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第82話 ここはどこ? 私はノイス! 貴方は誰?

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 第82話 ここはどこ? 私はノイス! 貴方は誰?

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 街道整備はなんとか押し通した。

 騎士たちからは敵の進軍が速まると不評だったが、そんなものは要所に城があるのだから、そこで止めるものだ。また、攻められないようにするのが政治だし、最悪は被害を最小限に抑えるのが騎士の仕事ちゃうんか。

 そして攻められたら、何倍にもして返せばいいんだ。


 そんなわけで、捕虜のヘルグ・フジカムの交渉も再開している。

 身代金は金貨五百枚。一枚たりとも負けないよ。

 別に意固地になっているわけではない。人の家に土足で上がり込むような強盗野郎には、悪いことをしたら駄目だよ、ときっちりと教えてやっているだけである。

 ちなみに、今回送った使者が合意に至らなかったら、交渉の打ち切りを行うことにしている。

 そして、ルーム・フジカムは拒否した。


「ヘルグ。こっちへこい」

「くっ」


 ヘルグの両腕両足には鎖がつけられている。その状態で街道整備をしてもらっていた。


「お前は父親に見捨てられた。これよりはただのヘルグとして、一生強制労働をしてもらう」

「なっ!? 父上がそのような判断をするわけがない!」

「お前のために払う身代金はないそうだ。俺もお前一人が働くよりも、身代金をもらってその金で多くの人を雇ったほうがよほど街道整備が進むので、そっちのほうがよかったんだがな」

「そ……んな……」

「そんなわけで、お前には鉱山開発をしてもらう」

「鉱山!?」

「街道整備よりよほど危険で過酷だが、それも全てルーム・フジカムの薄情さゆえだ。諦めろ」


 ヘルグはその場に崩れ落ちた。

 なんだかんだ言っても助けてもらえると思っていたが、これまでなんとか保ってきたものが音を立てて崩れ去ってしまったのだろう。

 これで心が折れていると楽なんだけどなー。


 ヘルグは本当に鉱山で働かせた。手足がなくなる程度はいいが、死なないように指示している。あとから使えるかもしれないからな。





 パーカーから連絡があった。

 やっとアルディア嬢に毒を盛った犯人が分かったようだ。


 ドルド・ヘインには正妻の他に四人の側室がいるのだが、アルディア嬢は二番目の側室の子になる。

 同じ年齢に正妻の娘がいるのだが、そちらはまだ婚約者が決まってない。

 それを不満に思った正妻の側近の侍女がアルディア嬢に毒を盛ったようだ。侍女はティーク・バガナー(四十二歳)。ソルバーン家と敵対したため滅ぼされたバーダン家の遠縁らしい。かなり遠縁なので、ドルド・ヘインさえも気づいていないようだ。もっと言うと、正妻はダルバーヌ家の遠縁だ。この正妻が何かしている可能性は否定できない。

 このジール州北部でダルバーヌの血縁じゃない騎士家は少ない。ソルバーン家は新興騎士家だからそうではないが、昔からの騎士家はそれなりに血縁関係を結んでいる。


 今のところ正妻が関与しているといった情報はない。側近が忖度したのかもしれない。

 あれからその侍女は再びアルディア嬢に毒を盛ろうとしたが、それはパーカーが機転を利かせて阻止した。

 また毒を盛らないという保証はない。だから俺は再びネルタ城に赴くことにした。


 ヴァイスと共に走っていこうと思ったが、今回は馬に乗った。ゴルゴーの子のガリバーという、父譲りの立派な体躯の牡馬だ。

 お供はヴァイスと弟のマルダ、グルダ、ハック、リリルダになる。

 リリルダはアルディア嬢の健康診断のために連れてきている。あと、マルダとハックは側近枠。グルダは俺の補佐官枠だな。

 グルダとマルダはそれぞれ馬にのり、ハックはリリルダを後ろに乗せている。


 ゆっくり進んでいると、俺の魔力感知に反応があった。微弱な反応だが、動物ではないし、人間でもない。また、あのキツネの魔獣でもない。

 その反応は俺が意識を他に向けると、感じられなくなる。こういったことは過去にないことはなかったが、それでも気になる魔力だ。


「グルダ。少し寄り道をする」

「了解」


 ガリバーの手綱を少し引き、進む方向を変える。

 山林の中に入っていくが、緩やかな坂なので馬でも大丈夫だ。

 小さな山を一つ越えた辺りの谷間でガリバーから降りる。


「皆はここで待っていてくれ」

「ボスだから大丈夫だと思うが、怪我なんかするなよ」

「おう。そのつもりだ」


 それにこの魔力の気配は、剣呑なものではない。

 どれほど近づいても希薄な魔力だが、いったいこの先に何が待つことやら。

 俺が谷間を上がっていくと、ヴァイスもついてきた。ヴァイスなら何かあっても逃げ切ることができるだろう。


「何か……ある?」


 立ち止り、目を凝らすが、なんの変哲もない山林だ。だが、何かが俺の目の前にある。そう感じるのだ。


「危険はないと思うが、何かあったらヴァイスは逃げるんだぞ」

「クーン」


 頭をワシャワシャ撫でる。柔らかい白い毛が指の間で踊る。


「さて、何が出るか……」


 それを確かめるため、足を一歩踏み込んだ。―――途端に視界が切り替わった。


「これは……デカいな」


 巨大だ。

 語彙力がないことを痛感する。

 それは、とにかくデカいのだ。


 見上げるが、天辺が見えない。そしてどれほどの太さがあるのか?


「世界樹というべき巨木だな……」


 その周りには光の球がフワフワと浮かんでいる。まるでファンタジーな世界に紛れ込んでしまったような光景である。


「ワフ」


 ヴァイスがタタタッと進んでいく。


「おい、ヴァイス!?」


 慌てて後を追うと、人影が見えた。鎧武者!?

 ヴァイスはその鎧武者にじゃれついている。あのヴァイスが懐くとは、あの鎧武者は何者だ!?



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― 新着の感想 ―
こんばんは。 ノイスが鎧武者…と表現してる→西洋甲冑でなく、日本の甲冑に近い出で立ちなのかな?
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