11.檻
窓が一つ。
便所が一つ。
洗面台が一つ。
机が一つ。
天井には2台のカメラ。
常に壁から銃が2丁、対象に向けられる。
カメラで監視され、看守がその気になればボタン一つで対象の人生は終わる。
それが、かれこれ6年の彼の世界だ。
2022年、世間を騒がせた凶悪犯が逮捕される。
男の名前は長崎剛児、主に20代の若い女性を狙った連続強姦事件の容疑者だ。
彼はある時身につけた『力』を使い、都内で犯行に及び、その凶悪性から死刑が宣告された。
日本、いや世界では『力』を持つ者による犯罪が危険視され、逮捕後は非人道な徹底的な監視下に置かれている。
一切の自由はなく、『力』を持つ死刑囚の看守には特別執行許可が認められ、少しでもおかしな行動を取ればその死刑囚を殺せる制度を国は作り上げた。
一部の国では首輪に爆弾を付け、強制的に軍隊へ入れ、戦争に駆り出す様な事も起きている。
そして、この男も例に漏れず徹底的な監視下に置かれていた。
とは言っても、他の『力』を持つものに比べれば簡素な監視ではある。
その理由は、彼の持つ『力』だ。
『拘束』、それが彼の『力』であり。
対象となる人物を見なければ発動できない『力』。
仮に発動できたとしても危険性は低い方である。
そんな彼だが、6年の独房での生活もついに終わりの時が来た。
1人の男がドアを叩き入ってくる。
「出房だ、一緒に来い」
入ってきたのは刑務官。
出るよう言われ、彼は何も言わずに刑務官の後に続き、6年間一切出ることが許されなかった部屋を出る。
彼は、大方執行日であろうことに気付いているが、その表情と体に一切の恐怖心は表れていない。
彼が部屋から出ると、先ほどの刑務官1人と隣にはとても現代の科学では作れない人形ロボット兵器が二台いる。
彼と同じく『力』を持つ者が作ったであろう事は想像に難く無い。
『力』を持つものによる犯罪に対抗するため、日本の警察と軍隊に配属するこのロボット兵器が、誰によって作られたのかは国のトップシークレットであるため知られていない。
刑務官が廊下を歩き、彼はその後に続き歩く。
しばらく歩くと部屋にたどり着く。
扉を開け中に入ると、そこには2人の刑務官に椅子と机、その上に一枚の紙とペンが置かれているだけの殺風景な部屋が広がっていた。
日本の死刑制度は、『力』を持つ者の出現により大きく変わり、教誨室がなくなり、死刑を執行する執行室に直接移動される様になった。
しかし一部の死刑囚は、まず前室と呼ばれ部屋に移動される。
主に妻や子供、兄弟に親などの家族に遺言書を残す作業をするためだ。
彼と一緒に歩いていた刑務官は何も言わずに部屋の隅へ行き、立つ。
彼が入った後に続き、ロボット兵器も中に入る。
彼は何も言わずに椅子に座り、ペンを持った。
しかし彼はペンを持つが、すぐに置いた。
「いいのか」
一緒に歩いていた刑務官は彼に尋ねた。
彼は黙って顔を頷く。
すでに部屋にいた刑務官が彼に近づき、彼に目隠しを付け、手錠をかけ、刑務官が支えながら立ち上がり歩き出す。
そしてすぐ隣の執行室に移動され、赤い線で囲まれた踏み板の上に立たされ、吊るされているロープを首にかけられる。
「最後に何か言い残すことはあるか」
刑務官の1人が彼に尋ねる。
「そうだな......」
彼はようやく口を開いた。
「どうせならもっと......」
「女......抱きたかったなぁ」
2028年 長崎剛児(33歳) 10:30 死刑執行




