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五人の『覚醒者』は異世界へ~五つの物語~  作者: オルレアンの人
第四章『転生追放』

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32.僕はパンを作る

 至る所に調理器具が置かれ、現代で言うオーブンの様な機械が複数設置されており、部屋の中央には大きな台がある。

 その上にはまな板と、パンを作るための小麦粉や塩などが置かれている。

 そんな台を前に、腕を捲りパンを作ろうとする僕の姿があった。


 ここはイリスさんのお店の中にある調理部屋。

 僕の後ろにはイリスさんが立っており、見守ってくれている。


 僕がパン作りを手伝うと言った時、イリスさんは条件を出し、まずお客用ではなくイリスさんに試食してもらうためのパンを作る事になった。


「とりあえず材料は用意しましたけど......ミチオさん....本当にパンを作れるんですか?」


 イリスさんは不安そうな目でこっちを見ている。

 さっき会ったばかりの冒険者が言ってる事だ、疑うのは当然だ。


「昔ですけど....パンを作った事は何度かありますので、任せてください。ただイリスさんの作るパンになるべく近づけるため、間違ってたら指示をお願いします」


 正直僕も不安がないと言えば嘘になる。

 パン作りの経験は前世であるが、それはもう19年も前の話。

 母との思い出だ、ある程度の事は今も覚えているが、完璧にできるかと聞かれると多少不安が残る。


 しかし、あんなに美味しいパンを食べさせてくれたイリスさんのため、不安を押し殺し、体が覚えている事を期待してパン作りを僕は始めた。


 まずは木製のボウルに入れた小麦粉に、水と塩を加えて.....現代ならイーストを混ぜる所だけどそれがない。

 けど、イリスさんがあらかじめ用意してくれた発酵種を混ぜるので問題はない。


 粉っぽさがなくなるまで混ぜ続け、次第に生地は一つのまとまりになっていく。

 捏ねていると僕の腕が熱く、太くなっている感覚が徐々に大きく感じてくる。

 流石に久しぶりの捏ね作業で腕がだいぶ疲れてしまった。


「おー...かなり手際いいですね!経験者というのは本当だったんですか....!」


 後ろから見守るイリスさんが、僕の作業を見て褒めてくれた。

 前世で母に、捏ね方が上達してきて褒められた事を思い出し、何だか凄く嬉しい。


 (さて、そろそろ生地を休めせるためにラップをしたいんだけど、この世界にラップなんてあるわけないし......)


「あの、生地を休ませたいんですけど......ラップなんてありませんよね?」

「らっぷ....?ちょっと聞き覚えがなくてわかりませんが、十分に捏ね終わりましたら、次は魔道発酵機に入れて20分待ちます」


 ......魔道発酵機?

 イリスさんは指を刺し、僕の右横に設置されている機械の様な物がそれだと教えてくれた。

 見た目は鉄に近い材質の箱型で、ただパンを一時置いておくためのパンラックを入れただけの物にしか見えない。


 けど僕はイリスさんの指示通り、魔道発酵機に捏ねた生地をボウルに入れたまま入れ、イリスさんが魔道具に付いているボタンを押した。

これで20分待てばいいらしい。

 本来なら30〜60分くらいは休ませる一次発酵なのだが.....この魔道具はそれを短縮してくれるらしい、どういう仕組みなのだろうか。

 現代の科学でも作れない技術がこの世界にあるんだなと僕は目を輝かせた。




 その後、イリスさんにパン作りについて聞いているとあっという間に20分が経過し、発酵機からチン!と音がする。


 僕は中からボウルを取り出し、台の上に置き小麦粉を指につけ、生地の中央を指で刺す。

 突き刺してできた穴が閉じなければ発酵が完了したという事だが.....閉じない。

 本当に20分で発酵している....凄いな。


 台の上に小麦粉を撒き、その上にボウルから取り出した生地を置き、さらに上から小麦粉をかける。

 生地を半分に切り、三つ折りにして丸め、調理用マットをかけて再び20分ほど休ませる。


 20分経過したらマットを取り成形を始める。

 手に小麦粉を塗し、生地の表裏両面に小麦粉をつけ、軽く押す。

 押して少し広がった生地を手前から3分の1ほどで折る。

 折りながらも生地を軽く押し、奥側の生地を同じく3分の1程で折り、手前側に重ねる。

 そして押しながら生地をさらに半分に折る。

 しっかりと押しつつ、生地を折った事でできた閉じ目をしっかりと閉じる。

 閉じたら、生地を転がし細く伸ばす。

 さっき切ったもう半分の方も、同じ様にして成形する。


 出来上がった二つの生地を調理用マットの上に置き、再び魔道発酵機へ入れ、イリスさんがボタンを押し、「10分ね!」と言ったので10分待機する。


「イリスさん、オーブン.....というかパンを焼く機械ってどれですか?」


 待機中にオーブンを温めておきたいが、どこでパンを焼くのか自体わからず、イリスさんに聞いてみると。


「ああ、魔道天火の事ですね。そこの一際大きいやつがそうです。......にしてもパン作りの経験があるのに魔道具の知識がないって不思議.....」

「あはは、田舎育ちな者で.....」


 イリスさんが指を刺した魔道具は僕の後ろにあった。

 先ほどの発酵機同様、鉄に近い材質で作られているが、中は現代のオーブンとほとんど一緒だ。

 イリスさんがその魔道天火のボタンを弄ると、段々と熱が現れ始める。


 10分が経ち、発酵機から生地を取り出すと、ふっくらと膨れていた。

 見るからにモチモチとしたしたその二つの生地を調理シートにのせ、トドメの小麦粉をささっとかけ、クープを入れる。


 斜めに3本のクープを入れたら、霧吹きで水をかける。

 魔道天火用とイリスさんが渡してきた板に、調理シートごと生地を二つ乗せ、魔道天火の中に入れて20分程焼成。


「.....ところで今作ってるパンって、もしかしてヴァルノワパンですか?なんで作り方知ってるんですか?」


 ヴァルノワパンと言うより、バケット....フランスパンを作ってるつもりなんだけど、やっぱりほとんど一緒なのかな。


「父が帝国出身なもので、教わったんです」


 そう言うと、イリスさんはどこか悲しそうに遠くを見つめた。


「そっか....良いお父さんに恵まれたんですね」


 それから20分が経ち、パンを取り出す。

 香ばしいパンの香りが、魔道天火を開けた瞬間に広がり、パンは鮮やかな小麦色で焼き上がっている。


 ついに......そして久しぶりに作り上げた僕のパンが無事にできた。

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