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五人の『覚醒者』は異世界へ~五つの物語~  作者: オルレアンの人
第四章『転生追放』

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36.生きる理由

 出だしでお客さんが普通に来ていたのですっかり忘れていたが、最近は客足が途絶えているとイリスさんが言っていた事を思い出した。


 このままではかなりの赤字なのだが、現状どうすることもできず、ただただお客さんが来てくれるのを祈って待つことしかできなかった。

 そんな僕の隣に立つイリスさんは、悲しい顔を浮かべている。


「お客さん....来ませんね」

「そうですね....せっかくミチオさんがパンを作ってくれたのに....私のせいで......」


 きっとイリスさんは、自信が帝国人であることが原因でお客さんが来ないと思っている。

 イリスさんには申し訳ないけど、実際その通りだろう。

 この店のみならず共和国内で帝国人の人が経営する店は、きっと今はどこも客足が遠のき悩んでいることだ。


「いや、イリスさんのせいじゃ.....」


 何とか悲しい顔をやめさせ、また笑顔になってほしいけど、上手く言葉が浮かばない。

 帝国人差別の問題は、今日明日と収まる様なものではない。

 恐らく、戦争が終わってもしばらくは続く。


 それまでこの店が保つか......いや無理だ。

 何とかして売り上げを上げないと、今月保つかも......。


「ミチオさん....もしかしてお店の事考えくれてますか?」

「え....」


 考え込んでいた事が顔でバレてしまったのか、イリスさんは僕の思っていた事を当てた。


「心配してくれてありがとうございます、でも大丈夫ですよ!このまま売り上げが伸びなくても1年は保つよう頑張りますので!例え潰れてしまっても....きっと......またどこかで....」


 イリスさんの作り笑いに、僕の胸の奥は締めつけられた

 昨夜、彼女にとってこの店がどれだけ大切かを聞いた。

 この店は彼女にとっては宝そのもの、絶対に手放したくないはずだ。


「イリスさん......僕が絶対に、この店を潰させません!あの美味しいパンを食べれる場所は、店は、僕が守ってみせます!!」


 僕はイリスさんの顔を見つめ、決意した。


「ミチオさん......なんでそこまでこの店のために....」

「そんなの、イリスさんに貰ったパンのお礼......いや......」


 パンお礼は勿論ある、けどそれ以上に僕は.....。


「昔、自分がそうであったように、困っている人は見過ごせないんです。別にヒーローや英雄になりたいってわけじゃないんですよ、ただただ自分がそうしたくて....これは、僕の今この世界で生きる理由なんです!」


 例えお節介だとしても僕は人助けをしたい。

 僕と同じように、困っているのなら絶対に助けてあげたい。

 もう二度と、僕と同じような末路を辿る人が現れてほしくない。

 転生して貰った『力』に気づいた時、僕はそう誓った。


 それに、イリスさんはとても良い人だ。

 僕が無理を言ってパン作りをさせてくれた、教えてくれた。

 僕に心配かけまいと、平常心を装っているけど、本当はこの店がどうなるか1番不安で仕方ないはずだ。

 イリスさんには幸せになってほしい、幸せに生きてほしい。

 そんな思いで僕の心はいっぱいだった。


「かっこいいですね......少し憧れちゃいます!」


 彼女の顔に作り笑いなどではない、本当の笑顔が戻ってくれた。


「ではお言葉に甘えて....しばらく一緒に頑張ってくれませんか?勿論給料もお出ししますので!」

「え、いやいや!お金なんて入りませんよ!僕ほとんど教えてもらう立場ですし!それにこう見えて結構貯金とかありますから!」


 日々の冒険者活動で、特に物欲のない僕はお金の使い道は宿代とご飯代くらいで、結構貯金が貯まっている。

 無償でも三ヶ月くらいは働けるので本当にいらなかった。

 しかしそう言うとイリスさんは、ムスっとした顔を向けてきた。


「無償で働かせる私の気持ちにもなってください!今日の働き分もしっかりお支払いしますから絶対受け取ってくださいね!!」

「ただでさえこのお店やばいのに、さらにむしり取る様な真似....僕にはできませんよ!」


 すかさず僕も反論した。


「あーー!いま私のお店を潰れかけてる店かの様に言いましたね!1人分の給料すら払えない様な貧乏なお店だって!!」

「そこまで言ってはいませんよ!」

「否定はしないんですか!?」


 僕たちは言い争った、何ともくだらない言い争いを。

 けど......仲間たちともこんな言い争いをよくしていた事を思い出し、少し楽しくなってきてしまった。


 そんな時だった。


 店の扉が開き、1人の男が入ってくる。

 僕たちは言い争いを中断してすぐに接客を始めた。

 久しぶりに来店してくれたお客さんに感謝を込めて、「いらっしゃいま...せ......」


 来店した男に、僕は驚愕した。


「なんで....ここに.....」


 その男は、如何にも現代の日本で語り継がれる忍者の姿をしている。

 明らかに冒険者、そして........見覚えしかない姿だった。


「......ハイド」


 そこにいたのは、仲間のハイドだった。

 どうやってか、僕の居場所を突き止めてここに来たようだ。


「ミチオ、詳しい、話は、後だ」


 驚きを隠せない僕をよそに、ハイドは話し出す。


「頼む、トラジディを、助けて、くれ」


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