幕間① 戦争の悲劇
「今....なんて言ったの....?」
ここは冒険者協会、ミチオとトラジディの騒ぎから40分程が過ぎた後。
トラジディの元にマジック、クラージ、ハイドの三人が集まっている。
「だから言っただろ、あいつはパーティーから追放した。もう二度と一緒に依頼に行く事はない。いや、もう街から出たかもしれないな」
そうトラジディが淡々と告げると、マジックはテーブルを...バンッ!!と、手で叩いた。
その音に反応した一部の冒険者達がマジック達を見つめる。
マジックは今まで見せたことのない、怒りとも困惑とも思える顔で、トラジディを激しく睨んだ。
「意味わかんないんだけど.....一体どういうつもりよトラジディ....!!」
「全くですね、なぜ私たちに何の相談もなく一方的にミチオを追い出したんですか?」
マジックに続きクラージも抗議の声を上げる。
しかしトラジディは顔色ひとつ変えずに言い放つ。
「あいつが帝国人だから、それだけだ」
それを聞いた瞬間、マジックはすぐさまトラジディに平手打ちを飛ばした。
しかし、トラジディはぶたれても、まるで石像のように表情を変えない。
マジックは続け様に平手打ちをしようとするが、ハイドに止められる。
「落ち着け、マジック」
「ミチオの父が帝国人なのは前々から知っていたはずです。なぜ今になって.........まさか、トラジディの故郷に何かあったのですか?」
メンバー全員が、トラジディの故郷がウォルノニアの辺境にある事を知っている。
そのため帝国の侵攻を受けたこのタイミングで、帝国人を憎み出したトラジディの理由が容易に想像できてしまった。
「......俺の村は....燃えたらしい」
その場の空気は、さらに急激に重くなった。
クラージはやはり....と、苦々しい顔を浮かべた。
「共和国軍が調べた所.....村は全焼、そこに住んでた人たちは焼死体で見つかったんだとよ。帝国軍が殺した住民を燃やし....遺体は焼けこげてて顔の判別ができないらしくてよ.......村から逃げた人は今のところ見つかってない.........恐らく......俺の両親も....妹も......もう」
トラジディの話を聞きクラージは息を呑み、ハイドは黙り込んでいる。
だが唯一マジックだけがこの重い空気の中、口を開いた。
「トラジディの故郷が帝国に滅ぼされたのはわかったわよ......でもそれがミチオと何の関係があるのよ!!」
声を上げたマジックの方をトラジディが見ると、マジックは泣いていた。
涙を流しながらトラジディを睨んでいた。
「ミチオはね、ああ見えて.....というかどう見えたって弱い人なのよ!怪我をした子供を見かけたら何の迷いもなく、回復の霊薬を上げるくらい優しい心も持ってる......その故郷を燃やした帝国人達とは違うのよ!!!それをあんたが自分勝手な憎しみだか復讐心だかのために追い出して.....!!ふざけないでよッ!!!!」
マジックは協会の床を踏み鳴らし、叫び声と共に響いた。
「....とにかくもう済んだことだ、今更変える気はない」
気に留めずか、トラジディはマジックの叫びを無視して一枚の紙をテーブルの上に出す。
「あいつがいなくても俺たちならやっていける、手始めにこの依頼を引き受けるつもりだ」
トラジディのこの発言に、我慢の限界が来たかマジックは。
「俺たち....?ミチオがいないんだったら私もこのパーティー抜ける。せいぜい私とミチオがいなくなった分苦しめ!バーカ!!」
そう言ってマジックはトラジディに背を向け、そのまま協会から出ていった。
「トラジディ。帝国が、憎いのは、わかった、が、その、憎しみは、自分を、壊す、ぞ」
「トラジディ、考え直していただけませんか?」
残った2人の仲間もトラジディを説得するが聞く耳を持たず、「依頼行くぞ」と言い、トラジディは立ち上がり協会から出て行く。
そんなトラジディを放っておくわけにもいかず、2人もトラジディの後を追いかけていった。




