表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
五人の『覚醒者』は異世界へ~五つの物語~  作者: オルレアンの人
第二章『転生犯罪』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/71

15.プレティーニ脱獄事件(2)

 指揮を取っている男の兵士が、俺たちに投降しろと警告してくる。


 (まずい......ここで俺が捕まれば、俺の『力』の危険性に気づき、より厳重な監視に置かれる可能性がある......)


 もしそうなれば脱獄の機会はもうなくなるかもしれない。

 かと言ってこの場をどうこうできるかどうかで言えば、厳しい。


 俺の拘束の『力』は、1人ずつにしか使えない。

 集団で来られたらひとたまりもない『力』だ。


 チラリと後ろを見れば、次々と諦め、伏せていく仲間達の姿が映った。

 そんな仲間達に舌打ちをし、気付けば伏せずに立つ奴は俺とボルンだけとなっていた。


「どうした!?さっさと床に伏せろッ!!!」

「なぁボルン、お前ならこの状況......どうする」


 指揮官の男を無視してボルンに何か打開策はないかを尋ねた。

 ピンチとは言え俺には『力』がある、相手は銃を持たない中世人.....捕まらず逃げ切れる可能性は十分にある.....が、スキルだの魔法だのという存在があるため、それに自信を持てない。

 ボルンはその辺り詳しいので今はこいつに頼るしかない。


「.......せめてこのチョーカーがなければ、逃げるだけなら何とかなるかもなんだがな」


 絶体絶命、ボルンもお手上げならば今の状況はその一言に尽きる。


 ふざけんな。


 前世でも牢で人生を終えたってのに、この世界でも牢で過ごせって?冗談じゃない。

 あの自称女神のおかげで、今度こそ俺の本当の満ちる人生が始まろうとしてんだ。


 俺は諦めねぇぞ。


 せっかく神から貰ったこの『力』。

 堪能しねぇと神にも申し訳がないって話だ。


「......なぁボルン、お前......神の存在を信じるか」

「は?こんな時に宗教か」


 ボルンは呆れた表情で俺に答えた。


「おい!聞いているのかそこの2人!!最後の警告だ!!さっさと床に伏せんか!!!」

「俺はこんなんでも結構神の存在は信じる派だ。神は俺の望む『力』をくれたしな」

「そりゃ素晴らしい神様がいたもんだな。俺も八大神を信仰してるが、神様からのキスは貰ったことがねーな」


俺たちがそう話していると、「.......投降の意思は無しとみなす!!暴動鎮圧隊!!拘束せよ!!!」


 痺れを切らした指揮官の男は、兵士達に命令を下した。

 命令を受けた兵士達は、剣を構え突撃してくる。


「俺は神を愛してる....だからこんな所で終わるわけにいかねぇんだよッ!!!」

「同感だ!!」


 俺は「『拘束』!」と叫び1人を拘束し、すぐさま次の兵士に「『拘束』!」と叫び拘束、そして次の兵士へ。


 しかし3人を拘束するのが限界だった。

 すぐに他の兵士たちは俺を押さえ込もうとする。

 だが、ボルンが俺に迫る兵士に体当たりし、ギリギリで俺は助かった。

 ボルンはそのまま、その兵士が落とした剣を奪い、兵士たちと対峙する。


 その瞬間、足元の土が動き始めた。


「あぁ!?」


 遠くの魔法使いらしき奴ら2人が「<アース・リストレイント>!」と叫び、地面より水の様に湧き出て来た土が、俺の体に纏わりつき、体を拘束する形で固まった。


「くそ!!魔法ってやつか!!?」

「ここまでか......!!」


 隣を見れば、ボルンにも同じ魔法が使われた様で、土に拘束されていた。


 (ふざけんなふざけんな!!!神に選ばれた俺が....こんな所で終わってたまるかッ!!!!)


 必死に体を動かすが、土の塊はびくともしない。


「おい!大人しくしろ!!」


 近づく兵士が俺に叫ぶ。


「うるせぇ!『拘束』!」


 俺に叫んできた兵士は拘束された。

 見えてさえいれば『力』は使える。


「なんであいつ、魔封じのチョーカーを付けてるのにスキルが使えるんだ!!?」

「いや.....あれはスキルじゃないぞ!!?ロープ・バインドとは何か違う....!!」

「まさか権能.....いや...だとしてもなぜ使えるんだ!!?」

「魔導士!!眠り魔法を使え!!!」


 兵士たちが俺の『力』に動揺する中、指揮を取っている男が後方の魔法使いに向かって指示を出した。

 眠り魔法ってのがどんなもんなのかよくわからねぇが、確実にくらったら眠る魔法なのはわかる。

 くらえば終わりのクソ魔法。


「くっっそがぁぁぁぁぁッ!!!!」


 俺が土で拘束された体を動かそうと必死にもがく中、魔法使いの1人である男が俺に近づき、杖を顔に向けてきた。


「<スリー...... 「やめろぉぉぉぉぉぉぉッッッッ!!!!!」


 魔法使いの男が魔法を使おうとした瞬間、俺はただ必死に叫んだ。


体の奥底から込み上げる、絶望の怒りを。





 その瞬間だった。


 魔法を使おうとした魔法使いの男が、急に倒れた。

 体の力が一瞬で抜かれたかのように、力無く。


 いや、魔法使いだけではない。

 全ての兵士が倒れていく。


 後方にいた魔法使い4人も倒れ、中庭から光が消えた。

 だがすぐに雲が晴れ、月と惑星の明かりが中庭を照らし始めた。


「っ!!?な、こ...れは.....!?」


 兵士達は倒れているが気を失った訳ではないようだ。

 だが、誰1人起きあがろうとはしない。

 

「なんだ.....何が起こった.......?」


 俺がぽつりと呟くと、続けて俺とボルンを拘束していた土の塊が、ゆっくりとただの柔らかい土へと変わっていった。

 俺とボルン、それと先程まで伏せていた仲間達は呆気に取られ、何が起きたのか理解できずにいた。


 さらに俺とボルンと、仲間達の首に付けられていたチョーカーが突然外れ、地面に落ちた。

 しかし仲間達は尚も呆気に取られており、呪いのような存在であったはずのチョーカーが外れた事に、喜びの表情を浮かべる者はおらず、ただただ立ち尽くしていた。

 しかし次第に、「何が......起こったんだ?」「俺にもわかんねーよ」などと後ろから仲間達の動揺の声が聞こえ始める。


「まさか.......」


 俺の横にいるボルンが何かに気付いたようだ。


「どうしたボルン、何かわかったのか?」


 そうボルンに聞くと、近くで倒れている魔法使いの男が、「まさか......俺の魔力が、無くなった.....のか!?」と口にした。


 それを聞いたボルンは確信めいた顔をする。


「やはりそうか......こいつら全員魔力切れを起こしてやがる」

「魔力切れ?」

「ああ。お前も知ってると思うが、魔力が切れたら体ってのは動かなくなる。体を支える力の一つだからな。そんで俺たちを拘束していた魔法の土と、このチョーカー.....」


 ボルンはそう語りながら床に落ちている、先程まで自身に付けられていたチョーカーを拾った。


「突然外れたが....あの兵士たち共々魔力を失ったからじゃねぇか?これは魔道具だ、魔力が無くなれば効力は失われ外れる....のかもしれない」


 魔力ってのがいまいち何なのかまだ分からねぇが、おおかた納得ができた。


「だがなんで急にこいつらの魔力が切れた。お前が何かやったのか」


 そう言うとボルンは不思議そうに俺の方を見た。


「いやいやいや、これやったのお前だろ?」

「は?」


 そうボルンが言うと、後ろの仲間達が「おぉ......」と小さく感嘆の声を上げたのが聞こえた。


「いや、俺にはこんな『力』は.....」


 喋っている途中、俺はふとある事を思い出した。

 自称女神が言っていた新しい『力』の存在だ。

 もしかしてその『力』が今たまたま発動してこの現象が起きたんじゃ....。

 もしそうだとしたら.....これは魔力切れを起こさせる『力』.....と言ったところか。

 本当にそんな『力』だとすれば......魔力に縛られてるこの世界だとあまりにも強いはずだ.....。


 そんな事を考えていると、何処からか新たに10人の兵士が中庭に現れた、援軍のようだ。


「な......これは!?おい大丈夫か!?」


 兵士達は倒れる仲間達を見て動揺し、すぐに近くで倒れている仲間を抱え、安否の確認とこの状況を聞き出そうとしている。


「ちょうどいい.....おいお前ら」


 俺は後ろにいる仲間達に命令を下す。


「落ちてる武器を拾って、あいつらを殺せ」

『了解!!ボス〜!!!』


 仲間達は喜んで武器を拾い始め、兵士たちに襲いかかる。

 チョーカーが外れた影響であいつらも元気になったのか、盛大に暴れている。

 兵士どもに囲まれた際、勝手に降伏した事に後で殺そうかと考えていたが、新しい『力』の存在に心奪われ、もうそんな事はどうでもよくなった。


 俺は早速、さっきの『力』をどうやって使ったかを確認するための実験をする。

 あいつらと戦っている兵士どもに手を向けて、「消えろ魔力...」と言った。


「うっ.....!?」


 俺が再び『力』を使うと、目の前の戦っている兵士共が次々と倒れ始めた。

 俺が元々持っている『拘束』の『力』を使うのと同じような感覚だったため、思いの外簡単に使えた。


 何が起きたのか理解できていない様子で倒れた兵士共は、遠慮なくあいつらに刺され、辺りに血の海が出来上がってきていた。

 どうやら魔力を消す対象は、俺の敵味方の認識で自動で決まるらしく、元気に暴れている仲間たちには魔力が切れた様子は一切ない。


「はっ....便利なもんだ!」


 俺が『力』を使うところを見てか、ボルンは大きく笑った。


「はっは!!どうやらお前について来たのは正解だったようだな!!その無敵の力....いずれ兄弟なら国だって取っちまうかもな!!」

「国に興味はねぇよ」


 俺は大悪党になりたいわけじゃない、あくまで自由に生き、欲望のまま過ごす人生を歩むだけだ。

 現代のクソみたいな世界では味わえない究極の至福....もしかすればこの世界なら。


 俺はそんなことを思いながら、援軍で来た兵士共を殺し終え、最初に待ち伏せていた兵士達を嘲笑いながら刺していっている仲間達の元へと歩く。


「ん〜?」

「ひっ....!」


 倒れている魔法使いの一人と目が合った。

 女の魔法使いだ。

 死の恐怖を表情に浮かべ、許しを請う目をしている。


「ギャハハハ!!まだ生きてんなこいつ!!」


 するとそこへ、血に濡れた剣を持つ仲間が一人やって来た。


「や....やめて...お願い....!」

「おいやめろ」


 女の命乞いを無視し、一切躊躇せず殺そうとした仲間を俺は止めた。

 すると、俺を見た女の瞳には、まるで一筋の光が.....助かるのかもと、そう思ったような色が宿っていた。


「よく見ろ、女だ。言わなくてもわかんだろ?」


 俺の言葉の意味を理解してか、仲間はニヤァと笑みを浮かべた。


「失礼しましたボス!!確かにその通りでした!じゃあ俺が連れていきましょうか!!」

「ああ、ひとまず一時的に隠れられる拠点を探して、そこで楽しむぞ。勿論俺が最初だ」

「え.......」


 俺と仲間の会話を耳にした女の瞳から色が、光という幻想は消え、現実を直視できていない空虚な目で俺を見つめた。


「よし行くぞお前ら!!」

『はい!!ボス!!!』


 俺は兵士共を殺し終えた仲間達に

 仲間達は俺に従い中庭から移動する.......一人の戦利品を持って。


「いや......いやぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!誰かっ!!!助けてっ!!!!誰かぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」


 女は叫ぶが、それに応える奴はいない。

 帰ってくるのは仲間達の笑い声。

 ただ無力な金切り声が闇夜に響くだけだ。


「最高の『力』をあんがとよ......女神様」



 昨夜、帝国都市プレティーニで起きた前代未聞の事件が、帝国国内を騒然とさせた。

 

 プレティーニの兵舎内に置かれていた牢獄より、そこに駐屯する兵士達を殺した犯罪者達が脱獄したのだ。

[魔封じのチョーカー]を付けている限り、無力な存在であるはずの犯罪者の脱獄は、帝国市民を恐怖に陥れる。


 帝国軍はすぐさまプレティーニへと軍を派遣するが、脱獄した犯罪者達は既に跡形もなく姿を消しており、行方を晦ませた。


 殺された兵士達の中に一人、『ラヴィニア』という女性魔導士の姿が無く、現在も行方不明だ。

 後に、この事件は『プレティー二脱獄事件』と呼ばれ、帝国は今回の事件を受け、首謀者と見られる男の似顔絵手配書を公開し行方を追う。


 この事件後、プレティーニに住む若い女性市民が忽然と姿を消す事件が続出するが、原因はわかっていない。


登場人物


【長崎剛児[33歳]】

18歳の時にできちゃった結婚をし、しばらく嫁の家のパン屋で働くが、27歳で連続強姦殺人の容疑で逮捕、33歳で死刑が執行された。

 ・力『拘束』

対象となる人を見ることで発動でき、発動すれば対象を手錠や縄、さらにガムテープや猿轡などで拘束できる。

拘束具合は本人の気持ち次第で変わる。

人にしか発動できず動物や物などには効果がない。

 ・女神権能『魔力0』

周囲の生き物や魔道具から魔力を消す。

敵と認識したものにしか効果はなく、乱戦時でも問題なく使える。


【ベルランド・ボルン[32歳]】

ジャンビーヤという特殊なナイフ二刀で戦う男。

貴族家に生まれ勉学に励み武を身につけ、騎士10人相手に勝利する腕を持つ。

連盟国南部のタベリアス砂漠に住む民族の伝統を好んでいる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ