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五人の『覚醒者』は異世界へ~五つの物語~  作者: オルレアンの人
第一章『転生賢者』

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5.ブロサリアンダの森(2)

 冒険者協会での出来事から早1年。


 俺はあの後、目が覚めてから近くの店で買ったパンを食べつつ、今後どうするのか本気で考えた。


 ひとまず当面の問題は金だ。


 どこかで働くしかなかったのだが、それは無理だった。

 この国は文明中世前期のくせに周辺国の中で唯一戸籍謄本や住民台帳....見た目は全て同じだが、本人が触れると身分情報が浮かぶ身分証明魔道具が存在する、随分と現代風なシステムが完成している。

 当然、突然異世界にやって来た俺に身分を証明する手段はなく、どこも俺を雇ってくれなかった。

 それどころか街中で、怪しい服着た眼鏡をかけた身分不明の男がいると噂になっており、このままだと確実に軍にスパイ容疑だの何だのと勘違いされて捕まる。


 改めて先日のおっちゃんに会おうとも思ったが、昨日の出来事があったため協会に入るのが怖くなり無理だった。



 完全に詰んだ。

 この状況をどうしろと言うんだ。



 他の都市に行こうかとも思ったが、検問所で身元の確認が行われるため行けない。


 追い詰められた俺は考えた、街にいても無理ならもう森で暮らすか.....と。


 俺はおっちゃんから貰った金を使い3日分の安く小さいパンを買いブロサリアンダの森に向かった。

 森はかなり近くにあるためすぐに着き、早速拠点となる場所を探しに森深くを歩いて行くと、家を発見した。

 恐らく相当昔に建てられた家なのだろう、あまりにボロい。

 しかし住む場所のない俺には丁度よかった。


 次に街に戻り、捨てられている使えそうな物を片っ端から持ってきた。

 若干刃こぼれしているナイフやノコギリ、冒険者が捨てた弓や剣などなど。

 何だか秘密基地を作ろうとする子供のような気分になってきて少しだけ楽しくなってきた。


 準備を整え、俺はまず家の補強を始めた。

 素人作業ではあるものの知識を駆使して、生えている木と街で捨てられていた工具を使い無事やり終えた。

 少なくとも2年は持つはずだ、多分。


 次に食料の確保のため罠を作った。

 この森の中で1番簡単に捕まえられる『ラパンゾ』や『鹿』や『猪』用の罠だ。

 材料は森の木と冒険者が捨てていった矢や弓の弦を組み合わせた物で、これがかなりの成果を上げ、食料問題は早々に解決した。

 動物を殺す事はゲーム世界で慣れていたおかげかあまり抵抗は無かったが、最初の頃は皮を剥ぐのにかなり抵抗があった。

 が、生きてくためと思うと割とすぐに慣れ、剥いだ動物の毛皮を街で売ってこの世界の服などを新調した。

 ゲームのモブキャラが着るような服でパッとしない見た目だ。

 とても俺のイメージする賢者が着るような服ではない。

 ちなみにジャージは大切に保管している。


 そして、森に生息するルーウルフから自分の身を守るために剣の素振りをやり始めた。

 街で捨てられていた模擬戦用の刃のない剣を毎日素振り。

 最初は1日30回だったが徐々に増やしていき、今は1日100回を3セット、必ず毎日やっている。

 それと、いざという時のために煙魔法の込められた魔道具『煙玉』を街で購入した。




 そうこうして1年後、現在に至る。

 俺はこの後に及んで、お決まりのゲームイベントやらが起きて人生逆転が起きるんじゃないかとも思っていた。


 起きないんだなこれが。


 1年間ただ素振りしては動物を狩っては寝て、素振りして狩っては寝て素振りして狩っては寝てを繰り返していた。

 せめて何か大きな目標があればいいんだけど、現状...特に浮かばない。

 冒険者協会には今も怖くて行けそうにないし。

 あまりの退屈さに一瞬自殺でもしようかなと思った時もあったが、そんな勇気も湧かなかった。


「ゲームがしたい、ゲームの世界に行きたい」


 ため息混じりに呟く。

 俺は昔を思い出し懐かしみながらも腰を上げ、森に設置している他の罠を確認するため家から出て、森の中を再び歩き始める。



 森の道無き道を進みつつ、ある考え事をしていた。

『猪』と『鹿』についてだ。

 ずっと気になっていたが猪と鹿は一体どこからやってきたのだろうか。


 この2種類の動物.....いや、世界中にいる現代世界にいる動物はこの世界には元々いなかったらしいが、30年ほど前に急に出現したとのことだ。

 どうして、どこから現れたのかわかっていないらしく、『賢者の知識』を持ってる俺にも分からない。

 まぁ、猪と鹿というすごい見覚えと聞き覚えのある動物の時点で間違いなく俺と同じ転生者の仕業だろう。

 何の目的で生み出したのかは知らないが異世界の人々にとっては外来生物、いい迷惑だ。


 そんな事を考えながら歩いていると、遠くから音が聞こえた。


 男の......男達の声だ。


 恐らく冒険者達が何かの依頼で森に入ってきているのだろう。

 関わりたくはない......が、それはそれとしてどんな冒険者が来ているのか気になる。

 俺は遠目で見るために、慎重にバレないよう気をつけながら近づいていく。

 冒険者らしき人達まで50mほどの距離に着き、チラッと木の影から覗く......。


 馬車が停められている。

 顔をフードで隠し、剣を持つ男が5人。

 そして...拘束されているエルフが1人。


 違った、あれは冒険者なんかじゃない。


 

 人攫いの盗賊だ。

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