27.赤子転生
女神様による転生から早19年。
僕は共和国の都市『イルノニア』の辺境にある小さな村で生まれた。
親から貰った名前はカルス。
苗字はない.....と言うよりこの世界では苗字がある者は王族、もしくは貴族かそれに値する権力者だけらしい。
しかし、1番驚いたのは僕の体だ。
生まれ変わったのだから当然と言えば当然だけど、髪色は緑色で顔は完全に別人となっていた。
この顔に慣れるまで、鏡を見るたびに驚いてしまった事もある。
僕を産んだ母と父は優しく、子供思いの両親だった。
前世よりも裕福で、不自由はあまりない生活を送れたが、優しい母を見ていると残してきた前世の母を思い出し心が痛くなってしまう.....。
村は小さく、人口は50人ちょっとしかいない。
僕はそこで、現在のパーティー仲間である、マジックとクラージと出会った。
2人とは幼馴染の様な関係で、子供の頃からよく遊んだ仲だ。
彼らは最初は僕の事をカルスと呼んでいたが、僕がどうしてもと頼み、あだ名で『道尾』と呼んでくれるようになった。
2人はいつか冒険者になると誓っており、僕もマジックによってほとんど強制的に誓わされた.....けど特に後悔はなく、こんな楽しい人生を送れたのはこの時の誓いのおかげでもあり、むしろ感謝しているくらいだ。
18歳で僕たちは村を出て、1番近くの都市イルノニアにて、パーティー『三名』を結成し、マジックは『魔導士』、クラージは『聖職者』、そして僕は『シールダー』として冒険者デビューをした。
『シールダー』向けのスキルを二つ習得し、どんな敵からだろうと仲間を守る無敵の盾役になれる様、今も鍛錬は欠かさない。
何より僕には女神様から貰った『力』がある。
名付けて『自動盾』、自動で僕に危害を加える攻撃を感知し、どんな攻撃だろうと防ぐ盾が瞬時に現れて僕を守ってくれる。
チートの様に思える『力』だけど、そこまで万能というわけでもなく、調べた所この『力』はストック制で、防ぐ力は1日5回貯まる。
ストックに上限はなさそうで、僕が生まれたらしい17:00ちょうどに毎日5回分補充され、次の日まで使わなければストックは10回になり、1週間使わなければ35回分貯まる。
そうなればどんな攻撃も35回確実に防げる、盾役にとって相性がかなり良い『力』だ。
その後『忍者』のハイド、『剣士』のトラジディと出会い、現在のパーティー『五盟』に至る。
女神様......女神様の言う本当の幸せとは何なのか、どんなものかはわからないけど、僕は今、初めての友達の様な仲間ができました。
初めて母以外の人と過ごして、楽しいと思えました。
あの時、転生を選んだのが正解なのかはまだ分かりませんが、転生を勧めてくれてありがとうございます。
僕はこの最高の仲間たちと、これからも冒険し続けます。
◆
ウーフ・ウルフの群れ討伐から五日後。
ここは共和国都市イルノニア、その都市内にある冒険者協会だ。
今日僕は、トラジディに呼ばれてここに来た。
ウーフ・ウルフ討伐でしばらく生活に困らない報酬を貰えたのに、また何か依頼を引き受けたのかなと思い、僕はトラジディの座っているテーブルの元へ急ぐ。
急いで歩きつつ協会内にある併設された酒場の方を見ると、ギルド『生剣エックス』の人達が何か騒いでいる。
酔っているとかそういった感じはなく、何か言い争っている感じだ。
よくよく見てみると、『生剣エックス』のみならず、冒険者は皆.....いや、来る途中で見かけた街の人達も騒然としていた。
僕はその原因が何なのか、なんとなくわかっていたけど特に気にしていなかった。
けど、本来関係無いはずの冒険者間でも騒然としているあたり、共和国そのものが危ないのではと不安がよぎってくる。
しかし、それよりもトラジディの元へ早く行きたい気持ちが強いので、僕はそこまで深く考えず急いで歩き続けた。
歩いているとトラジディの背が見えてくる。
僕はトラジディを見つけて、少しの安心感と同時に疑問を抱いた。
『五盟』を含め、多くのパーティーとギルドは依頼を引き受けるかどうか決める際は、基本的にメンバーの多数決で決めている。
しかしテーブルに座っていたのはトラジディ一人だけだった。
マジックやクラージ、ハイドの姿がないということは、依頼に関する集まりじゃなくて別の用事なのだろう。
他のメンバーが遅刻しているだけと考える事もできるけど、ハイドはいつも誰よりも先に待機しており、今まで遅刻なんて一度たりともしたことがない。
というか遅刻した事があるのはマジックだけだ。
そんなハイドがいないという事は、そもそも他のメンバーは呼んでいないのだろうか?
(僕だけを呼んだ別の用事って一体何だろう.....リーダーを変わってほしいって言っていた件かな?)
どちらにしても他のメンバーがいないところで決める事でもないし、どれだけ考えても心当たりが全く浮かばなかった。
結局、僕はそのままトラジディの待つ机に着き、椅子に座った。
「お待たせ!おはようトラジディ!」
......トラジディは何も言わず、顔を下に向けたまま沈黙している。
いつもなら元気よく挨拶を返してくれるのに、何かあったのだろうか。
「.....えっと、他の三人はどうしたの?」
「呼んでない、色々面倒だからな」
こっちを見ないままトラジディが口を開いた。
けど、面倒とはどういう意味なのだろうか。
声も普段と違い明るさは無く、どこか憂鬱とした声だ。
「え......じゃあなんで僕だけ呼んだの....?」
そう僕が尋ねると、トラジディは顔を上げた。
その顔はひどく疲れ果てており、今まで見たことがないほど憔悴していた。
僕は目が合い、思わず息をのんだ。
だが、その衝撃は、次に口にされた予想外の言葉によってあっけなく塗り替えられた。
「ミチ....いやカルス、お前を『五盟』から追放する」




