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五人の『覚醒者』は異世界へ~五つの物語~  作者: オルレアンの人
第四章『転生追放』

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26.パーティー『五盟』

 薄暗い世界が広がっている。

 周り全てが岩でできたここは共和国内のとある山にある洞窟。


 ここは『ウーフ・ウルフ』と呼ばれる、共和国と隣国、ローグ王国に生息している、白い体毛に頭部が赤い毛に覆われているのが特徴のオオカミの様な獣が根城にしており、近隣の市民に被害が出ていた。

 そこで、共和国の都市『イルノニア』の冒険者協会を拠点にしている、パーティー『五盟』が討伐依頼を引き受けやって来た。


 そして今まさに、ウーフ・ウルフと戦闘中である。

 彼らは無数のウーフ・ウルフに囲まれた、絶体絶命の状況に陥っていた。


「くそ!クラージ、ヒール頼む!噛まれた!」


 短い茶髪、耳にイヤリングをし革装備の衣服を着て鉄のロングソードを持つ剣士の男が指示を出す。

 男の指示を聞き、黒いローブを着た金髪の聖職者の男『クラージ』が、「任せてください!<ヒール>!」と唱え、男の傷を治す。


「ありがとなクラージ!マジック、出力絞って広範囲魔法は出せそうか!」


 傷が治った剣士の男は、すぐさまウーフ・ウルフに切り掛かりながら、杖を持ち、ピンク色の魔導士のローブで身を包む長い黒髪ピンクの女、『マジック』に指示を出す。


「簡単に言わないで!出力抑えんのかなり難しいんだから!今は範囲魔法は無理!!<エレキ・スフィア>!」


 そう言ってマジックは杖から球体上の雷の玉を放ち、ウーフ・ウルフ1匹を閃光に包ませ、黒焦げにした。


「くそ......あ!それじゃあ水を撒くから雷魔法で一網打尽にできそうか!」

「んー.....それならなんとか!」


 女魔導士は少し考えるが、無数のウーフ・ウルフに囲まれた現状を考えてそれくらいしか手がないと判断し了承する。


「よし!それじゃあマジックは詠唱準備!ハイド!水の忍術でこいつら水浸しにしてやれ!」


 剣士の男はウーフ・ウルフを切りつつ、黒い衣服を着て、顔を含め全身の肌を隠す軽装備の男、『ハイド』に指示を出す。


「任せろ、<忍法:水遁の撒き>」


 そうハイドは唱え、人差し指を立て両手を合わせて印を結ぶ。

 すると彼らの頭上より水が出現し、まるで噴水のように彼らを囲っているウーフ・ウルフに向かって流れ、水浸しにした。


「よしマジック!雷魔法でやってやれ!」

「任せて!」


 水浸しになり動きが鈍くなったウーフ・ウルフに向かってマジックは杖を構えて魔法を唱えようとする。

 剣士の男の指示によって絶体絶命のピンチが回避できたかの様に思えた......しかし。


「っ...!マジック!後ろです!!」


 直感でか、水を唯一回避したウーフ・ウルフ1匹が、マジックに噛みつこうと飛び上がった。

 クラージがそれに気づきマジックを庇おうとするも、一歩ウーフ・ウルフの方が早い。


「くそ!!マジッ....「僕に任せて!!」


 剣士の男が焦って助けようとするがその前に、人一人の大きさを超える盾を持つ緑髪の男が動いていた。


「キャっ!?」


 ウーフ・ウルフが噛みつこうとした瞬間、盾を持った男はマジックの前に立ち、ウーフ・ウルフはそのまま男の持つ盾に噛み付いた。


「ミチオ....!ありがと助かったわ!」


 そう言いながらマジックはすぐに、体勢を整える。


「これが僕の仕事だからね!それよりも僕がウーフ・ウルフを惹きつけるから、その隙に僕ごと雷魔法で一網打尽にして!」


 そう言って男はスキル、「<デコイ>!」を発動する。

 <デコイ>は主に盾職『シールダー』の冒険者が習得しているスキルであり、その効果は周囲の敵意を自身に向けさせる。

 多少知力がある敵であれば効き目は薄くなるが、獣相手ならその効果は絶大。

水に濡れたウーフ・ウルフの群れは盾を持つ男『ミチオ』に飛び掛かる。


「え....!でも!」

「大丈夫だマジック、俺らのミチオなら問題ない」


 マジックは盾を持つ男を巻き添えに魔法を撃つのを躊躇うが、剣士の男の言葉を聞き、「あーもう!!」とちょっと怒った様に魔法を放つ。


「<ライトニング>!!」


 マジックの杖からウーフ・ウルフの群れに向かって一筋の雷が走る。

 中級魔法<ライトニング>の威力は、せいぜい人1人感電させ気絶させる程度だが、水に濡れたウーフ・ウルフに直撃すると一気にウーフ・ウルフの群れ全体を閃光に包んだ。

 激しく光る閃光は洞窟内と思えない程の光を生み出し、内部をしばらく照らし続けた。


 光が収まり、ウーフ・ウルフの群れを見ると全ての個体は黒焦げとなり、全滅していた。

 そしてその中に1人、盾を持つ男が立っていた。


「おーい!一応確認だが大丈夫かミチオー?」


 剣士の男が、ウーフ・ウルフと共に感電したはずのミチオの元へ歩く。


「大丈夫です、リーダー!」


 男は振り向き、怪我一つないその体を見せて、仲間を安心させた。


「流石だなミチオ....あと何度も言うけど名前でいいって言ってんだろ!」

「あ、ごめん!ついつい癖で...リーダ......トラジディ...!」


 そんな2人の元に他の3人の仲間も駆け寄る。


「もー無事なのは知ってるけど、仲間に向けて魔法撃つ私の身にもなってよ!」

「安心しなさい、マジック程度の魔法なら死ぬことはまず無いので、怪我を負おうと私が治して見せましょう」

「あ〜カチンと来た。ちょっとそこに立ってなさい、今魔法撃って本当に死なないかどうか、その身で試させてあげるから」


 そう笑みを浮かべながら、マジックは軽く煽ってきたクラージに杖を向ける。


「やめろ。俺たちが、洞窟、から、出たら、2人で、勝手に、やれ」


 冷静に2人を見捨てる発言をするハイド。


「いや、普通にやめろよ?洞窟破壊したら協会から自然破壊の賠償要求されるんだから」


 突っ込んだのはリーダーである『トラジディ』だ。

 彼らは皆19歳だが、トラジディだけ一つ上の20歳で、年長者という事もあり年上の貫禄を見せつけるためにも、仲間達への配慮や絡みを忘れない。


「まぁまぁ、仲良く仲良く!」


 トラジディに続く様にミチオも場を宥めようとマジックとクラージに寄った。

 だが別に本気で止めようとはしていない、なぜならいつもの事だからだ。

 マジックとクラージの喧嘩は一緒に行動してると必ず起きるものであり、ミチオもトラジディもそれに慣れ、むしろ喧嘩している姿を微笑ましく見ている。

 本気で面倒くさいと思っているのはハイドだけだ。


「しかし、相変わらず、ミチオの、その、力は、理解、不能、だな」


 突然ハイドは、ミチオの持つ力について話し出した。


「そう?子供の頃から見てきたからあんまりそう思う事なかったけど......まぁ改めて考えてみると確かに不思議よね」


 そう言ってマジックはミチオの顔をじっと見つめた。


「魔法やスキルって感じもしないし....この歳で権能なんてあるわけもないし....何なんだろうねその力」

「神からの授かりものでは?前世でよほど良い事をしたのではないでしょうか!」


 マジックに続く様にクラージが口を開く。

 彼は根っからの八大神の信仰者であり、この世界に存在するスキルや魔法とは違う力である『権能』は神からの授かりものであると考えており、ミチオのその力もそれに近しい存在であると思っている。


「僕は......どうだろうね、そんなに良い人ではないから」


 ミチオはどこかはぐらかす様に答えた。


「とりあえず、そこで黒焦げになってるウルフの耳切り取って、イルノニアに帰るぞお前ら」


 トラジディの言葉に全員が「おー!」と小さく声を上げ、短剣を取り出してウルフの耳を切り取る。



 耳の切り取りは15分ほどで終わり、全員が洞窟から外へ出た。


「う〜ん眩しーい!」


 洞窟の外を光が照らす。

 暗闇に慣れた目に太陽の輝く光が入り込み、マジックは眩しさのあまり目を閉じてしまう。


「数時間も洞窟内にいると、流石に目が光りを嫌がってしまいますね」

「俺は、そもそも、明かりが、苦手、だ」


 3人が仲良く話している横で、ミチオとトラジディは話しながら歩き始めた。


「なあミチオ」

「どうしたの、トラジディ?」

「俺思うんだがよ、やっぱ盾職のお前がリーダーやったほうがいいんじゃないか?」


 トラジディの職業は『剣士』、そのため前衛で戦うのが基本であり周りの仲間を見つつ、指示を出しながら戦うとどうしても遅れが出てしまう。

 今回のマジックの危機も自身の責任と感じており、盾持ちで無敵の様に思える力を持つミチオがやった方がいいんじゃないかと前々から思っており、何度か提案していた。


「それは....無理だよ、トラジディも知ってるでしょ?僕生き物を殺す事に抵抗があるって....」


 ミチオは幼い頃から生物を殺す事に抵抗があった。

 獣やモンスターと対峙した際も、その身で攻撃を防ぐか囮となる以外の事はあまりできない。

 そのため、生き物を滅多に殺す事のない職業『シールダー』となり冒険者を続けてきた。


「生き物を殺すことのできない弱い僕じゃリーダーは務まらないよ、だからトラジディがこれからもリーダーを続けてよ」


 ミチオの中では、いやミチオ以外のメンバーからもトラジディは優秀なリーダーであると認識されている。

 常に仲間への配慮を忘れず、戦況を正しく理解し適切に対処し、何よりミチオとマジック、クラージの三人でパーティーをやっていた時、とある依頼中危機に陥った三人をトラジディが助けてくれた事を忘れていない。


「ミチオ。生物を、殺せない事、は、恥じる事、では、ないぞ。それは、お前が、誰より、も、優しい、心を、持っている、証拠、だ」


 後ろでミチオとトラジディの会話を聞いていたハイドが、ミチオに言葉をかけてきた。

 さらにハイドに続き、盗み聞きしていた残り二人も会話に混ざってくる。


「そうそう、それ込みで誘ったの私達だし別に気にしてないよ〜!私はミチオがリーダーでさんせ〜い!」

「そうですね!しかしやりたくないのであれば無理にリーダーにならなくても大丈夫ですよ!トラジディも、恐らくさっきのマジックの件で責任を感じているのかも知れませんが、気にすることはありませんよ!むしろあれは油断した弱いマジックが悪いのです、最近だらけ過ぎて肉がついてきたらしいですし、たるんでる証拠ですね」


 マジックは杖を再びクラージに無言で向け、ハイドは黙って二人と距離を置いた。


「そっか......わかった!これからもこのパーティー『五盟』のリーダーは、このトラジディに任せろ!」


 そうトラジディが言うと、全員が笑顔で笑い合う。

 固い絆で結ばれた五人の冒険者は、山を下り、イルノニアへと帰還する。


登場人物:パーティー『五盟』

【リーダー:トラジディ[19歳]】

職業『剣士』の男性。

ヴァルノワ帝国と国境を接する要塞都市ブルカーニュの付近に存在する村出身。ある時3人で活動していたミチオ達の危機を救い、仲間となりリーダーとなって新たなパーティーを結成した。


【マジック[18歳]】

職業『魔導士』の女性。

クラージとミチオとは幼馴染で、共に冒険者となるために村を出た。

根は真面目な性格ではあるが、戦闘時以外は基本ダラけている。

雷魔法が得意。


【クラージー[18歳]】

職業『聖職者』の男性。

常に丁寧口調で誰とでも優しく接する性格だが、マジックとは幼馴染という事もありよく毒付く。


【ハイド[18歳]】

職業『忍者』の男性。

口数の少ない冷静な男、よく調子に乗るマジックに辛辣な言葉を掛けている。

イルノニアの冒険者協会にてミチオ達と出会い加入する。

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