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罪と灯火の選定会

 査問会は、王国中枢にある《白光の議堂》にて開かれた。


 五輪評議会の評議員五名に加え、王国、連邦、海洋都市連合からそれぞれ監視官が列席。

 中央には、エリス・フォン・ベルグランド。

 そして証人として、リィナ・クラウス・アリア・フェルナー・ネイが随伴していた。


 


 議堂には結界が張られ、外部からの干渉は一切排除されていた。

 だが、それでもそこには確かに――民の視線があった。


 各国の魔導映写盤が、“査問の場”を逐一記録していたのだ。


 


 開会と同時に、第一評議員が立ち上がる。


 


 「ミュリエ連盟が、かつて封印された兵器“ゼロ・プロトコル”と同質の存在を保護下に置き、

 その上でそれを“命”と認定し、さらには“意志を持つ者として扱った”と確認されている」


 


 「――エリス・フォン・ベルグランド。

 貴女は、かつてこの理論の草案に関与し、

 いま再びその果実に“灯火”を与えようとしている。これは、過去の罪から目を逸らすものではないのか?」


 


 エリスはまっすぐに評議員を見返した。


 


 「逸らしてなどいません。

  私は、自分がかつて置いてきたものに、正面から名を呼びました。

  ゼロに、“君は存在していい”と」


 


 ざわめきが走る。


 第三評議員が問いかける。


 


 「だがその“ゼロ”は、明確な拒否反応を示した。

  それは自己防衛ではなく、潜在的な暴走の可能性も――」


 


 クラウスが声を張る。


 


 「じゃあ、俺たちは人間が怒ったら“処分”するんですか?

  怖いからって、理解をやめるんですか?」


 


 静まり返る議場。


 


 続いてリィナが前に出て、報告書を差し出した。


 


 「ゼロの魔導波解析結果には、暴走の兆候はありません。

  むしろ“対話を拒まれたこと”への自己保護反応に近いものです。

  それは“意志”です。明確な」


 


 第四評議員がやや苦々しく口を開く。


 


 「だとして、それを“人として認める”ことは、世界秩序の定義を揺るがす。

  “命”の基準を曖昧にする行為だと、貴女は理解しているのか?」


 


 今度はアリアが立つ。


 


 「命って、最初から“正しくなきゃいけない”んですか?

  揺れて、迷って、傷ついて、それでも“もう一度歩こう”って思ったら――

  それが“命”なんじゃないんですか?」


 


 議場に沈黙が流れる。


 


 ネイが、そっと前に出て頭を下げた。


 


 「僕も……最初は誰かのためにつくられた存在でした。

  でも、今はこうして、自分の意志でここにいます。

  もし、ゼロがそれを始めようとしてるのなら――どうか、それを否定しないでください」


 


 最後に、エリスが再び前に出る。


 


 「罪は、消えません。私が関与した過去も、設計した理論も、現実です。

  でも、それを悔いても、誰かが“今ここにいる命”を否定することは許されません」


 


 「私たちは、“命は変われる”と信じています。

  それが、理想と呼ばれようとも、夢と呼ばれようとも。

  私たちは、それを現実にするために生きています」


 


 その言葉は、記録として魔導塔に刻まれ、世界へ広がっていく。


 評議員たちは顔を伏せ、やがて第一評議員が結語を述べた。


 


 「――判定は、持ち帰り協議とする。

  だが、貴女の言葉と、貴女の罪と、貴女の“光”は――確かに見届けた」


 


 その瞬間、ミュリエの名はまた一つ、

 世界の“選択肢”の一つとして、記録されることになる。

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