのだろうが、どこまでいってもここは現実、そんな事は起こらなかった。
意識が消えゆく中、最後に浮かんだ顔は、妻と息子の顔だった。
自分の人生に悔いはない、けれど心残りがある。
かつての自分がそうであった様に、私が死んだら息子が同じ道を歩むのではないか、常々そう思っていた。
それだけはやめてくれ、どうか妻と一緒に平和に生きてくれ。
それが私の最後の願い、最後の望み。
私は最期にそう祈りながら、そのまま生涯を終えた。
登場人物紹介
【高橋武智(43歳)】
日本国自衛軍第06対覚醒者部隊『ハバヤ』所属。
口と顎に髭を生やし、茶髪だが白髪が増え始めている軍人。
大のコーヒー好きで、1日に10回は必ず飲む。
中学生時代、突如として人が『力』に目覚め始め、世界中が混乱していた頃、覚醒者による犯罪が増え、父親がそれに巻き込まれ死亡。
その事件により、高橋は覚醒者を取り締まるため新設された警察の対覚醒者機動隊に入る事を目標に生き始め、無事大学卒業後入隊。
ちょうどその頃、妻と出会い子供を作る。
覚醒者による無差別殺人事件が発生し鎮圧に向かうが部隊は壊滅、高橋は『力』に目覚めなんとか切り抜けた。
そして軍の対覚醒者部隊に入隊することになり、最期は九州で覚醒者と戦い死亡。
息子が自分と同じ道を歩まぬよう願っている。
・力『身体銃化』
体の腕や足、指などを銃に変える事ができる。
弾は自身の血か水分、もしくは骨などの体の一部でできている。
『力』の影響か、血や骨の回復力が異常に高い。
『日本国自衛軍対覚醒者部隊』
日本国自衛軍に設立された、国内の覚醒者を取り締まる部隊。
警察の機動隊にも対覚醒者部隊は存在するが、明確に違うのは、軍の方は覚醒者のみで構成されている点。
覚醒者という未知の存在を管理するには警察よりも力を持つ軍に任せるべきと国が判断した結果である。
という建前で、本当の目的はいざという時に戦争に利用するため。




