表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
五人の『覚醒者』は異世界へ~五つの物語~  作者: オルレアンの人
第二章『転生犯罪』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/71

14.悪夢の狼煙

 鉄格子の窓が一つ。

 トイレ用と思われるバケツが一つ。

 藁のベットと毛布が一枚。

 中は石造りで床は固い。

 部屋は廊下から鉄格子で丸見えでプライバシーもクソもない。


「おい、飯の時間だ」


 そう言って兵士が置いていった、何の味付けもされてないただのパンを、鉄格子の窓から見える月と、かなり近い位置に浮かぶ惑星を見ながら食う。


 それが俺の、今の世界だ。



 女を襲おうとしたあの事件の後、目が覚めると俺はここにいた。

 服はそのままで、首には魔封じだとか言うチョーカーを付けられた。


 どうやらここは現代で言う留置所みたいな所らしい。

 当然牢の外に出ることは許されず、尋問するために取り調べ室へ行く時にしか出れない。

 俺はここで裁判の時まで待たなければならないらしい。


 左右隣の房と向かいの房にも人がいる。

 ここには10人ほどの同類が捕まっているようだ。

 全員もれなくチョーカーをつけられ、何とか外そうと必死にもがいている。


 ここに来てすでに1週間が経った。

 その間、向かいの房の奴と気が合い、色々と話を聞くことができた。

 そいつの名前は『ベルランド・ボルン』。

 俺が言えたことではないが何とも悪そうな顔をし、上半身は裸で下半身はアラビア風のズボンを着ているだけ。

 何でも元々は貴族だったらしいが、皇帝に裏切られたと恨み、犯罪組織に身を落としたらしい。

 とても貴族には見えないがな。


 で、奴が言うには裁判は早ければ1週間以内に行われるが、遅いと1年以上待たされるらしい。

 ボルンの奴は、ここに来てから既に五ヶ月は経過していると言っていた。

 王国から帝国に変わってから、かなり素早く行われるようになったとのことだが、早ければ1週間.....現代人の俺からしてみるととんでもない早さだ。

 中世の脳みそだと、冤罪だなんて考えはなく、ここに入れられた時点で有罪が確定しているようなものなのかもしれない。


 もし裁判の結果、有罪になれば監獄に移送され、刑務作業を強制されるらしい。

 弓や革装備、何に使うかわからねぇ部品等を作り続けるとの事だが、なんで中世みたいな世界のくせに、やけに現代の監獄の様な仕組みなのか。


 んで最悪なのは死刑だ。

 本当かどうか知らねぇが、この世界には『人魚』と呼ばれる亜人が生息しているらしい。

 その人魚に帝国の海域の安全を守ってもらうために、定期的に生きてる死刑囚の男を人魚に送ってるらしい。

 何でも人魚はオスがいないらしく、他種族のオスの体が必要だとか。

 生きた状態で人魚に連れてかれるってことは、恐らく海底に行くってことだろう。

 縄で苦しまずに逝ける現代と違って、なかなか残酷な死刑制度をとるもんだ。


 しかし.......異世界に来てまで牢屋の中にいるとはな。

 現代の独房よりも広くはあるが居心地が悪い。

 早いところ出たいところだが.......。


 (脱走したとしても俺1人じゃ、またあの変な『力』を使う奴にやられるかもしれねぇ。仲間を集める必要があるか)


 問題は俺についてくる様な奴がいるかどうかだが...........いるじゃねぇか周りに。


「なぁボルン、一つ聞いてくれねぇか?」


 俺は早速、向かいの牢の中で座っているボルンに声をかけた。


「ん?どうしたゴウジ?」


 ボルンは先ほど兵士が置いていったパンを食いながら喋った。


「俺はそろそろここを出ようと思うんだが、お前もついてこねぇか?」


 そう俺が言うと、ボルンは小さく笑った。


「はっは!そいつはすげーや、できるもんなら是非連れてってもらいたいな!」


 いや、ボルンだけじゃない.....盗み聞きしていた他の房の奴らもケラケラと笑っている。


 その理由はこのチョーカーだろう。

『力』......確かこの世界ではスキルと呼ばれる力や魔法だとかが、このチョーカーを付けると使えなくなり、その上体も弱まってしまうらしい。

 そのため、とても脱獄なんてできない。

 俺には全くそんな効果を感じないがな。


 そこで気になるのは俺の......現代世界の『力』だ。

 この『力』もチョーカーによって封じられているのかは、まだ使ったことがないためわからない。

 だが、もし使えるのなら脱獄は簡単だ。


「そうだ、お前らも俺が脱獄させてやるよ。だから俺についてこねぇか?」


 俺はボルン以外の奴らにも声をかけた。


「もし俺と来りゃあ、死ぬほど女を抱かせてやるよ」


 それを聞き小さい笑い声が、我慢できずか大きく笑い始めた。


「ギャハハハハ!!そりゃたまらねーな!!俺はもう3ヶ月も女抱いてねーんだ!!」


 俺も!俺も!という声が上がり、だんだん犯罪者共が興奮してきているのを感じた。

 興奮はどんどん高まり、恐らくこの建物中に声が響いていることだろう。


「てめーら少しは静かにしやがれ」

「そんでどうやってここから抜け出すんだ?」


 ボルンは笑いながら俺に聞いてくるが、その時だった。

 廊下の奥にある扉が開き、騒ぎに気づいた兵士が1人入ってきた。


「おい、何の騒ぎだ」


 兵士は扉から1番近くの牢に入る男に確認する。

 しかし男は何も答えずにそっぽを向いた。


「兵士さん!実は俺の牢に妙な生物が入り込んでまして!」


 俺は兵士を呼んだ。

 それを聞き兵士が俺の牢に歩いて近づいてくる。

 俺は急いで上着を脱ぎ、兵士が来る前に牢の隅に移動し、床に脱いだ服を置いて屈んだ。

 まるでそこに何かあるかの様に、何かを服で捕まえた様に。


「妙な生物....?」


 兵士が俺の牢の前に立つ。


「こいつが窓から急に入って来ましたね、それでちょっと騒いでしまい.......」


 俺はわざとらしく腕を動かして兵士を牢に入る様、誘う。


「はぁ....仕方がないな...どけ、何が入って来たん......」

 そう言いながら牢を開けて入って来た瞬間。


「『拘束』」

 

 兵士の手足を縄で拘束し、口にはガムテープが何重にも貼られた。


「んんッ!!????」


 兵士は突然の事に何が起きてんのか理解できてねぇ面を見せるが、俺はそんな兵士の体を蹴り、床に倒す。

 それを向かいの牢から見ていたボルンは、目と口を大きく開けて驚いていた。


「は....はぁぁぁ!?なんでスキル使えるんだゴウジ!!?」

「スキルじゃねぇからな、使えるかどうかは賭けだったが」


 そう言いつつ俺は兵士が持っていた牢屋の鍵を奪い、牢を出る。


「んんんんんッ!!!!!」


 そして俺の入っていた牢の鍵を閉め、牢の中にいる拘束した兵士を閉じ込めておいた。

 兵士....と言うより看守の様な存在が牢屋に入っているところを見るのは気分がいい......が、野郎に『力』を使うのは、なんか気持ち悪いからあんまやりたくなかったのが本音だ。


 さて.....。


「それじゃあお前ら、牢から出してやる」


 そう言うと捕まっている男達は歓声を上げた。

 あまり騒ぐとまた兵士が来て一大事になるかもしれねぇのに、バカな奴らだ。

 だが.....そんなバカくらいが俺の仲間には丁度いいのかもしれない。


「ただし、牢から出してほしいなら、今後俺に絶対服従を誓え」


 先程まで歓声を上げていた男達が、一気に静まった。

 服従を奴隷か何かと勘違いしているのかもしれない。


「服従と言ってもあくまで裏切らなければそれでいい、奴隷の様にこき使う気は一切ねぇから安心しろ。俺と共にくれば自由な生活を保証する!好きな時に飲み食いし、気に入らない奴は殺し、欲しいと思った物は盗み奪い、好きな時に女を抱ける....!!」


 牢に入っている男達は.....静まり返ったのが嘘の様に再び歓声を上げた。


「だが、俺は裏切りには容赦しねぇ。あの兵士に使った様に、俺にはスキルじゃない特殊な『力』がある!!俺に服従を誓ったくせに俺を裏切る行為をしたら.....頭を爆発させる」


 それを聞いても男達は、「連れてってくれッ!!」「あんたの仲間になるから早く出してくれぇ!!」などと叫んだ。


 当然頭を爆発させるなんて『力』は持ってないが、未知の『力』を持つ奴が言う脅しとしては十分だろ。

 しかし......バカとはいえ、俺がスキルとは違う謎の『力』を持っている事を知っておきながら、迷いなくついてくると言ってくるあたり、裏切りの心配は当分無さそうだな。


「んで、お前はどうするんだ....ボルン」


 バカ騒ぎしている奴らと違い、ボルンは黙り込んでいた。

 鋭い目で、まるで俺を見定めるかの様に見ていやがる。


「一つ言っておく......ゴウジ、俺は服従なんて誓わない。これでも元は貴族、平民如きの下にはつかない。これは貴族としてのプライドだ。だが......それでも俺を牢から出してくれるんなら、俺はお前のボディーガードになってやる。これでもそこそこ剣の腕には自信がある。俺は恩はしっかり返す男だ」


 剣の腕.......今は少しでも強い奴がいた方が安全ではあるが、下手すれば自分の首を絞めることになりかねないな.......だが。


「いいぜ....お前には色々教えてもらった恩がある。俺も恩にはしっかり報いる人間なんだ」


 俺は、まずボルンの牢を開ける。


 牢から出て来たボルンは、ふっ...と笑い右手を出してきた。

 俺もそれに応える様に笑い、固い握手をした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ