5.ブロサリアンダの森(1)
清らかな香り、美しい緑の輝き、耳をすませば聞こえる自然の声。
ここは帝国都市『リンス』の北にある『ブロサリアンダの森』と呼ばれる森林。
広大な森林には多くの野生動物が生息しているが基本的に無害な動物ばかりだ。
だが森全体に『ルーウルフ』というほとんど狼の肉食獣が生息し、北側に行くにつれ『赤色蛙<レッドグルヌイユ>』と呼ばれる人を丸呑みにできるサイズのカエルが生息していたり、森から北東のほんの少し離れた所には『火のオーク』と呼ばれるオーク達が住む集落も存在する。
まぁ火のオーク達は森中央にある人の通る街道を警戒し、森深くには入ってこないので、こちらから近づかない限りは安全、南側に住んでいる俺には関係のない話だ。
俺はそんな森の中を、刃のない剣を腰に差し、罠で捕らえた『ラパンゾ』と呼ばれる、ウサギに羽が生えた様な生物を手に持って歩いていた。
しばらく歩いていると小さい畑と、畑と隣り合わせに建てられている家が見えた。
木で建てられた木造の家だ。
かなり廃れており、一部外壁に穴が空いて木の腐食が進んでいる。
今にも崩れそうな見た目で、お世辞にも住みたいと思えないほどボロいが風や雨などは凌げる程度には家だ。
......あれが俺の家です。
『賢者の知識』のおかげで補強作業はできたが、ずっと暮らしていけるかと言われると厳しい。
(せめて魔法が使えればもっと良い補強...いや新しい家だって建てれるんだけどな......)
魔法は今も使えなく、森で暮らし始めてからその原因がついにわかった。
その理由は体だ。
この世界はすべての人間、生物に無機物には『魔力』と呼ばれるエネルギーが宿っているらしい。
俺の体...と言うより現代人の体には魔力がなく、魔法は魔力を使って発動するので当然使えない。
魔法以外にもスキルと呼ばれる修練で会得する技にも魔力は必要となる。
つまるところ魔力のない体を持つ現代人は、冒険者になるのは不可能に近い。
これを知った時、女神が言っていた『赤子転生』か
『憑依転生』にしとけば魔力を持つ体を得られたはずだし、完全に『転移転生』は罠だと気づいた。
あの女神と仲良くできそうと思った時期もあったけど、ダメだ。
次会った時絶対文句言ってやる。
俺は家に入り、捕らえたラパンゾを小さい机の上に置き、藁が敷いてある自作の木のベットに座る。
「帰りたい...現代の世界に帰ってゲームがしたい.........もう1年も使っていない『ゲームに入る力』を使いたい.........」
異世界に来たばかりの頃にあったテンションはとうに抜けきり、引き篭もって毎日ゲーム生活をしていたあの頃を懐かしむ。




