6.トラウマ(1)
最悪の奴らを見つけちまった。
馬車を止め、休憩している様子の男が5人と女性が1人。
男達はいかにも盗賊でございますって格好をしている。
冒険者の職業にも『盗賊』はあるがそれとは明らかに異様で違う。
5人とも緑色のフードとマスクで顔を隠し、服も緑色で統一されている。
全身緑なのは恐らく森林で活動する際、目立たなくするためのカモフラージュのためだろうか。
そして5人の内の1人、雰囲気が違う奴がいる。
全員が腰に短剣を装備しているのに対し、その男はロングソード。
盗賊というより剣士に近い屈強な体つきをしている。
盗賊達は4人が座って何かを飲んでおり、ロングソードを装備している男は置かれている木箱にもたれかかっている。
そして1番気になるのは、特徴的な耳をした女、間違いなくエルフだ。
髪は短めで色は薄黄色、服は白いワンピースを着ている。
年齢は身長的に13歳ってところかな?エルフは長寿らしいから違うかもしれないが。
手と足を紐で拘束され、首輪を付けられている。
さらにその首輪は紐で、盗賊の1人の腰につけているベルトと繋がっており、あれでは逃げようがない。
あのエルフは盗賊達に捕まり、これから帝国の都市に行き、売られるのだろう。
『エルフの森』と呼ばれる大森林にはたびたび人攫いの盗賊が侵入する。
そこには森の名の通りエルフと呼ばれる亜人が住んでいる。
エルフは皆特徴的な耳をし、聴覚が優れ、寿命が長い特徴を持っている。
大方、エルフの国の外れにある小さい集落を襲撃し、攫ってきたのだろう。
実際に見たことはないがエルフの奴隷はかなり人気らしく、高値で取引されるとか。
同族が奴隷にされ、それに激怒しているエルフ達は年々警備を強化し、さらにエルフの奴隷の価値は上がっている。
あのエルフ1人でどんだけの大金が生まれるのか。
もし俺がゲームの主人公ならここで盗賊達を瞬殺してエルフを助ける流れだろうけど...。
残念ながら俺は主人公などではないただのモブだ。
それにこの世界の価値観はまだよくわからないが、奴隷はどこの国にも普通に存在するし、金持ちは堂々とそれを見せびらかしている。
だからこの世界では、あの盗賊達も別に悪ってわけではないのかもしれない。
エルフには気の毒だけどあんな奴らと戦ってもボコボコに、最悪.....いや間違いなく殺される。
ここは見て見ぬふりをして帰ろう。
そう思い、振り返り立ち去ろうとした時だった。
足元の小枝を踏み、小さい音が響く。
俺は瞬時に背筋が凍り、血の気が引いた。
盗賊達の方を恐る恐る振り返り気付かれていない事を確認する......。
エルフと目が合ってしまった。
唯一エルフだけが音に気づいて俺を見ている。
「あ...あの目......は....」
エルフの目に見覚えがあった。
あれは助けを求める目だ。
俺に、俺に...助けを求める目だった。
(やめ......やめてくれ......そんな目で...俺を...見ないで.........)
あの目はダメだ無理だやめてくれ見たくない見せないでくれ。
嫌でも思い出してくる高校一年の記憶が俺の頭に広がっていく。
ダメだ帰ろう今すぐに...。
俺は振り向き帰ろうとする......が、何故か足が動かない...いや、震えて動けなかった。
足を叩き、(動け、動けよ!!)と念を送るが足は言う事を聞かない。
「攫われる奴が悪いんだ、俺は悪くない.......。イジメられる奴が悪いんだ、俺は悪くない......」




