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【書籍化】魔法が使いたくて肉が食いたくて努力してみたら最強になっていた  作者: 大野半兵衛


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第72話 ノイス動く! でも、戦闘はまだだよ

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 第72話 ノイス動く! でも、戦闘はまだだよ

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「エルグの第三部隊は屋敷に潜入し、アラン・シュバルクアッドを確保。確保が無理なら殺すこと」

「了解」


 隠密行動が得意なエルグの部隊は、今回も重要人物の確保を頼む。


「クママは陽動で、敵部隊をアランから引き離してくれ」

「分かった」


 弓とクロスボウで攻撃しながら移動してもらう。


「レンドルはアランから離れていった敵が戻ってこられないように通路の封鎖を頼む」

「任された」


 工兵隊である第七部隊は、敵の動きを阻害するのが仕事だ。


「ホッタンのところは、クママと逆側で好きに暴れろ」

「おう、任せろ!」


 派手に暴れれば、それだけ陽動になる。


「ヘック。お前は城で待機し、必要な時に援軍を送ってくれ」

「はい!」


 シュバルクアッドの当主として、ここでしっかりと腰を据えて指揮している姿を家臣たちに見せるように。

 それが今後の安定したシュバルクアッドに繋がるからさ。


「スライミン姫の第一部隊は、俺と共にフジカムを強襲する」

「お任せください」


 頼もしい返事だ。


 さて、全員に指示をしたので、城を出るとするか。


「ロッガ。あとのことは頼むぞ」

「了解だ」


 ロッガたちの役目は、全毘沙門党員を繋ぐ重要なものだ。


「ヴァイス、いくぞ」

「ワフ」


 俺とヴァイス、そして第一部隊は夜の闇の中を走った。

 スライミン姫とペニー、クラリッサと三つ子の長女アーラン、そして次女ウーランと三女オーランがペアになって馬に乗っている。

 俺も馬に乗れるし、大きくなったヴァイスも俺を乗せて走れるが、自分で走っている。最近運動不足だったから、ランニングだ。


 フジカム勢はすでにジール州に入っている。

 ヤツらを無事にレイジーグ州に帰すつもりはない。

 シュバルクアッド、つまりシュラードに手を出したことを後悔してもらう。

 今回はフジカム家当主のルームは出てきていないようだが、その息子のヘルグ・フジカムが軍勢を率いているらしい。


 ヘルグは三男だが、ジール州とレイジーグ州の州境に近いサイルダーナ城を居城にしており、北方の戦線(対シュバルクアッド)を任されている。

 おそらく、今回のアランたちのはかりごとを当主ルームに持ち込んだのは、このヘルグだろう。

 ヘルグとしたら、アランの謀反が成功しようと失敗しようとどうでもいいんじゃないかな。どちらに転んでも、シュバルクアッドはさらに弱体化されるのだから。

 弱体化したシュバルクアッドを飲み込む。それが本来の目的なのかもしれない。

 だからこそ、ここでフジカムの思惑をへし折っておく。


 夜明けまでには時間がある。ここで休憩するか。





 私はアーラン。毘沙門党のメンバーよ。

 今回から師範(スライミン姫)が隊長を務めることになった第一部隊の隊員になったわ。


 私は三つ子の長女で、次女のウーラン、三女のオーランと共に売られたの。

 親兄弟と会えないのは寂しいかって? そんなわけないわ。

 他の親のことは知らないけど、私たちの親はロクな人じゃなかった。

 私たちは食べ物も着るものも住む家にも困っていた。いつもお腹が空いており、いつ餓死するかと思っていたほどなの。

 それをボスに引き取ってもらい、お腹いっぱい食べさせてもらえた。服も与えてもらい、雪が降っても温かい寝床を与えてもらえた。

 私たち三姉妹は、ボスが神様に思えて仕方がないのよ。それは他のメンバーも同じだと思う。


 毘沙門党には、私たちと同じような身の上の子たちが集まっている。

 誰もが明日をも知れない暮らしをしていた子たちだ。

 ボスは私たちに二つのことを約束させた。

 一つはボスと毘沙門党を裏切らないこと。

 もう一つは、毘沙門党のメンバーが行っていることを、誰にも言わないこと。

 この二つを約束した子だけが、毘沙門党のメンバーとして認められる。

 拒否した子もいると聞いているけど、その子たちは畑を耕したり、下働きのようなことをしている。

 もっとも、こういった子はほとんどいない。なぜなら、私たちはボスを神だと思っているからよ。

 私たちをどん底から救ってくれた、神なの!


 最初は毘沙門天様に魔力を捧げることから始まった。ボスが崇めている神だと聞いたわ。

 魔力が枯渇しても絞り出すように捧げるのだと言われて、無理やり絞りだした。あれはキツかったわ。

 魔力の量が増えていることに気づいたのは、たしか一カ月くらいした頃だったかな。

 私たちを引き取ってくれたボスは、毘沙門天様に魔力を捧げることで、魔力が増えるのだと言っていた。

 魔力が増えたら、今度は刀や槍などの稽古が始まったわ。

 私は身体強化魔法を使うから、刀や槍と相性がよかった。

 ボスも私と同じ身体強化魔法の使い手だけど、まったく相手にならない。私よりも三歳年下で、体も私のほうが大きいのに、ボスの足元にも及ばないのよ。

 私は必死で刀の稽古をしたわ。いつかボスに勝ってみせる! そう思って稽古に励んだ。

 でも、ボスどころかタタニア姉さんにさえ勝てないし、師範にも敵わない。刀でも槍でも、この二人にさえ遠く及ばないのよ。悔しいわ。

 悔しいし、負けっぱなしは嫌。だから毎日手の皮がめくれても木刀を振り続けた。

 二人の妹も、私同様に負けん気が強い。おかげで次女のウーランは弓で、三女のオーランは槍で頭角を現した。


 ウーランは弓に爆破魔法を乗せて射る。かなり遠くまで矢を飛ばして、爆破させるの。あれにはちょっと引いたわ。


 オーランは槍で攻撃する際に、光を発して目くらましをしてくるわ。ただでさえ槍のほうがリーチが長いのに、目くらましまでされると捌くのが大変なのよね。

 ボスは心の目で見ろと言うけど、そんなこと簡単にできないわよ。でも、悔しいから心の目というものを鍛えているわ。まだ全然だけどね。


 今回、私たち第一部隊は、ボスと共にフジカム軍に突っ込むらしい。

 ボスを含めて七人。しかも全員が子供の私たちだけで五千ものフジカム軍に突っ込むの。

 正気じゃないわよね。

 でも、それがボスらしいわ。それに面白いわよね。

 やってやろうじゃない。こんなところで死ぬ気はないわ。敵を斬って斬って斬りまくってやろうじゃない。


 夜になったら城を出た。ボスは自分の足で走っているけど、私たちは二人ずつ馬に乗っての移動ね。ボスについていくだけで、馬がへばってしまいそう。ボスのあの底抜けの体力はどこからくるのかしら……?


 ボスには二人の奥様がいる。一人は隊長の師範ね。もう一人は氷結魔法使いのクラリッサ様よ。

 そのクラリッサ様はとても可愛いらしくて小柄なのに、平気な顔でボスについていくのよ。氷結魔法なのに、身体強化魔法の私よりも体力あるのよ!? クラリッサ様を見ていると、弱音が吐けないじゃないのよ!?


 ボスが休憩といって、椅子を出してくれた。

 私はよく分からないけど、ボスは二つの魔法が使える。そんなことができるのは、ボスくらいなものよ。


 甘いのに少し塩っぱい飲み物をもらった。これ美味しいのよね、稽古した時や夏はこれを飲むようにってボスが作ってくれるの。


 馬に乗って走っていたときは気にならなかったけど、風が冷たいわ。もうすぐ冬がくる、そう思わせる風だわね。


「夜明けまで仮眠をとっておくように」


 ボスが防寒用の毛布を出して、皆に配ってくれた。

 毎日激しい稽古をしているから、一日徹夜したくらいでは影響ないけど、仮眠を取るとしましょう。


 夜が明けたら決戦が待っているわ。心が躍ってなかなか寝付けないわ。

 早く暴れたいわね。フフフ。



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