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第69話 連携するとは、なかなかやるな

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 第69話 連携するとは、なかなかやるな

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 ダルバーヌ勢およそ二千、ソルバーン勢は予備の兵も出しておよそ八百。兵力差は二・五倍。

 寡兵かへいのソルバーン勢はリムッタ川の南に陣を張った。

 対するダルバーヌ勢はアリュカ山に本隊七百、その麓のリムッタ川北側に一千三百が布陣した。


 俺もトルク様の陣に馳せ参じている。

 そこでトルク様より、今回は近くにいるようにと言われた。


 また、ロベルト・ダルバーヌの挙兵の裏事情も分かった。詭道のグラードンがいうには、うちが税率を三割にしたことで、ダルバーヌ配下の騎士家の領地からかなり不満が出ているらしい。

 それに関しては元々予想しているし、なんならそうなるように仕組んでいるから不思議はない。

 ただ、いきなりなんの話し合いやアクションもなく挙兵となったのは、ラドン・バーダンがソルバーン討伐陣営を作り上げたからのようだ。

 今のソルバーン家はお金を持っている。ソルバーン領は金のなる木がある。欲に目がくらんだ騎士たちが、それに乗っかったようだ。


 元々ラドン・バーダンはヒンドル陣営と内通していた可能性が高いヤツだ。ダルバーヌに巣くう寄生虫だと俺は思っている。

 いい働きをしてくれたよ、と俺は笑みを浮かべる。


「ノイス。顔が怖いんだけど?」

「こんな幼気な子供に向かって何を言うのですか、トルク様」

「ノイスが幼気なら、この世界の大人は皆可愛いと思うよ」

「ゴドランさん、失礼ですね!」

「「「アハハハ」」」


 笑い声が木霊する中、グラードンだけは笑ってない。はてさて、グラードンは何を考えているのか?

 そして、俺はある提案をした。


「降伏の条件が、領地を差し出すことでは誰も降伏しないと思うが?」

「その時は、力づくで奪います。もちろん、その騎士も家族も全てを失うことになります」


 命も失うかもしれないな。

 今回、俺がこの提案をしたのは、ソルバーン家の直轄領を増やすためだ。

 直轄領が増えれば、家臣は俸禄(お金で雇うこと)になる。お金でなくても小麦で支払ってもいいが、そこは騎士に決めてもらえばいい。

 そして、こういった騎士たちは私兵を持たなくなる。

 兵士は全てソルバーンが雇い、戦の時にはその兵士が戦う。

 領地持ちの騎士は自分で兵士を養ったり、戦の際に集めないといけないが、俸禄の騎士はそういった苦労がなくなる。そして武力を持ってないことから、ソルバーン家に謀反を起こしにくくなるのだ。

 あくまでも謀反しにくくなるだけで、しないとは限らない。それに、武力を使わない謀反もあるからね。


「ノイスの言いたいことは分かった。今後はその条件で降伏を認めることにしよう」

「ありがとうございます」





 本陣には俺の他に、テアスさんと詭道のグラードンが陣取り、毘沙門党からロッガとララがそばに控えている。

 詭道のグラードンが怯えた目で俺を見ている気がするけど、気のせいだろう。


 ダルバーヌ勢が二千なのは、ハンデル城のアッジ家とネルタ城のヘイン家が城に籠っているからだ。

 その二勢力に対する兵を割かなければいけないため、ダルバーヌ勢は二千と少なめの兵数になっている。


 また、ソルバーン家のラントール城の後方を脅かす位置にあるエイネン城のダミアン家は、その後背にあるアシャール家に備えなければならず、兵は出せない。

 という理由を名目にして、静観している。


 そもそもダミアン家はダルバーヌ家とソルバーン家のどちらにつくか旗色を明確にしていない。

 様子見、日和見というやつだ。


 対峙して二日。

 そろそろ敵がじれてきたようだ。

 兵力で圧倒的有利なので、一気呵成に攻めようという騎士たちに、ロベルトは慎重な対応をしているようだ。

 ダルバーヌ家よりも大きく、七千もの兵を率いてきたシュバルクアッドが散々にやられ、逃げ帰ったのは記憶に新しい。

 それがロベルトを慎重にさせているのだろう。だったら敵対しなければいいのに、と思わないではないが、ラドン・バーダンに突き上げを食らって動かざるを得なかったところか。

 もしかして、落としどころを探しているのかな? 動いてしまってからでは、遅いけどな。もし慎重にと思っているなら、今さらだよな。それはソルバーン家と戦う、そう決断する前に発揮してほしかったところだ。

 お互いに利用し、利用されという関係でいいじゃないか。それが気に入らない莫迦な騎士たちに突き上げられ、戦う判断をした時点でアウトなのだ。


「そろそろじれてきましたかな。誘ってみましょうか」


 詭道のグラードンがニヤリと笑い、トルク様へ提案した。


「それはいいことだ。そろそろ我慢できなくなっている者もおりますからな。フフフ」


 テアスさんが言う、我慢できない者は……まあ、あれだ、タタニアと剛雷のゲキハのコンビだな。あの二人は本当に脳筋コンビなので、待つのが苦手なのだ。


「ノイス。あの二人はもう無理か?」


 俺が待てといえば、タタニアは待つ。タタニアが待てば、剛雷のゲキハも待つだろう。とはいえ、強権を発動する場面ではない。

 タタニアに少しはガス抜きをさせてやってもいいだろう。


「一騎討ちでもやらせますか」

「一騎討ち……うむ。それはいい。グラードン殿、どうか?」

「よろしいですな。精々派手に煽ってやりましょう」

「うむ。ノイス、一騎討ちを」


 俺はすぐに伝令を走らせ、タタニアに一騎討ちを申し込む許可を与えた。


 馬に乗ったタタニアが悠然とリムッタ川を渡っていく。

 敵は警戒を厳にしたが、川を渡るのが一人だと分かると様子を見ることに徹したようだ。


 青龍偃月刀をダルバーヌの陣へ向け、声を張り上げる。


「我はソルバーン家が騎士タタニア・イーフェン! ダルバーヌの騎士に一騎討ちを申し込む!」


 かなり離れた俺たちのところまでタタニアのよく通る声が聞こえてきた。

 ロッガは少し心配しているようだが、油断しない限り大丈夫だろう。

 敵の中に大きな魔力反応はない。

 何度でも言うが、魔力量の多さイコール強さではないが、それでも強さのかなりのウエイトを占めるからな。


 タタニアの戦いに敵の騎士が乗るか、そんなことを気にしていたら後方でロッガの咳払いが聞こえた。

 これは何か言いたいことがある時の合図だ。


「トルク様。ちょっと失礼します」


 トルク様に断り席を立つ。

 ロッガとララもついてくる。

 途中からロッガが先を歩く。

 その先にいたのは、ハヤブサだ。


「これはリッカの?」

「ああ、リッカからの繋ぎだ」


 リッカはロッガと同じ鳥魔法を使うが、あまり荒事に向いてないのでラントール城下の屋敷で待機している。

 ただ待機しているのではなく、シュバルクアッドなどの監視を行っていた。

 ロッガがハヤブサの足につけられた筒から紙を取り出し、中身を見ずに俺へとそれを渡してくる。


「ボス。何があったんだ?」

「シュバルクアッドだ」

「……ヘックが攻められたか?」

「ああ。ダルバーヌ家と呼応した騎士たちに攻められている」


 ロベルト・ダルバーヌ、やってくれたな。

 まあいい。シュバルクアッドに潜む潜在的な脅威がこれで露わになってくれたのだ。

 ここで潰しておけば、今後のシュバルクアッドの統制が楽になる。


「ララ。ヘックに連絡を取ってくれ。状況を聞きたい」

「うん」


 二分ほどララは目を閉じていた。


「攻められているけど、しばらくは大丈夫。敵を率いているのはアラン・シュバルクアッド。ガーナンの息子。兵数は二千」

「そうか……ロッガ、アシャールとアラムはどうしているか、確認してくれ」

「時間をくれ」

「ああ、頼む」

「ララ。俺はトルク様に今回のことを知らせてくるが、ウクナを呼んでおいてくれ」

「うん」


 陣に戻り、トルク様に耳打ちする。


「ヘックは大丈夫なのか?」

「はい。今のところは、問題ありません。ですが、俺はあちらにいってこようと思います」

「ああ、了解だ。気をつけていくんだよ」

「はい」


 再び陣を出てロッガたちのところへ向かう。

 そこにはすでにウクナがいた。


「ロッガとララはここに残って、何かあったら教えてくれ」

「了解だ」

「ウクナ。魔力は大丈夫か?」

「うん、大丈夫」

「それじゃあ、ヘックのところへやってくれ」

「うん!」


 ウクナは元気いっぱいだな。

 ウクナは移動魔法の使い手だ。つまり転移だな。

 俺は一瞬のうちにテグネン城へと移動した。

 これも魔力があればこそで、一般的な平民の魔力では一メートルも転移できない。



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