43.奇跡
黒焦げと化したカイドラッシュ達はそのまま湖に落下し、水への落下音と共に水飛沫がマジック達に飛ぶ。
波で揺れる中、ハイドはすぐさま湖に潜った。
クラージは、地面に顔をつけうずくまるマジックの元へ歩み寄る。
上級魔法は魔力消費が激しく、マジックは自身の持つ魔力のほとんどを使い立てなくなっていた。
いや、例え魔力が残っていたとしても彼女は今と同じようにうずくまっていただろう。
その証拠と言わんばかりの、晴れの湖に彼女の悲嘆の叫びが響いていた。
「マジック......」
クラージはマジックの元に着き、彼女の肩に触れ宥めるが、かける言葉が見つからないのか何も言えずにいた。
「うぅっ......みち....おは.......最期に......笑って....たよ.....わ、私の...事......恨んで....くれない.....らしい...よ......」
マジックは泣きながらもクラージに、自分の見たミチオの最期を言った。
「ええ......ミチオは...優しいですから...」
「私が......殺し...たんだ......私が.....ミチオを.....あああぁ......」
マジックとクラージにとってミチオは、仲間であると同時に、子供の頃からの付き合いの幼馴染だ。
その悲しみはハイドやトラジディよりも遥かに大きい。
しかし、2人が悲しみに暮れているそんな時だった。
「ぶっはッ!クラージ!ヒールだ!準備、しろ!」
湖に潜っていたハイドが水から顔を出し、クラージにどこか焦っているように叫ぶ。
「ハイド....?何かあったんですか!」
「ミチオが、生きてる!早く、傷を、治せ!」
その言葉が耳に入り、マジックはすぐにハイドの方を見た。
ハイドが肩を貸し支えているのは、黒焦げになって死んだはずのミチオだった。
「ミチ....オ.......?」
クラージはハイドが陸に上がるのを待たず、すぐに走って湖に入り、ミチオの元まで泳いで近づいた。
「ミチオ!!気を失ってる...?<ヒール>!!」
ミチオを少しの光が包む。
顔の擦り傷などが治り、水中で見えないが恐らく足の怪我も多少治っているはずだ。
ハイドとクラージはミチオを連れ陸に上がり、ミチオを地面に寝かせた。
「怪我はひとまずこれで大丈夫でしょう」
クラージはミチオに再度<ヒール>をかけ、一息つく。
「ほ、本当に......ミチオ....生きてるの....?」
腕を使い、体を引き摺りながら3人の元へマジックは動く。
クラージはそんなマジックの元へ行き、マジックを持ち上げ、ミチオの元へ運ぶ。
ちょうどその時だった。
「...んんぅ......あれ...ここって......」
気を失っていたミチオが目を覚ました。
「ミチオ、良かった、何とも、ない、ようだ、な」
「ううっ...!ミチオーッ!!!!」
マジックは、クラージを腕で押し除けミチオに飛びついた。
「無事でよかった...本当に良かった....!!私...本当にあんたを殺したと思ってたんだから....!!!バカ.....!!!」
ミチオの体にマジックは顔をうずくめ、泣きつく。
「え、マジック...大丈夫...?そんなに泣いて...」
「こっちの...セリフよ......!!!」
ミチオは目を覚ましたものの状況が飲み込めていないようだった。
「ミチオ、ひとまず生きてて良かったです。本当に死んだと思ったんですからね。例の『自動盾』の力は切れたはずですよね?なぜあの魔法を喰らっても生きていられたのですか?」
魔法を喰らう直前、確かにミチオの『自動盾』のストックが切れ、作動していなかったはずだ。
あの魔法をあの力なしで生き延びるなどできるはずがなく、マジック以外のメンバーには疑問が生まれていた。
「魔法........?あ、そういえば僕...マジックの凄い魔法で......確かに何で僕生きてるんだろう......」
ようやくミチオは気を失う前のことを思い出したか、自分が死にかけていた事に気づいた。
しかしミチオにも答えがわからない様子だったが、すぐにその謎は判明した。
「.....あ!!クラージ今何時!?」
何かを思い出したかのようにミチオはクラージに時間を聞いた。
「え、ちょっと待ってくださいね」
そう言ってクラージは腕につけている、時計型魔道具を見て時間を確認すると。
「今は....17:03ですね......あ!!」
時間を告げたクラージも何かに気づいたかのように驚きの声を上げた。
「なんだ、何か、わかった、のか?」
だがそれを聞いても、ハイドは何もわかっていないようだ。
「ハイドにはまだ言ってなかったっけ?僕の『自動盾』って17:00を境に五回貯まるんだ。だからあの時、落ちてる瞬間に17:00になって盾が回復してマジックの魔法を防げたんだ」
ハイドは表情こそわからないが明らかに驚きの反応を見せた。
当然だ、そんな事が起きるなんて予想できるはずがない。
「どんな、奇跡、だ」
「本当にミチオは....神に愛されてますね」
クラージは少し笑いながら、羨ましそうに言う。
クラージは聖職者、当然信仰心が他よりも強いため、神に愛されているミチオに少し嫉妬しているのかもしれない。
それに対し、ミチオは薄笑いを浮かべて答えた。
「あー...そうかもしれないね、女神様なら会ったことあるし......あとマジック、ごめん...そろそろ離れてもらえるかな?」
「.........クラージ」
「はいはい」
少し落ち着きこそしたが、尚も若干泣いているマジックはミチオから離れようとするも魔力がほぼない状態で、腕しか動かせないためクラージを呼び背負ってもらった。
ミチオの服にはマジックの泣いた痕と鼻水がついている。
「ミチオ、立てそう、か」
「うん、足が結構痛いけど...クラージのヒールのおかげでなんとか」
ミチオは痛がるそぶりを見せるが、問題なく立ち上がった。
「ところでトラジディは?」
立ち上がったミチオは姿の見えないトラジディがどこにいるのか辺りを見渡した。
「あそこでまだ気を失っています」
「あ!トラジディ!」
寝かせられているトラジディの元にミチオは走り、それに続いてハイドと、マジックを背負うクラージもトラジディの元へ駆けていく。




